2015
11.15

受け継ぐことが誇り。『ミケランジェロ・プロジェクト』感想。

Monuments_Men
The Monuments Men / 2014年 アメリカ / 監督:ジョージ・クルーニー

あらすじ
奪還せよ!



第2次世界大戦下、ナチスドイツがヨーロッパ各国から略奪した美術品や建造物を保護するため、フランク・ストークスは7人の美術専門家による特殊チーム「モニュメンツ・メン」を結成し、危険の残る状況で美術品保護の作戦を遂行していく。ジョージ・クルーニーが監督・製作・脚本・主演を務めた、実話を元にしたドラマ。

それほど派手な場面はないし、一見淡々としているように思えます。それゆえ地味だとも言われてるようですが、全くそんな風には感じなかったですよ。美術品に構っている場合ではないと誰もが言う戦時下で、なぜ美術品を守ろうとするのか。それが何を守ることに繋がるのか。兵士でもない男たちがいまだ燻りの残る戦場に行くのはなぜか。「文化と生き方を守るためだ」という冒頭の言葉でまずやられたし、燃えかすの中で見つけたある人物の名の入った額、それと同時に発見される樽一杯の金歯に戦争を見せる。洗練された台詞、ごく自然に感情が乗せられる音楽の使い方も良く、何度もじんわりとしたし、とても心に染みます。

リーダーのフランク・ストークスを演じるジョージ・クルーニーと後のMET所長グレンジャーを演じるマット・デイモンという組合せから『オーシャンズ11』シリーズを彷彿とさせますが、ああいう軽快な感じとはまた違うし、結構バラバラに行動するんだけど、同じ意思の元で動いてるからチーム感があります。ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ジャン・デュジャルダンらが加わり、さらにはケイト・ブランシェットまで。豪華なキャストながら、出張りすぎずそれでも存在感を持って演じるモニュメンツ・メンが良いです。彼らとヨーロッパ中を駆け巡る感覚がありますね。有能な若手も魅力的。

仲間たちが基本的には個別に行動することが多いので、今どこにいて何やってるんだっけ?とちょっと混乱する場面はあったかな。あと多少のロマンチックさもあるかもしれません。が、それらは物語の本質を邪魔するほどではないと思います。凄く良かった。

↓以下、ネタバレ含む。








作りとしては多くのエピソードの連なりという感じで、その個々のエピソードの積み重ねが次第に状況を覆していきます。なかにはキャンベル(ビル・マーレイ)とプレストン(ボブ・バラバン)が虫歯の治療を発端に農夫に化けたナチ将校を発見するとか、鉱山奥の洞窟に隠された宝の山をたまたま発見するなどの信じ難い話もあり、時にくすりと笑い時に興奮を味わわせてくれます。グレンジャー(マット・デイモン)が得意がっていたフランス語をあらゆる人に酷いと言われるのも可笑しい。また、徐々に心を開いていったクレール(ケイト・ブランシェット)の誘いをグレンジャーが受け入れないのは、それがやむを得ないこととはいえせつないです。

一方でやはり戦争を描いた話でもあり、ガーフィールド(ジョン・グッドマン)とジャン=クロード(ジャン・デュジャルダン)が突然の狙撃に決死の覚悟で敵の元に行ったらただの少年であったり、キャンベルが見つけた誰かの家族のメッセージが入ったレコードをプレストンがかけてしんみりしたり。ピカソの額の燃えかすと樽一杯の金歯の発見が同時であることで、貴重な美術品も多くのユダヤ人の命も共に失われたことも示します。

そして悲しい別れ。ノルマンディ上陸作戦も終わり下火になってるとは言え、いまだ戦争中の地での美術品集めに自国の軍までが非協力的。これは現地で戦う兵士としては致し方ない反応だろうとも思います。だから美術品を略奪しようとするナチスだけでなく、理解を示さない連合軍でさえモニュメンツ・メンにとっては障害になりうる。でもそこで諦めずに単身でも聖母子像を守ろうとし、命を落とすジェフリーズ(ヒュー・ボネヴィル)。彼の父への手紙から誇りを持って行動していたことが伺えます。フランスの伊達男ジャン=クロードは二つの軍が睨み合う場所にたまたま居合わせてしまったために流れ弾で亡くなります。死の間際「こんなことで!」と嘆くジャン=クロードはもまた、序盤で「フランス人として感謝を述べる」と言うように誇りを持って任務にあたっていたことが分かります。フランクは仲間を二人失いながら最後に上層部に「命を懸ける価値があったと思うか」と聞かれ「もちろん」とさえ答えます。

なぜモニュメンツ・メンがそこまで己の任務に誇りを持っていたのか。フューラー・ミュージアムやネロ文書といった狂気じみたキーワードからヒトラーやナチスらが悪であるというのが行動原理に取れそうですが、観ていればもっと奥底にあるものが見えてきます。つまりナチスが悪と言うよりは、何十年何百年も受け継がれてきた文化や歴史や生き方を、戦争という名のもとに、或いは個人の欲望や見栄のために安易に破壊することが悪なのであって、それらを守り次代へ受け継ぐために彼らは命を懸けたわけです。それは愛国心とは別の思い、人類としての誇りを守りたいという思いです。最後に「命令でやっただけだ」と言うドイツ大佐にフランクが言い放つ「取り戻した"日常"の中でお前は忘れ去られるのだ」という言葉は、文化や歴史や生き方を破壊しようとした愚かさに対する呪いの言葉です。逆に聖母子像を救うため命を懸けたジェフリーズのことは「覚えている」と言い、それを老フランクが孫を連れて聖母子像を見せることで、文字通り「受け継ぐ」ことで表すんですね。

孫を連れた老フランクを演じるのは、ジョージ・クルーニーの実父ニック・クルーニーだそうです。そんな配役にも「受け継ぐ」ということを盛り込んでいるように感じられます。

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