2015
11.05

求む、みんなのおじさん。『マイ・インターン』感想。

The_Intern
The Intern / 2015年 アメリカ / 監督:ナンシー・マイヤーズ

あらすじ
メールの宛先は確認しよう。



人気ファッションサイトのCEOであるジュールズは仕事と家庭を両立させながらも、投資家からの指摘で困難な状況に陥っていた。そんななか会社の福祉事業として雇われたシニア・インターンであるベンがジュールズの直接の部下になり、次第にジュールズの支えになっていく――というハートフルお仕事ドラマ。

ニューヨークでネットのアパレル業界で自由な社風で、といういかにも華やかで自由な職場、わずか1年半で会社を200人規模にまで拡大した革新的な女社長。そこに部下としてやって来る仕事的にも精神的にも頼れる老紳士との交流。正直ちょっと出来すぎな話ではありますが、現実を描きながらもちょうどよい匙加減の大人のファンタジーとなってるので楽しいです。それはリアルであることとは別の良さですね。非常に面白いです。

脚本が整理されてるせいか、かなり多くのエピソードを詰め込んだ密度の高い話なのに、そう感じさせない軽やかさがあります。あらゆるキャラへの気配りも細やかで、その描写がまた別の人物の人間性に繋がっていたりして上手い。風呂場の蛙のオモチャとか、忙しすぎる秘書の子がシャツはみ出てるとか、可愛らしい粘土ケーキとか、ちょっとしたカットを入れる繊細さもアクセント。予想外のケイパーもののスリルが入ってるのには笑いました。

女社長ジュールズ役にアン・ハサウェイ。デキる女ながらメール誤送信といううっかりやファッションも見所。そして仕事に頑張る彼女を冷静に、かつ包容力満点でサポートするベン役にロバート・デ・ニーロです。デ・ニーロの紳士っぷりに、ときに笑い、ときに暖まります。他のキャスティングも良くて、レネ・ルッソが年齢的にもマッサージ師という役柄的にもちょうどいい案配。秘書の子の可愛らしさもちょうどいい。あとジュールズの娘、ベンにお願いするときの「プリ~ズ」が超可愛い。近道を疑うとかPCっぽいおもちゃをいじってたりとか、いびきとか母親似なのね。若い同僚たちもちゃんと見せ場があって良いですが、『ピッチ・パーフェクト』バンパー役のアダム・ディヴァインまで出ていて、こいつがやはり絶賛ムカつかせてくれます。

これを観るとどうしても「うちの職場にはデ・ニーロなんていない……」とか「自分はデ・ニーロにはなれない……」などと悲観する人も出そうですが(気持ちはよく分かる)、先に言ったようにファンタジーなんでね、素敵な世界だなあと思っときましょう。大事なのは心にちょっと余裕を持つべきだってことですね。ただ、紳士たるものハンカチくらいは持つべきだな。働く女性の皆さん、僕もいつもハンカチ持ち歩いてますよ?(小さくガッツポーズ)

↓以下、ネタバレ含む。








決して押し付けがましくない、でも何にでも同意するわけでもなく、的確なアドバイスをくれるみんなのおじさん。部屋を追い出された同僚を同居させる懐の広さ。鞄なども古くても良いものを使ってるからヴィンテージ化していたりと洒落者。「ハンカチは女性の涙を吹くために持つ」なんて粋な言葉がスッと出る。70歳のやもめと言いながらモテモテ。……うーん、こうして書いてみると完璧すぎて嘘くさいですね……こんな包容力もあってオシャレで立派な経歴もあるインターンなんて募集したってまあ来ませんよ。大抵は、一緒に受かったのに全く出てこない爺さんとか、運転代行で来るおばはんのようなもんですよ。そりゃ猛アタックかけてた婆さんも女連れのベンを見て中指立てるほどの嫉妬に燃えますよ。

これは映画の嘘なわけですが、しかし不思議なことに嘘くさく感じません。これはデ・ニーロが醸し出す安心感と、一見そうは感じさせない力強さが抜群なためです。役者力ですね。さらに演出的な効果も大きく、完璧超人のベンに好感を持つ仕掛けが随所にあります。冒頭のアピール動画作成でベンの人となりを知らしめ、「音楽家の引退は音楽が沸かなくなったとき、自分にはまだ音楽がある」みたいな気の利いた言葉を話せる人だと教えます。自席についたときに机上に私物をぽんぽん置いていくのを若者と対比させることで同じステージに上げたり、Facebook登録のくだりで色々情報を開示した上で、あのビルが元職場であることを提示することで観ている者にも親近感を沸かせます。ジュールズとベッドに座って妻のことを話し、その後のテレビのミュージカル映画での愛を歌うシーンで涙しちゃうのも好ましい。でもベンの気の利き方に対しジュールズが最初に「なんかめざとい」と言って異動させようとする、これもよく分かるんですよね。実際にデ・ニーロが自分の部下になったりしたら同じように思いそうだしなあ。ここは上手いです。

アン・ハサウェイの演じるジュールズは美しく有能、「私キツいから」と言いながらも走り回り、彼女の夢のためにキャリアを棄てて主夫になる夫に可愛らしい娘までいるという、これまた完璧に見える女性なわけですが、こちらは家庭での時間が取れなかったり、経営者として未熟な面があったり、しまいには夫が浮気してたりと、色々上手くいってないところが共感ポイントになるんですかね。スシ好きだったり別れの挨拶が「サヨナラ」だったりとなぜか日本推しなのが謎ですが……。秘書の子の「頑張ってるのに認めてもらえない」というのも共感ポイントだし、少しずつ現実の厳しさみたいなものを各キャラに振り分け、そこをベンが手助けするという図式なんですね。その根底には「正しいことを正しくやる」という至極真っ当な主張があるし、インターンという立場だからこそ気付くことやできることがあって、それが普通に働く人々が求めるものだと思えるから観てて気持ちいいわけです。

終盤がちょっと解せない点が多くて、バレてると気付いてない浮気を夫が自ら告白なんてするか?とか、結局CEOを頼むのをやめてしまったら忙しいままだし投資家たちの不満も解消しないしで何の解決にもなってないのでは?などと思うんですが、仕事と全く関係ない太極拳のシーンで終わるというのが仕事以外の息抜きが必要という働きすぎの現代人へのメッセージにも取れるからまあいいでしょう。デ・ニーロのまばたき練習やマッサージ部屋での淫行勘違い、ピンクの服の大流行など笑いどころも多く、とても楽しかったです。
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