2015
10.28

差別も偏見も打ち返せ!『全力スマッシュ』感想。

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全力扣殺 Full Strike / 2015年 香港 / 監督:デレク・クォック、ヘンリー・ウォン

あらすじ
ラケットはシャトルを打つものだ!



かつてバドミントンの女王と呼ばれながらも暴力事件で追放されていたン・カウサウは、ワケありの過去を持ちながらバドミントンに打ち込む4人の男と出会い、過去の情熱を取り戻すため彼らと大会に出ることに。バドミントンを題材にした香港アクション・スポーツ・コメディ。

あーこれは大好きです。香港映画のスポ根もの、とくれば『少林サッカー』のようなブッ飛んだおふざけ映画を連想しますが、ちょっと違いました。イヤ十分ふざけてて随所で爆笑するんですが、それ以上にこれは負け犬たち(ババア除く)が再起を賭けた、熱くせつない物語なのです!バドミントンは負けていても流れをつかめば逆転できると言われる競技、その特性を人生のどん底から這い上がろうとする奴等と重ねているのが上手いです。予測する展開を少しずつズラしてくる意外性も楽しい。

元犯罪者で今はバドミントンに打ち込むラウ・タン役のイーキン・チェンは『風雲 ストーム・ライダーズ』以来のファンですが、相変わらずカッコいい。かつてはトップアスリートで今は見る影もなく落ちぶれたヒロイン、サウ役のジョシー・ホーの目力演技もよく、中盤から見せる美貌も麗しいです。他のキャラも立ちまくってて、特に実力者ではあるけどクールなのかバカなのか分からない師匠の爆裂スプラッシュにはブッ飛びます。胡散臭いチョン坊やの存在感もイイ。あとさりげなくずっといるババアが最高。

前科者であるという偏見、障害者であるというハンデにめげずシャトルを追う男たちと、かつての栄光を取り戻すため彼らと行動を共にする元バドミントン女王。コメディながら過去の過ちを受け入れて前へ進もうとする同好会メンバーの姿が泣けます(半分以上は笑いすぎての涙ですが)。音楽が昔のスポ根ドラマ調なのもいいし、カメラワークを駆使したケレン味ある試合シーンにもエキサイト。これは面白いぞ。

↓以下、ネタバレ含む。








『少林サッカー』ほどふざけてはいないと言いつつ(あれも実際は深みがあって大好きですが)、バカシーンも多くて良いです。ラウ・タンとその弟分であるクワンとチウは元極悪犯罪者でありながら言動は3バカとしか言いようがなく、バドミントンすげーやってる、みたいに思わせて超ヘタ。てっきりラウ・タンがサウを指導するのかと思ったら思いきり逆で、「ラケットはシャトルを打つものだ!」とか偉そうに言ってたのに打ち込まれたときのヘタレポーズが絶品で笑います。サウが3人にあげるプレゼントとか(あの長い義手は何だ笑)、チョン坊やが「おそ松くん」のイヤミというか宮史郎というかその風貌だけで面白いし、チョン坊やの乳母であるピンがラウ・タンによたよた近付いて思いきりビンで殴って粉々とかも笑います。

スポーツものとして特訓シーンがあるのがアガるんですが、そこで観察力をきたえるときの「アワビ6等級」とか超バカ。師匠の止まらないマーライオンっぷりとか(しかもリアルに汚い)、バドミントンは俺が発明したとか、何言ってんだあんたは。付き添いで来てただけのはずの婆さんがなぜか練習にも逐一参加してあまつさえ試合にまで出てキメ顔で打つ、なんてのも最高。クワンが試合中に目をつぶるのが心眼か何かかと思ったら「攻撃しないと見せかけて打つ奇襲作戦」とか、もう面白いなあ。元助手とサウとの戦いはもう少し描いてもよかったかなあとは思いますけどね。最後に出てくるのは本物のバドミントン選手なのかな?

ラウ・タンたちは前科者ゆえに偏見に晒され、試合前の演出でさえ更正しようという思いを無視して見世物にされます。世間の残酷さにそれでも耐えろと言いながら唇を引き結ぶラウ・タンの忸怩たる思いに男泣きですよ。ラウ・タンとサウが手を取って回りながら踊る『タイタニック』か!というダンスシーンがありますが、直後のサウのチューにラウ・タンが答えないまま終わるのも、世間に馴染もうとしながら逆に自分の方がまだ世間を受け入れられないでいるのでは、と思わされます。耳、弱視、片腕といった障害も、世間とのズレという悲哀をより強調しているかのよう。それでもチウを信じ追いかけていくラウ・タンとクワン、そして3人が戻ってくると信じて待つサウ(とババア)の信頼関係が泣けます。逆境に負けないこと、だけではなく、信じることに重点を置いた話なんですね。サウの兄もまたテレビの前で妹を信じていたわけだし。

ラストが結局間に合わずに終わってしまうのはちょっと肩透かしではありますが、世間はそうそう劇的には変わらないという現実的な苦味への着地は結構好きです。敵であったチョン坊やの「優勝しても何も変わらないが、必死でやった」という台詞に被さるように笑い合うサウやラウ・タンたちが感動的。そういえばあの宇宙人は何だっんでしょうか。サウにバドミントンをやれという啓示だったのでしょうか。冒頭でやって来た後はラストに帰るだけという宇宙人の「登場は劇的なのに何もしてない」感は、「散々やってダメだったけど何かを手に入れた」ラウ・タンたちと対になっているのかもしれません。

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