2015
10.26

服を脱ぎ、旅に出よう。『マジック・マイクXXL』感想。

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Magic Mike XXL / 2015年 アメリカ / 監督:グレゴリー・ジェイコブズ

あらすじ
ガラスの靴を見つけよう。



かつて男性ストリップ界で華やかに活躍していたマジック・マイクことマイク・レーンは、ステージを引退して念願だった事業を始めたものの思うようにいかない日々。そんなときかつてのステージ仲間たちがマートルビーチのダンスコンテストに向かう話を聞き、マイクも参加することに。男性ストリッパーの日々を描いたチャニング・テイタム主演『マジック・マイク』の続編。

前作の感想はこちら。
男の尻にはワケがある。『マジック・マイク』感想。

前作は主演であるチャニング・テイタムの実話を元にスティーブン・ソダーバーグが映画化、ステージの自分と本当の自分の間で悩む若者の話でしたが、今作は「あの前作は何だったのか」というくらい、バカで陽気で爽やか。なんかもう色々吹っ切れちゃってるんですが、しかしこれが凄く面白い!ボスのダラスに捨てられた男性ストリッパーたちが引退前に最後の一花を咲かせようとストリップ大会に出発する、というロードムービーになってる時点でだいぶ異なった趣。ロードムービーとしても、困難にぶつかるとか自分を振り返るとかいうより「これが俺達の総決算だ」という気概と、久々に会った仲間たちとの友情を描くというものになっており、ほろ苦い現実は置いといて有終の美を飾ろうとする男たちに爆笑しながらも時々泣けます。

マイク・レーンを演じるチャニング・テイタムのダンスシーンは腰をぐりぐり動かしまくって相変わらずのセクシー。本当に身体能力高いなあ。ケン、リッチー、ターザン、ティトという前作ではわりとモブだったメンバーたちのキャラ立ちも段違いで、マジック・マイクの映画というよりは劇中でも呼ばれる「マイクと愉快な仲間たち」の映画、という呼び方が実にしっくりくる活躍ぶり。また女性陣がマイクたち同様に魅力的で自由なのも前作以上。ダラス役のマシュー・マコノヒーが出てないのは寂しい気もしますが、ボス不在であることが却って何者にも縛られない自由さに繋がっていて爽快です。

野郎が脱いで踊るのなんて面白いの?と、女性ならともかく男性ならまあ思うところじゃないですか。面白いんですよ、これが。女性と絡むセクシャルなダンスシーン、工夫を凝らしたステージ、圧巻のパフォーマンスといった抜群のエンターテイメント性には、男女問わず観る者を魅了する華やかさがあります。あなたのテイタムもチャニングすること間違いなし!ダンスや会話は淫靡なのにむっちゃ爽やかという訳の分からない快作です。前作を観てなくても楽しめると思います。

↓以下、ネタバレ含む。








最初にマイクが合流した時点では3年ぶりということもあって若干ぎこちなさがあり、軽く言い争ったりスマホ捨てちゃったりと前途多難な雰囲気なんですが、ヤクをキメた後のノリがどんどんいい方に転がっていくのがたまらなく面白いです。リッチーのコンビニダンスに全員が「イエー!」のシーンで、完全に「愛すべきバカ共」映画に変わるんですね。超しかめっ面の女店員さんが微笑むところでは一緒に「イエー!」と叫びたくなるほど。会場もコンビニから会員制クラブ、富豪マダム宅、大会会場ホールと多岐に渡り、行く先々で女性たちをメロメロにしていきます。道中にあったショーパブで飛び入りで踊ったり、車走らせながら円陣組んだらワゴンが事故るという大バカかましたり、棚ボタで車(&マダム)を手に入れたり、思わぬ協力者の援助を受けたりと、勢い+運任せ+ダンスで乗り切っていく様は爆笑。「どうなんだ。ヤッたのか?」とか聞くのが高校生みたいでアホ丸出しなのも面白いです。

ステージでのマイクたちはパフォーマンスもさることながら、観ている女性たち、時には舞台に上げて共にステージを彩る女性たちに対して常に平等です。MCをやるローマが女性たちを「女王様」と呼ぶように、例え相手が巨漢の女性でもその態度は全く変わらないのがプロフェッショナル。どうやったら客を楽しませられるか、マンネリを脱して新たな舞台を作るにはどうしたらよいかを考え抜いてのステージは、女たちに消費される男性ストリッパーに留まらないエンターテイナーとしての自負、もっと言えば「相手がクイーンなら俺たちはキングだ」という、相手を楽しませるなら自分たちがまず楽しもうという姿勢さえ見えてきます。ライブで観てるかのような長回しの臨場感がそれに輪をかけ、「1ドル札の波に溺れる」を文字通り実現させる画の高揚感が凄いです。女性たちが金を事前に1ドル札に崩すというシーンがあるのも本番前の盛り上がりを予感させて良いですね。

ダンスシーンは圧巻で、特にクライマックスはマイクの鏡合わせのダンスを始め、ターザンのアーティストっぷり、ティトのマジック泡ー(アワー)、ケンの歌うオンステージ、リッチーの結婚式ダンス(奥さん役はずっと吊られたままなのが可笑しい)など、楽しいったら。ちょっと思ったのはカメラがマイクたちから見た視点に近いシーンが結構あるような気がして、マイクが誰かを見つけたときの顔を映し、そこからマイクの視線の方向にカメラが動くとローマがいるとか、受付の女を見るマイクたちの視点から、その女が認識するとローマたちの方にカメラが動くとか。時々見せる登場人物に近付けるようなカメラワークも没入度に一役買っているように思えます。

旅は知らなかった仲間たちの一面も見せていきます。「消防士ではなくエンターテイナーだ」と必死で息巻くリッチーにはグッと共感が沸きますね。序盤に言っていた「舞台で結婚式を挙げる」というアホアイデアを本当にステージへと昇華させるのも良いです。ガラスの靴がぴったり合う人も見つけたようでなにより(この例えが最高にバカでイイ)。ケンは「レベル3のヒーラー」という意味不明な肩書きに笑いますが、役者の夢を諦めてないことを少し照れながらもマイクに語ります。演じるマット・ボマーが歌うブライアン・アダムス「Heaven」、あの名曲を耳元であの美声で歌われたらそりゃ「抱いて!」って思いますよ。ティトは冗談半分で道中に売ろうとするヨーグルトに実は本気で取り組みたいと思っているし、ターザンは実は湾岸戦争の従軍経験者であり、妻子を持ちたいという思いがあることを打ち明けます。

マイクにしてみればもう一度ステージを楽しみたいという気分転換程度だったかもしれませんが、皆がおぼろげながら夢を持っているという、引退したあの頃の自分と変わらないことを知るわけです。これはダラスの元で指示通りショーをやっていただけでは気付かなかったこと。最初は事業が上手くいっているかのように語っていたマイクも、たった一人の従業員の保険料さえ払えない実情をぶちまけ、その上で前へ進もうとします。今は負け犬かもしれない、でもそれがなんだ、ステージの俺を見ろ!ということですよ。確かにお祭りの後には厳しい現実が待っているかもしれない、それでも一大ステージをやり遂げた自信と満足感は何ものにも代えがたい経験となったに違いないのです。それがラストに打ちあがる花火のように、彼らの次のステップへと繋がっていってほしい、といつの間にか思っている自分がいてちょっと驚きます。

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