2015
10.19

限度を超えた若気の至り。『ファンタスティック・フォー』感想。

Fantastic_Four
Fantastic Four / 2015年 アメリカ / 監督:ジョシュ・トランク

あらすじ
異次元へようこそ。



天才的頭脳を持つリード・リチャーズ、女性科学者スー・ストーム、スーの弟ジョニー・ストーム、リードの親友ベン・グリム。彼らは開発中の次元転送装置の実験中、異次元でのエネルギーの影響でそれぞれ異なる特殊な能力を持つことになる。マーベルコミック最初のヒーローチームである「ファンタスティック・フォー」を描くSFドラマ。監督は『クロニクル』のジョシュ・トランク。

コミック原作の『ファンタスティック・フォー』は既に2005年に実写化されており、2007年には続編も作られています。スー役が俺の嫁ことジェシカ・アルバなので便宜的に「ジェシカ版」(本当はティム・ストーリー版ですが)と呼びますが、今作はそのリブート版ですね。僅か8年でリブートと言うのは『スパイダーマン』の5年でリブートほどではないにしろ随分と性急。20世紀フォックスが映画化権を手放したくないからというのがあるようで、『X-MEN』とのユニバース化も視野に入れているようです。マーベル・シネマティック・ユニバースの成功は色んなところで影響与えてますねえ。

体がゴムのように伸びるミスター・ファンタスティックことリード、透明になったりエネルギーシールドを張ったりできるインビジブル・ウーマンことスー、全身が発火して空を飛ぶヒューマン・トーチことジョニー、全身が岩石化して絶大な怪力と硬さを持つザ・シングことベン、というのがファンタスティック・フォーのメンバー。物語はリードとベンの少年時代という随分と遡ったところから始まり、7年後リードが成長して異次元の研究に本格的に関わったところで他のメンバーたちが登場し、徐々にその関係性を築いたところで異能化となります。ここまでが結構長い。しかもそこに至る展開が色々とマズい。異能化してからもなかなかヒーローものらしいアクションが出て来ない。この辺りの描き方のせいでしょうが、本作はかなりの酷評を食らっています。曰く、重い、暗い、爽快感がない。確かに否定できない点も多いです。

ただ、色々思い返してみて、僕はそこまで酷いとは思わなかったですけどね。結構面白かったですよ。ヒーローものとして観るよりは異能力バトルものとして観た方がいいというのはありますが(そこが問題だというのは置いといて)、彼らがそこに至るまでの対立、葛藤、苦悩といったものを前面に押し出した作りはなるほど『クロニクル』のジョシュ・トランクを監督に起用した理由も頷けます。あくまでチームの始まりの物語であると考えれば、ヒーロー的活躍が少ないのもある程度しょうがないし、ラストもやってくれたなと思うし。ただねー、うーん、もう色んな点で「もう少し、こう……こうしてくれれば……」という物足りなさはどうしても否めません。

↓以下、ネタバレ含む。








チームの始まりを描く、というのと同時にメンバー自体が若い、というのが特徴ですね。そのせいか若さ故の行動や過ちも多いです。酒の勢いで異次元に行ってしまうとか最悪ですね。あまりに薄い責任感や、思わず逃げ出しちゃったりとか、自分の殻に閉じ籠ったりとか、役に立ってると言われてそこを拠り所にしちゃったりとか、「自分以外全部死ね」と言う行動原理とか。異能者の若気の至り、という点では妙にしっくりくる気がします。そして若気の至りの結果が限度を超えている。異次元に地球が吸い込まれるというのは最大級の「やっちまった」感がありますね。

そんな若さ故の勢いとか愛憎とかがメインのドラマだと思えば、Dr.ドゥームになる前のビクターがリードとスーが親しげに話す様子に嫉妬したりとか、リード、ジョニー、ビクターの3人が酒を酌み交わすシーンなど、青春群像劇をじっくり描いた前半は良いと思うんですよ。ただその辺りの時間的配分が多すぎて、後半が駆け足になってしまったことは否めません。能力を得てからの活躍があまりに短いし、最後にDr.ドゥームがどうやって倒されたのかも分かりにくいし、別次元という大舞台も十分には活かされてない。一番解せないのは、あれだけリードに怒っていたベンが、リードを許す、というシーンがないんですよ。「自分たちも力を得た、こうなる運命だったんだ」という言葉でベンが納得したのだとしたらあまりにお粗末。

ついでに不満点を挙げてしまうなら、そもそも異次元行くのに部外者のベンを呼ぶというのは無理があるし、異次元に行ってないスーまで異能化するのが、エネルギーの残滓を食らったということだとしてもちょっと分かりにくいです。ジョニーのキメ台詞「フレイム・オン!」がボソッとつぶやくだけなのも残念。ドゥームは防護服と一体化したという薄気味悪さはいいんだけど、表情が全くない、というかキョトンとしてるように見えるのがどうもパッとしないです。なぜ四人の能力を知っているのかも謎。というか一番気の毒なのがビクターなのに、そこへのフォローが一切ないですね。まあその前に暴れ出しちゃったというのもありますが。色々とジェシカ版と違う方向性を目指したのは否定しませんが、見せたいものを描くにはクリアすべきハードルが多すぎたのかもしれません。ヒーローであること、チームであること、望まなかった力とそれを乗り越える思い。そこに青春ものとしての要素を絡めようとして上手く馴染んでないですね。あと、正直マイルズ・テラーがミスキャストだと思うんですよ。全く強そうに見えないし、上手い下手以前に合わない。ジョニーを黒人にした意味も特に感じないし、何と言うかキャスティングが皆ズレてる感じが違和感としてある気がします。ケイト・マーラはクールビューティーという感じで作風には合ってますけどね。ただ、スーは脱がないのにザ・シングはノーパンというお色気逆転現象は一体どういうことなんだ……(お色気?)

それでも「過去は変えられない、でも未来なら変えられる」という思いでやれるべきことをやろうと立ち向かう姿に辛うじてヒーローとしての立ち位置が見て取れます。本作は、後にヒーローになる者たちの若き日の黒歴史を描いたものだと考えると、誰にでも思い当たる話に変わると思うんですよ。「も~あのときの話はしないでよ~」みたいなものですね(まあ人はいっぱい死んでますが)。なぜ皆の能力が違うのかも映像的に示してるし、ドゥームが頭パンさせるシーンとかナイスだし、リードが顔を変えられるというのも活かされてるし、見るべきところはあると思います。クライマックスで4人が横並びで立つカットをちゃんと入れている、というのは大きいですね。最後にチーム名を何にしよう、というところで「まさか?」と思ったらタイトルバーン!には笑いましたが、やらないよりは全然いい。うやむやにして無理やり、という感じもなくはないですが、ここまでが序章だと思えばこれからどう化けていくかというのはちょっと期待すらしちゃいますよ?

公開前にジョシュ・トランクがスタジオ側に作品をいじられて「別物になった」みたいなことを言ったり、主演のマイルズ・テラーとのいざこざが暴露されたりと制作時の不和が散々報じられ、評判も興収も芳しくなくて続編があるかは非常に微妙ではありそうですが、監督もキャストも入れ替えでいいから何とか続いてほしいですよファンタスティック・フォー。またリブートして最初から描くとかは出来ればやめてほしいですけどねえ……。

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