2015
08.27

助けてあげるよプレジデント。『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』感想。

Big_Game
Big Game / 2014年 フィンランド・イギリス・ドイツ / 監督:ヤルマリ・ヘランダー

あらすじ
大物を狩るぜ!(悪党目線)



アメリカ大統領を乗せたエアフォースワンがテロリストのミサイルに攻撃される。大統領が脱出ポッドで着地したのはフィンランドの山岳地帯、そこで出会ったのは13歳の新米少年ハンターだった。襲い来るテロリストたちに大統領とへっぽこ少年が立ち向かう!という珍バディもの。

世界一の有名人・アメリカ大統領と、ハンターになるため一人山奥へと狩りに来た少年という非力な二人がテロリストに対抗する、という設定がなかなか楽しいです。大統領は専用機であるエアフォースワンを撃墜されてフィンランドの山岳地帯に一人脱出するわけですが、なぜ場所がフィンランドかと言うと実はこれフィンランド映画なんですね。なのにアメリカ大統領を主役にするというのがスゴいですが、おそらく大統領が少年とサバイバルするというアイデアが最初にあって、最も分かりやすい大統領と言えばアメリカの、となったんじゃないでしょうか。そのためか細部は色々と怪しいです。でもこれをロシア大統領にしちゃったらプーチンのイメージ強すぎて自らテロリスト倒しちゃいそうだもんね。

何と言っても大統領役のサミュエル・L・ジャクソンですよ。S.H.I.E.L.D.長官とかジェダイ評議会重鎮とか色々やってきたサムジャク、本作で遂に大統領に上り詰めましたよ!でもなぜ今まで大統領役がなかったのか?本作を観て分かりました、あんなニラミ効かせる大統領いねーよ(爆笑)。セレブなのでさすがに「マザーファッカ!」とは言いませんが、若干シモ寄りの例え話とかしちゃうのがサミュエルさんらしい。ただし権力が通じない異国の山の中で攻撃力はほぼゼロ。そんな大統領と行動を共にすることになる少年ハンターのオスカリ君は、ハンターと言いつつまだ獲物を狩ったことがない超新米。伝説のハンターである父親に追い付こうと威勢だけはいいですが、実際は弓もまともに撃てないへっぽこです。演じるオンニ・トンミラ君(監督の甥っ子だそうです)の絶妙なかわいくなさもポイント。そんな微妙なコンビが極悪テロリストから逃避行というのがね、楽しいですね。この二人が出会うシーンは笑えます。

いくら緊急時でも大統領を一人で放り出すか?とか司令室がショボすぎとか、ドラマ部分のテンポが悪いとか、不味い点は挙げたらきりがないんだけど、飛行機墜落の派手なシーンなどは結構頑張ってて良いショットになってるし、空撮やロングを駆使した険しくも豊かな山の風景の美しさには目を見張るし、頼りないコンビが心配で思わず観てしまうので意外と楽しめます。なんだか憎めないですよ。

↓以下、ネタバレ含む。








冷静に言ってしまうとテンポが悪かったり演出がやたらダサかったりするシーンが多いです。序盤の儀式を始めるまでからしてやたら長い。そのくせ大統領の登場シーンはやけにあっさり。焚き火シーンでオスカリが「僕は男になる」と盛り上げて音楽もそこで終わっときながら、場面転換も何もせず大統領が尿もらしの話を始めるのには話のマヌケさもあって拍子抜け。靴を片一方忘れる設定がサバイバルに活かされるのかと思いきや特に何もなく、なぜか偶然落ちているのが見つかる。ラスト生還した二人が岩上に立つシーンがキマってて良いショットなのに、写真撮影のためにもう一度同じように立たせるというのもダサくて、そこは姿を現したときに同行してたカメラマンが撮影する、みたいにしてもよかったのに。まあテロリストが大統領を誘拐してどうするのかと思ったら「剥製にする」と言い出したのには笑いましたが。

アメリカの描き方に至ってはおかしい点だらけ。エアフォースワンだけならまだしもお付きの戦闘機5機まで細工するのはさすがに無理でしょう。アメリカの司令室がショボいと言いましたが、ああいうのってトップが集まる会議室と情報管理室みたいのは別の部屋だと思うんだが。大統領失踪という国家存続の一大事だと言うのにやたら人数少ないし、ベストのおじさん(『クラウド アトラス』の爺さんですね)は先を言い当てるキレ者なのに呑気にバーガー食ってるのもリアリティに欠けます。SPモリスの裏切りの動機が大統領を守って死にかけたからというのもSPとしてあり得ないので不自然。まあリアリティ云々は置いといてもいいんですが、最後の取って付けたような黒幕設定は本当に酷い。テロリストが実はエージェントだとかあの人とあの人がアレだったとか、色々と辻褄が合わなくなりそうなサプライズの大盤振る舞い。サプライズ狙いすぎて完全にスベってます。って実際スベらせて殺すしな。つーかあの爺さん野放しなの?

と文句は山ほどあるんですが、そのあたりはアメリカ映画じゃないことだし、スペクタクルなシーンは頑張ってるしで真面目に作ろうとしてるのは感じられるのでいいかなーと。そもそもリアリティにこだわるならサミュエルさんを大統領に起用した時点で間違ってますからね!「また会議か」とボヤいたり「私は世界最強軍隊のトップだぞ」とわめいたり、大統領らしい決断とか威厳を見せるところがほとんどないので大統領に見えない上に、相手を睨み殺しそうな眼力ね!そりゃあんな人が宇宙船じみた脱出ポッドから出てきたら、いくらUSAと書いてても宇宙人かと思いますよ。実は本当に宇宙人だった、というオチにしてもよかったくらい(よくない)。でもそんな口先大統領だからこそ面白いんですけどね。

そういう意味では弓も射てないへなちょこのくせにあそこまで強気なオスカリ君とは、プライドは高くも口だけの者同士でいいコンビだと言えるでしょう。プレジデントとレンジャーと呼び合うのも良い感じ。オスカリ君は父親のような狩人になりたいと思いながらその父本人に獲物を用意されるという屈辱を味わいますが(鹿の首を背負うというシュールな画で笑うけど)、でもめげない!飛び立つヘリを前にいきなり高らかに自分の役割を宣言し、去り行くヘリにジャンプして(どう見ても届かないけど)上手くつかまるあたりからは、そのクソ生意気さを忘れて応援するしかありませんよ。森の木々にぶつけられそうになりながらも(それ大統領も死んじゃうよ)これを見事にかわし、遂にはエアフォースワンから脱出して敵の乗るヘリとご対面!そしてへなちょこ弓を射ち文字通り一矢報います。上空の風やヘリの風圧とかを考えればどう考えても届くはずないんですが、もういいんです!これは少年が非力な己に負けずチャレンジし続けるという熱い話なんですよ。そして大統領はそんな少年の姿に勇気をもらいこれからのアメリカを率いていくのです(たぶん)。かなり擁護的になっちゃいましたが、バディものにはまだまだ可能性があるな、というのを思わせてくれますね。

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