2015
08.19

悲哀は行動でねじ伏せろ。『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』感想。

Mission_Impossible_Rogue_Nation
Mission: Impossible – Rogue Nation / 2015年 アメリカ / 監督:クリストファー・マッカリー

あらすじ
ドアを開けろー!(さすがにしぬー!)



謎の犯罪組織「シンジケート」を追うIMFのエージェント、イーサン・ハントはシンジケートの罠に落ちて拘束される。同じ頃IMFは解体され、CIA長官によりイーサンは国際指名手配の身に。彼を救う謎の女性イルサは何者か、イーサンたちはシンジケートに打ち勝てるのか。トム・クルーズ主演、『ミッション:インポッシブル』シリーズ第5作。

前作『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』が傑作だったため、さすがにそれを越えることはないだろうと心のどこかで思ってましたが、正直度肝を抜かれましたよ。何だこれは!前作に比べても全く遜色ない、どころかそれを凌駕するとんでもない面白さ!トム・クルーズの自ら体を張ったスタントはとにかくスリリングかつビジュアル的にも目を見張るもので、それでいてアクションシーンの結果が話の展開とも結び付いていて秀逸。また、正当なスパイものの流れを継いだ諜報活動や騙し合い、相手の裏をかく心理的攻防なども織り混ぜつつ、組織から使い捨てられた者たちの悲哀まで描き、さらにそんな思いを行動でブッ飛ばすイーサン・ハントの行動力が最高。まさにインポッシブルの連続!もはやトム・クルーズはスパイを越えた!スパイ神ですよ!

トムだけでなく、セクシーで強くてスパイとしての宿命まで背負ったイリサ役、レベッカ・ファーガソンがとにかく最高に魅力的。相手の体に駆け上がってキメる足技の鮮やかさ、イエローのドレス姿でスナイプをキメる艶やかさ、ウィンクがウザい敵役ボーンドクターとの息詰まるナイフ戦など、優雅な振る舞いとアクティブな行動を見事に両立。ほどよく締まったボディにも強さの説得力があります。またラスボスのレーン役ショーン・ハリスの不気味な威圧感と独特な声質も「IMFの敵」として十分以上の貫禄。対するIMFはイーサン以外も大活躍で、特にサイモン・ペグ演じるベンジーはイーサンとの絡みも多く、色んな意味でもうヒロインと言っていいんじゃないですかね!ブラント役のジェレミー・レナーは若干アクティブな見せ場は控え目なので「弓を持たせたい!」と思うもどかしさはありますが、彼に弓持たせたらイーサン・ハントに負けない無双になっちゃうので残念だけどそこは我慢。代わりにレナーは中間管理職のせつなさと『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』に続くリクルーターぶりを見せてくれます。1作目から皆勤賞のルーサーはもうIMFを引退していますが「ダチだから」という理由でイーサンを助けるさすがの漢気。彼らのチームとしての結びつきはさらに強くなってる、というか「仲間」な感じが強いです。「friend」って言うし。つーかみんなイーサン大好きだな!

『アウトロー』のクリストファー・マッカリーが監督も脚本も手がけ、アクション映画としてもスパイ映画としても素晴らしい出来に仕上げてます。上映時間131分はそれなりに長さも感じますが「ここからまだ展開するか!」という驚きの方が大きかったのでさほど気になりませんでしたよ。世界中を駆け巡り、終始エキサイトし、ニヤニヤし、時に笑い、それでいてスタイリッシュでクール!サスペンスで引き込みキャラの魅力でも引っ張り、これでもかのサービスに呼吸困難起こしそう。スマートなラストにも逆に興奮です。

↓以下、ネタバレ含む。








トム・クルーズが自ら行うスタントはもはやジャッキー・チェンか!っていうくらいスケールアップの一途を辿ってます。まさか飛行機しがみつきでさえ序盤のつかみだったとは!ベンジー、ブラント、ルーサーが焦りまくってるなか颯爽と登場して一気に乗り込む姿にはカッコいいを通り越して笑いながら感動。開けるドアが違うというボケを挟みつつも本当に飛行機が離陸していくのにはブッ飛びました。トムはこれを8回も繰り返したそうです。どうかしてます(ホメてる)。この飛行機で発見した有毒物質がシンジケートのものだということで物語も始まるんですね。これらのアクションシーンはミッションや追跡・脱出といった攻防と直結していて、特に凄いのが水中のカード差し替え。「水の中の金庫」というアイデアも秀逸ですが、まったく息継ぎの出来ない密閉空間で迫るタイムリミットのなか交換しようとしたカードが手を離れたときの絶望感が凄い。潜った後はイルサが助けに来るまでずっと音楽なしで、くぐもって響くアームの動作音やイーサンの息が苦しげに漏れだ出す音などがとんでもない緊張感を生んでいます。同時にベンジーがセキュリティに近付いていくスリルもあって手に汗。ベンジーが「3分くらいチョロいもんだ」と言ったときにイーサンの笑顔が若干ひきつってたのも納得のインポッシブルで、不死身のイーサンもさすがにちょっと死にそうになってました。ちなみに劇中では3分と言ってましたが、トムはインタビューで「実際は6分潜った」とか言ってました。どうかしてます(ホメてる)。

音楽をオフにしての緊張感はモロッコでのカーチェイスも同様。重低音が響きまくるエンジン音の迫力は『アウトロー』でも見られたマッカリーらしい好演出。かと思えばブラントとルーサーとの鉢合わせシーンというここ最近の映画で一番爆笑したシーンまで入れてきます。バックで宙を飛び、着地後のピンチの締め方まで見事。トムが実際運転するからって自分も助手席に乗る羽目になったサイモン・ペグもよく頑張ったよエラいよ。そして直後に始まるバイクチェイスがスピード、銃撃戦、クラッシュと素晴らしすぎておったまげます。トムがハングオンしてるとき膝を「チッ」て擦っちゃうのがリアル。こうして見るとスリルとユーモアのバランスは絶妙ですね。オペラハウスでの攻防では足場が上下して困っちゃうとか、相手が思いのほかデカかったというアクションコメディでよく見るシーンをトムがやってて笑ったり、拘束時に縛られた状態で腕力だけで支柱から抜け出す「どこの筋肉使ってんの?」というのも凄すぎて笑います。英首相拉致シーンも愉快すぎ。イーサンがベンジーに「その格好似合うよ」と言ったりベンジーが「一緒にいる!」と言い張ったり、イーサン&ベンジーのイチャイチャぶりも最高です。といった具合に、決して軽い話ではないのに軽妙さも忘れてません。

CIA長官や政府の面々に「IMFは無茶しすぎ、ギャンブルしすぎ」と責められるのは思わず笑っちゃうけど確かにその通りで、今回も水中でどちらのカードが本物か選ぶという賭けに出たりしますが、そもそも不可能に近いミッションに挑むのだから多少のギャンブル性は出ちゃうわけで、だからそんな責め句をブラントはすっとぼけて受け流すし、イルサに「不可能よ」と言われたイーサンが逆にニヤリとしちゃうのが愉快。ただそれは差し迫ったときだけで、基本的に作戦はキッチリ立ててやりますからね(作戦自体が無茶だったりするけど……)。リスクは肉体と頭脳を駆使してカバーし、チームの連携でサポートする。必要なスパイのガジェットも豊富に用意し、当てれば解錠できちゃうスマホとか、3Dプリンタで速効出来上がる変装マスクとか、本かと思ったらPCになっちゃうとかあって楽しい。あとはイーサンの決断力と実行力。ブラントからIMF解体と聞いてすかさず個別行動に出るとか、ベンジーを救うために首相拉致が必要となれば一切の躊躇を見せずそれしかないと言い切る。イーサンが少し虚ろな顔で考え事をしてるとき、頭脳が物凄い早さで回転してるんだというのが伝わります。さすがに溺れかけたあとに車を運転するときは脳に酸素足りてなさそうだったけど。でも口座を全部暗記したというのをブラフであると言いきれない凄みがあります。

劇中のオペラ劇「トゥーランドット」が中華風の舞台であるのは中国資本が多いせいかと思ってましたが、元々そういう舞台なんですね。この劇の曲「誰も寝てはならぬ」 の印象的なメロディが劇伴としても使われていて、最初にイーサンとイルサが顔を合わせたとき、イルサが3つの選択肢を上げる最後の選択「私と一緒に消えるの」を言ったとき、ラストの別れのハグ、とおそらく3回、どれもイルサ絡みのシーンで流れます。調べてみると「トゥーランドット」は架空の中国王朝を舞台に、美しいが冷酷な姫トゥーランドットが自分との婚姻の条件に3つの謎を出し、その謎を解いたダッタン王子カラフの愛情により心を開く、というお話。そう考えると、容赦なさと内に秘めた熱意というイメージや3回助けるというあたりもイルサと繋がっていて、ことさらにエモーショナルです。

イルサは冷静に任務をこなし組織のために働きつつも、振り回され切り捨てられ「どこに属していても同じ」となるスパイの悲哀を一身に背負っています。一方のイーサンたちは所属する組織が崩壊しますが、組織から逸脱することで自らの意思で行動し、同時に責任も自分たちで請け負います。そして「国のため」の前に「仲間のため」命を懸ける。守る対象が具体的なためブレがありません(ブラントは管理職ゆえの板挟み感もありますが)。ラストのレーンの捕獲シーンは敵の裏をかくスマートさが実に痛快ですが、序盤に目の前で連絡員女子を殺されたイーサンが白煙の中に倒れたシーンと対になっているため、イーサンの無念をそのままレーンにやり返しているというのもカタルシス。型破りと言われたIMFの生き残りは、やはり型破りな方法でシンジケートを追い詰め、根本にある自分たちの理念を表す言葉として「我々はIMFだ」と名乗る、これにはシビれまくりです。派手なバトルが待っているのかと思いきやこの幕切れというのが最高にクール!そんなイーサンらと行動を共にして、イルサもまた無念を吹っ切って前へと進んでいく。イーサンを導くために繰り返されてきた「探せるはずよ」という台詞が最後はニュアンスを変え、いつか再会することの淡い約束として使われる。たまりません。

最後をイーサンで締めない、というのがちょっと意外でしたが、でもアレック・ボールドウィンのCIA長官がイーサンを目の敵にしすぎていたのも実は布石で、英首相を救った英雄となりついでにIMFの魅力に取り付かれたか長官兼任まで引き受けてしまうという手のひら返し。ブラントとニッコニコの笑みを交わすラストにこちらまで笑ってしまう。IMFの型破りはまだ続きそうです。

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