2015
08.15

郷愁と継承のハイブリッド。『ジュラシック・ワールド』感想。

jurassic_world
Jurassic World / 2015年 アメリカ / 監督:コリン・トレボロウ

あらすじ
待て!(カチカチ)



DNAから蘇らせた恐竜を目玉にオープンした「ジュラシック・ワールド」。人気を博していたこのテーマパークで、管理者クレアは新種の恐竜インドミナス・レックスを新たに作り出すが……。前作「ジュラシック・パークⅢ」から14年、1作目からは実に22年ぶりにあのテーマパークが帰って来た!というか、ようやく来園できた!これは最高です。

シリーズのポイントとなる点を余すところなく盛り込み、その上で予想を越える展開に驚嘆。1作目以降、続編はともかく様々な亜流、教育映像などでも恐竜は描かれ続け、1作目で感じた「観たことないものを観た」感はさすがに薄いだろうと思っていましたが、そんなことは意に返さぬ楽しさ。まずはジュラシック・ワールドというテーマパークの実在感とアトラクションとしての完成度、そしてそれを心底楽しんでいる子供たちの姿に感激。もちろん恐竜がそこにいるというリアルな映像からくる感動も抜群。一方でDNA操作で作られた新種、インドミナス・レックスの脅威と、檻から放たれた恐竜たちの恐怖、パニックといったものも健在。アドベンチャーとサスペンス、スリラーが絶妙のバランスでミックスされ、ワクワクしてドキドキしてハラハラしてウルウルします。

ラプトルの飼育員であるウォーレン役のクリス・プラットは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスターロードに比べるとコメディ要素は薄いですが、その分頼れる雰囲気が増してワイルドなアメリカ男という感じ。ラプトルを制するというシリーズ屈指の驚きも納得できるように描かれてます。オーウェンと行動を共にするパークの責任者クレア役のブライス・ダラス・ハワードも実に魅力的。最初はキャリア・ウーマン的で親しみにくい感じながら、立派なサバイバーへと変貌していくのが素敵。クレアの甥であるザックとグレイの兄弟も非常にイイ。特にグレイ役のタイ・シンプキンスは『アイアンマン3』のハーレイ少年役に続く存在感。この兄弟にはどこかスピルバーグ作品っぽさを感じます。押しの強さと気安さが憎々しいヴィンセント・ドノフリオも良いです。

監督のコリン・トレボロウはほとんど無名だっただけにさほど期待してたわけでもないんですが、本作を観る限りまた頼もしい監督が現れたようで喜ばしいですね。アガるキメのショットが色々あるし、シリーズを「継承している」感がスゴくあって、かつそれをブラッシュアップしてるところに笑みが止まりませんよ。もう細かいことは言いません、この興奮度を味わうには予告編以上の情報は何も入れずに観るべき。とにかく楽しい!面白い!手に汗!乳揺れ!そしてなんと言っても恐竜!恐竜が見事に見所なんですよ!あと乳揺れ!シリーズ観てなくても楽しめるし、観てればこの上ない喜びも味わえます。このテーマパークにはいつか行ってみたい、と考えて、あーフィクションだった……とへこむくらいですよ。

↓以下、ネタバレ含む。








■ノスタルジック!(過去の継承)

自然界の怖さ、人間の思い上がり、テーマパークのワクワク感、金儲けを狙う奴等の末路など、基本的には今までシリーズでやってきた要素で構成されているので、ぶっちゃけ新しいことをしているわけではないんですよ。でもそれがシリーズを追ってきた者には懐かしく、かつ新規で観る人には自然をもてあそぶ人類への警鐘というテーマを新たに訴えることにもなります。案の定、人為的理由で恐竜は逃げ出すし、人々は襲われるし、恐竜をとっ捕まえようという輩は出てくるし、でも当然殺られるしと、ある意味同じことの繰り返しなんですが、しかし単にそのままなぞっているわけではなく、シリーズを踏まえてのブラッシュアップが良いんですよ。

オープン前の視察だった1作目からさらに進み、既にオープンして日に二万人もの客が来場しているということ、これによりテーマパークとしての楽しさを存分に描くことができ、かつ惨劇に襲われる人数が段違いという迫力に繋がります。現場で奮闘するトップであるマスラニCEOは、1作目でエリー博士に呆れられたハモンド社長の上を行って自らヘリに乗り込むし、2作目でラプトルにより次々と姿を消していく捕獲部隊と今作でのインドミナス捕獲部隊のバイタルが次々フラットになっていくのも重なります。そしてティラノサウルス、スピノサウルスよりさらにデカいインドミナス・レックスの脅威、3作目での恐怖感が凄かったプテラノドンら翼竜の倍増、新たに登場した海洋恐竜。シリーズものならではの郷愁を刺激しつつも、継承が随所に活かされ新たな興奮をくれる。これはシリーズものの正しい姿の一つでしょう。何よりあのテーマ曲が流れるだけで泣きそうになります。

舞台も1作目と同じイスラ・ヌブラルだったり、蚊の入った琥珀が出てきたり、前社長ハモンドの像が立っていたり、恐竜誕生の経緯を説明してくれるDNA君もさりげなく再登場したりと1作目好きならニヤリとするシーンも多いです。1作目のパークの施設が出てきてあの頃の車が放置されていたり、ティム少年がいじくっていた暗視カメラ付きヘルメットがあったり(しかもまだ動く)、ネドリーを倒したエリマキ恐竜がホログラムで登場してラプトルを足止めしたり。それらにしっかり兄弟ドラマや恐竜アタックを絡めているのも良いです。こうしたノスタルジーの強さが面白さに繋がっているところも多いので、それを「安易な焼き直し」と取ると否定的な意見も出そうですが、そこは僕は「受け継いでいる」と捉えたいです。

■エキサイティング!(二重の興奮)

ジュラシック・ワールドという施設、「最初は恐竜の種類も少なかった」とか「客は次々に新しさを求める」といった台詞からもオープンしてそれなりに経っており、ザックが恐竜自体にあまり興味なさそうなことからも既に世界中に認知されているということが分かります。それでも(安全性やら倫理観やらを抜きにすれば)これほど心踊るテーマパークもないでしょう。「JURASSIC WORLD」と書かれたあのゲートを潜るときの、電車の一番前に陣取った子供たちが揃って口をポカンと開けたまま見上げる顔。グレイが自分を抑えきれずに走り出す姿。子供のトリケラトプスに乗ったり首長竜に抱きついたりする子供たち。そんなのを見てるだけで「子供は恐竜大好きなんだよなー」と思って泣きそう。1作目でグラント博士が初めてブラキオサウルスを見たときの感動があちこちで見られるんですよね。グレイがホテルの部屋に着いた途端我慢できずに窓へ走り寄り、窓を開けると目の前に拡がる絶景、そのままカメラがずーっと全景を映しながら真っ直ぐ移動するというのも、パークの広大さを示しつつ高揚感を煽っていて上手いです(なんか寿司屋まであったな……)。ジャイロスフィアなんてめっちゃ楽しそうだし、あの形状を利用してビリヤードのように転がしたりインドミナスがなかなか噛み付けなかったりという演出にも活かしてて一石二鳥感があります。

もちろんその興奮は恐竜あってこそですが、こちらは自然の脅威としても容赦なく襲ってきます。最強の敵インドミナス・レックスも突き詰めれば人のエゴの犠牲者ではあるんですが、そう感じさせないよう巧みに仕込んでる気がします。デカさ強さ速さ頭の良さに擬態に熱感知といったチートすぎる能力、アルビノならではの異世界感、人を食ったばかりの口元を映しての恐怖、共食いという狂暴性、食物連鎖の頂点を自覚した脅威など、もりもり別格な設定を付け加えることで余計な同情や悲哀は極力排除しようとしてるようにも感じます。

逆にヴェロキ・ラプトル4姉妹は、ちょっとかわいくなりすぎでは?と思わせておいて敵に回った途端に最悪の脅威になり、オーウェンが築いた信頼はどうなるんだと思わせてさらに!という、人との関係性を示す役割にシフトしています。ラプトルはシリーズでも最もインパクトある活躍をしてきただけに「今度はそうきたか」という感じですね。名前が付いている、というのが親近感を沸かせることにも繋がっています。チャーリー(C)、デルタ(D)、エコー(E)と、オーウェンが海軍出身だからかフォネティックコードに基づいた命名ですが、Bだけブラボーではなくブルーなのは側面に青い模様が入っているからですかね。その特徴と名前との繋がりの覚えやすさが、ラストのあれが「ブルーだ!」と分かってアガります。4匹のリーダーがオーウェンだということを「Aは俺だ」と言わせるのも面白いです。

他にもモササウルスとかね、たまりませんね。なかなか顔を見せないシャイっぷりながらごちそうには目がないです。食いしん坊キャラか!ジャンピング食事(今日のメニューはサメ)のあと座席が丸ごと下降して水中を見せる仕掛けもダイナミック。「あーもっとモササウルス見たいなあ、野生のモササウルスの動画とかないかな」と探そうとして「モササウルスは今いないんだった……」と我に返ったくらい良いですよ。海があれば空もある、ということで大集団で空の向こうから飛来する翼竜には終末感まで感じるし、子供トリケラトプスが襲われる場面では「やめたげてー!」ってなるし、空中キャッチボールされるクレアの助手ザラが哀れ。彼女はそんなプテラノごとモサちゃんにパックリいかれて、2作目のエディなみに気の毒です。恐竜は相手が悪党かどうかなんて見てないですからね。あとインドミナスと戦うアンキロサウルスが熱い!硬い!

パークの楽しさによる興奮から恐竜パニックによる興奮にシームレスに遷移することで、いつの間にかとんでもない事態に!というのが、ハイブリッドな作品だなと思わせてくれます。襲われることなくパークの全容だけを描いてても楽しそうですが、あまりにそれが当たり前になるとホスキンスが言うように動物園になってしまうんですよね。

■ファンタスティック!(頑張る人たち)

今作のクリプラの頼もしい男ぶりは異常なほどで、逆行でシルエットしか見えない登場からしてヒロイックだし、カチカチやりながらラプトルをしつける姿、ラプトル隊と共にバイクで疾走する激燃えシーンなど、『her 世界でひとつの彼女』の頃のぽっちゃりからは想像できないほどカッコよすぎ。子供たちが出会って間もないのに彼と一緒にいたいと言い出すのも何となく納得しちゃう頼れる感があり、「ラプトル待てポーズ」が世界中の動物園の飼育員の間で流行るのも分かろうというものです。ちなみにオーウェンがカチカチやってるのはクリッカーという音で動物をしつける器具だそうです。シャーペンではなかったです(そりゃそうだ)。

クレアは仕事優先のお堅い女性という感じで登場しますが、客の名前を必死に覚えようとしてたり甥っ子の年を知らなかったりと、どこか抜けてる感じがして運用管理者としてどうなの?という気もしなくもないですが、スカした白スーツを脱ぎ捨ててタンクトップで野生化していくのがたまりません。胸元が砂にまみれたり汗だくになったり揺れたりタイトなスカートはいつの間にか破れてスリットが入ってたり(略)なんだか健康的にエロいです。マスラニCEOのヘリに乗ってるとき踏ん張ってる姿もセクシー。だから甥っ子たちに「おばさん」と呼ばれてるからっておばさん扱いしてはいかんのですよ!オーウェンとのキスシーンは生死の境目でテンション上がりまくったんでしょう、そういう意味ではあそこに入れるしかないなってくらいロマンティックすぎて笑います。笑うんかい。また、死にかけたブロントサウルスに触れるときの恐る恐るという動作から、この人は実際に恐竜に触ったことはほとんどないんだなと分かりますね。オーウェンに「数字しか見てない」と言われたのも実際そうなのでしょう。生で恐竜に触れ、その手の先で命が消えていくことに涙を流す。ここはクレアにとっての大きな転換点となり、後半ホスキンスに食ってかかるのも不自然ではなくなります。また、空約束ばかりしていて姉に「約束より行動だ」と言われますが、いつの間にか行動の人となっていき、これがラストにも繋がります。思えば電話中に泣いてしまう兄弟の母親も、ビジネスという現場で恐竜のような存在と対峙する世界に生きているのかもしれません。

甥っ子兄弟の兄ザックが恐竜より女の子に夢中というのは「恐竜がいまや超珍しいわけでもない」という世界設定を上手く表してます。DNAを題材としてるだけに子孫を残そうとする遺伝子の強さの表れでもあるでしょう、と言いたいところですがまあそういうお年頃だしな……夏のリゾート地だし。そんなザックもモササウルスの迫力には思わず喜んじゃうというのが微笑ましい。弟のグレイは恐竜大好きな少年らしさでパークを楽しむ姿を見せてくれるので、視点が観る者に近いです。グラント博士に通じる恐竜博士という役割もあり、クレアに「手を繋いで」と言われて素直に手を出す可愛らしさもあって、要するにカワイイ。この兄弟が揃って恐竜に喜ぶのがホントに可愛くてですね、インドミナスに追われて崖から飛び降りたあとも「やったな!」って笑い合うところとかもうね!母親は「兄は二人になると弟に意地悪だ」とか言うけど、ザックはグレイに対し「財布をスられるぞ」と心配したり、離婚話で塞いでると「もっと奥まで行こう」と楽しませようとするし、旧施設で物音にビビるグレイに「何もいないよ、信じろ」と安心させようとしたり、終盤の車の中では昔幽霊から守った話をして「俺がいるから大丈夫だ」と言ったりと、普段の態度は荒いくせにいちいち優しくて、もうこの兄弟見てると泣けてしょうがないです。

マスラニCEOは売上どうこうより「客は楽しんでるか、恐竜たちは幸せか」と言う台詞があったためにどうにも嫌いになれないです。もちろん実業家だから商売ありきだし倫理的な話もあるけど、根底は人々を喜ばせたいというハモンドの意志を継いでいるし、人手がなければ自らヘリを飛ばすし、ラプトルを出すことには最後まで反対する理性があるところも憎めないですよ。演じるイルファーン・カーンはどこかで観たと思ったら『ライフ・オブ・パイ』の人ですね。また、パークのTシャツを着た単なる恐竜マニアかと思ったコントロールルームのロウリーが「誰かが残らなきゃ」と言う勇姿!でも「彼氏いるから」って言われたり「男でしょ」とか言われたり散々です。最後去るときにそっと手に取るのが草食竜のフィギュアだけ、というのがまた憎めません。あとはオーウェンの同僚役のオマール・シーが生きててよかったとか、序盤でラプトルに襲われかけた細い人がラプトル隊出発のゲートのボタンを物凄い気合い入れて押す姿とかも良いなー。憎まれ役のホスキンスが恐竜の兵器化を偉そうにぶってるときに「もー分かったうるさい」って感じで突然ラプトルが現れるのも面白いです。

■エクセレント!(予想を超える終焉)

クライマックスは誰もがここだけは誉めるんじゃないかという、怪獣映画を思わせるほどの恐竜バトルが凄まじいです。グレイの言う「歯の数が足りない」はラプトルだけでは攻撃力が足りないという意味でしょうが、それでクレアが奴のことを思い出すんですね。「9番パドックを開けて」で「一体なにを?まさか……」という予感に震え、発煙筒を付けた時に1作目のマルコム博士の姿が重なる。発火する発煙筒を構えたヒールの女性が屹然と立つ後ろ姿、その向こうの闇からゆっくりと現れるティラノ、というショットは最高すぎて震えます。クレアがヒールで走り回るのは大変すぎないかと思ってましたが、このショットのためだと思えば全然あり、というくらいカッコいい。ティラノ出現については伏線がほとんどないんですが、これに関しては伏線がないのが逆に効いてると思います。エサやりタイムでほんの一部姿が見えるだけで存在は示してるし、それ以上姿を見せると予想が付いちゃうので十分。シリーズを観ていればT-REXこそ主役であるというのは多くの人が心に刻まれていると思われるので、それを継承した演出として言うことなしです。

しかし相手は最強の敵インドミナス、ティラノでさえやられかけて大ピンチ。「ティラノがんばれー!」と脳内の子供時代の自分(10歳)が叫ぶなか、聞き覚えのある鳴き声!このとき音楽が途絶えて無音になり、その一瞬後に鳴き声が響き渡ってブルーが駆けつけるというのがまた震えます。そしてティラノとラプトルの夢の共闘!恐竜同士の激熱バトルを長回しでこれでもかと見せつけられ、ついにインドミナスを追い詰める両雄(雌だけど)。しかしまだ戦意を失わないインドミナス。どうなる?と身構えたところで、まさかの一撃!もう少しで「うおおぉぉぉ!!」と興奮の叫び声を上げそうになりましたよ。さりげなく柵が壊れたり、見覚えのある水面が向こうに見えたりと、ちゃんとお膳立てをした上でのあの登場シーンなんですね。姉妹を失い、最後に一匹で去っていくブルーが悲しいです。

 ※

完璧な映画かと言われればそんなこともなくて、インドミナスの管理がちょっと杜撰だとか、ずぶ濡れのはずのマッチが付くとか、島を抜け出す船がいつまでたっても来ないとか、粗と言われればそうかもねという点はあります。でもまあそれ以上に楽しめてしまったので、それほど気にはならなかったですけど。ビッグ・バジェットの続編としては言うことなしですよ。

1作目のオリジナル・キャストとして唯一登場するBD・ウォンのウー博士、彼が逃げ延びたことにより更なる続編も示唆されていますね。ウー博士の言う「ここでやっていることは最初から変わってない」と言う台詞が、同じ過ちを繰り返す人類の愚かさの象徴にも感じられます。結局「人類は恐竜には勝てない」のですよ。ティラノが吠えて終わる素晴らしいラストショット、あの建物の屋上はホスキンスが翼竜の襲来を見ていた場所と同じだと思うんですが、「進化には勝てない」とうそぶいていた人間に代わり恐竜がその場所に立つというのが、人間の思い上がりへの見事な警句にもなっているのです。

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