2015
08.04

他人のリアルは自分のシュール。『リアル鬼ごっこ』感想。

real_onigokko
2015年 日本 / 監督:園子温

あらすじ
JKが標的、ではないよね……?



全国の「佐藤さん」が謎の鬼に殺されるという山田悠介の同名ベストセラー小説を、園子温監督が大幅に設定変更したオリジナル脚本で映画化。全国の女子高生たちが命を狙われる、という全く新しい話に生まれ変わったスリラーミステリー。

この原作の実写映画化自体は既に存在して、5作目まで作られています(未見ですが)。しかし今作は園子温が「原作読まずに作った」と明言しただけあって原作とは全くの別物です。原作は正直あまりの酷さに怒りすら覚えたので改変するのはいいんですが、ここまで跡形もないとは……出てくるのは女性だけ、パンチラしまくり、ゴア描写満載、という実に振り切った方向性で、しかも訳の分からない恐怖に延々と追われるという不条理劇になっており、とにかくブッ飛んでます。しかしタイトルにインスパイアされたと言うだけあって、そこは意外と偽りなしなんじゃないですかね。理不尽極まりない展開だけど一応説明が付くようにはなってるし、色々と思いきりがよいので嫌いじゃないです。特に序盤のバスのシーンは驚愕。

主演のトリンドル玲奈は泣いたり叫んだり走ったり血糊浴びたりと大変頑張ってます。JKに見えるかといえばギリギリ見えるのでオッケー。手も足も細っこいのに走りまくるので今にもコケそうでハラハラします。あと篠田麻里子、真野恵里菜が出てくることで飽きずに観られるというのはありますね。マリコ様がJK?と不安がよぎりますが大丈夫、JK役ではないです。ウェディングドレス姿でハイキックキメたりしてくれます。真野恵里菜は『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』くらいしか知らないんですが、凛としたランナー姿が良いです(というか園監督作に出まくってるんですね。観ねば……)。

かなりの人体損壊描写も見られますが、実はそんなにリアルでもないというか、若干作り物感があるんですよね。『地獄でなぜ悪い』に近いものがあります。だからスリラーと見せかけてコメディだったりもしますが、そう見せかけてさらに捻ってくる。観る者を突き放したまま続くので若干疲れますが、劇中の人物が「シュールに負けんな!」って言ってるので、そういうことです。

↓以下、ネタバレ含む。








ブッ飛んではいるんだけど、全てはクローンとして作られた女性を追い回すゲームの一環であるとラストで明かされることで説明を付けています。ただその表現法方がひたすら理不尽。序盤のバスのシーンはどうってことない日常がダラダラ続くことで逆に不安を煽ったところを一気に非日常に突き落とす。以降も同様で、何気ない日常のひとコマが始まったかと思うと突然の非日常が取って変わる。終わりのない悪夢が続く不条理さは、整合性とか理解力とかを無視して延々と続きます。ミツコにとってはまさに悪夢を描いており、正確には過剰なヴァーチャルにより悪夢的な実在感を持ってリアルに立ち上がった世界です。全ては一人の男が己の成し得なかった欲望を満たすための遊戯だったということなんですが、狂人の織り成すリアルはターゲットにとってシュールになりうる、ということですね。

ミツコを助けるアキの存在からも、登場人物たちがどこまであの男のコントロール下にあるのかはよく分かりませんが、操作しなければ勝手に動くってことなのかな?女子4人で授業を抜け出すシーンとか凄い浮いてるんだけど、あれも非日常を強調するためなんだろうと思いつつ、同時に彼女らの日常を見たいから映し続けてるかのようにも感じられます。男の目線からもてあそばれ続ける女性たちを延々と映し、そこから抜け出すと男だらけの暑苦しい厨房、そしてむせかえるような野性的な男たち。女世界と男世界を完全に切り分けてるのが欲望丸出しで分かりやすく、パンツ一丁でベッドに誘う斎藤工の胡散臭さがそれをさらに強調します。人が死に絶えたか激減したかという近未来、くらいしか物語の背景は分かりませんが、鬼ごっこの鬼を返り討ちにすることで身勝手な男に対する女の子の怒りを描いた、と言えそうです。

と言いつつ、恐怖におののく女の子を撮りたかっただけか?という気もしなくもないですが。バスのシーンもグロいっちゃグロいけど、あんな真っ二つになってるわりにハラワタは全く飛び出てないし(『ゴーシトシップ』の方がエグい)、走っている人の上半身がスパスパーンって飛んでいくのはちょっと笑いそうになるし、ミツコが着替える用にちゃんと汚れてないシャツは置いてあるしと、若干コメディ色を滲ませてます。あと執拗なパンチラ、さらにはパンモロ、トリンドルやマリコ様のブラ姿といったライトなエロ描写、股間をワニにガブガブされるというエロ+グロと、色々な面で園子温らしい。或いは観る人が園子温に求めるものを「じゃあ見せてやるよ」という憤り込みで盛り込んだという可能性もありえます。だから結果的にスリラーでもコメディでもあるし、エログロはテーマにもファクターにもなってると思うんですよ。「人生はシュールなんだ、シュールに負けんな!」というのも、ミツコに向けた激励の言葉にも観客に向けたメタ発言にも取れる。観てるときはそうでもなかったんですが、こうして考えてみると意外と多角的な視点が練り込まれてるのかもしれません。

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