2015
07.20

ゆきてかえりしひつじたち。『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』感想。

Shaun_the_Sheep_Movie
Shaun the Sheep Movie / 2015年 イギリス・フランス / 監督:マーク・バートン、リチャード・スターザック

あらすじ
牧場主、寝すぎ。



牧場で暮らすひつじのショーンは、自由に過ごすために牧場主を眠らせるといういたずらを仕掛けるが、寝入った牧場主を乗せたキャンピングカーが走り出してしまう。牧場主を追ってショーンとひつじ仲間たち、牧羊犬のビッツァーらは都会へと繰り出す。イギリスのアードマン・アニメーションズによる人気クレイアニメが劇場長編となって登場。

元はクレイアニメ『ウォレスとグルミット』から生まれたスピンオフである『ひつじのショーン』。牧場に飼われたひつじたちの日常コメディで、台詞はなし、音楽と擬音チックな言葉だけで話は進みます。(Eテレ土曜9時に放送中)。普段はほとんど牧場の中だけで展開するのが、牧場主を連れ戻すために追いかけるとそこはいつもと全く違う都会!可愛らしいキャラクターたちが繰り広げるドタバタ劇は都会の中ではますます珍妙で、高度なスラップスティックとして楽しませてくれます。ブラックさ薄めで細かいネタの詰まった笑いにクスクスさせながらも、じんわりと心に沁みる関係性を描き、後味も爽やか。

これで全編クレイアニメなの?と思うほどの滑らかな動きも思いやりに溢れた話の作りも実に丁寧で、観る人を選びません。大人も子供も楽しめるし、テレビ版を観てなくても問題なし。映画好きなら数々の映画ネタにも笑えます。畳み掛けたり緩やかだったりテンポも自在。いわゆる「ゆきてかえりし物語」ですが、キュートな中にサスペンスもアクションも感動もある。良いです!

↓以下、ネタバレ含む。








動物が人間の住む都会に行って大騒動とか、飼い主を探して旅に出るみたいな話は他にも色々あるので、そこまで独創的なストーリーというわけでもないはずなんですが、とにかくキャラの立て方と細部のこだわりがイイので全く問題ないです。いたずら好きのショーンがどんどん繰り出す奇策、それをアレンジしてトラブルを招きながらも協力して牧場主を探すひつじたち、ショーンを見張る立場ながらいつも巻き込まれる牧羊犬ビッツァーの牧場主への愛情と、いつものキャラに一味加えて拡げています(3匹のいたずらブタもいつも以上にやりたい放題)。ひつじが柵を飛ぶと寝てしまうという驚異の睡眠導入力とか、人間に化けるという無茶な案が意外と通じちゃうとか、レストランでの見事なピタゴラスイッチなど楽しい場面が目白押し。ぐずる子ひつじを寝かし付けるために皆で歌うところは楽曲の良さもあっていいですね。そこにボイパまで入れるか!という細かいアイデアがニクい。

動物捕獲人トランパーが絡む追いかけっこはかなりのアクション性。しつこさは『ターミネーター』ばりだし、スケボーのように板で手すりを滑るとか肥料の中に突っ込むシーンなどは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』オマージュを感じます(邦題もその影響なのかな?)。騎馬警官や「アビイロード」をネタにするのがイギリスらしいですね。トランパーは『タクシードライバー』みたいに鏡の前でポーズ決めるのが笑えますが、ラストで狂気に駆られる姿はなかなかホラーチック。刑務所のような動物捕獲センターにもスリラー風味を感じますが、こちらは変な動物たちが色々出てきて面白い。拳にBITE(噛む)とBARK(吠える)とタトゥー風に書いてある犬とか、ひつじだけに『羊たちの沈黙』ネタで猫がレクターだったりとか。ずっとこちらを睨みつけてる強面の犬が実はフェイクで本人はとっくに脱走してるというオチや、ラストで動物愛護センターに変わるところまで上手く機能しています。特にブサイク犬スリップは良いですね。自身は孤独でありながら他者への優しさを忘れない、こういうキャラは無条件で応援したくなってしまうんですよねえ。だから最後に飼い主が見つかるのにはホッとします(しかも「顔が同じ」で泣き笑い)。

毛刈りテクがヘアカットに活かされる牧場主は、Mr.Xのポーズが明らかに『X-MEN』のウルヴァリンだったりと笑わせてくれますが、ショーンを見ても記憶を失っているために追い返したりしてしまう、これが結構ショッキング。昔の集合写真が泣かせどころになるのは予想できますが、牧場主の記憶がなかなか戻らなくてやきもきするし、最後の大ピンチで記憶が戻った後の牧場主も熱い。いつも同じことの繰り返しからちょっと抜け出したい、という思い付きから起こったトラブルを経て、結局いつもの日常の中にこそ大切なものがあるという締め方は王道のひとつ。しかしながら、別れ・すれ違いを経てなお諦めないというポジティブさが貫かれているのが気持ちいいです。

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