2015
07.04

最高な点をひたすら上げていこう。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想(その2)。

Mad_Max_Fury_Road_2
Mad Max: Fury Road / 2015年 アメリカ / 監督:ジョージ・ミラー

あらすじ
I Live! I Die! I Live Again!



前回の感想はこちら。
「死」の道で語る「生」の伝説。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想。

既に感想はアップしてますが、まだまだ言いたりない、細かい点にももっと言及したい!ということで第2弾はこのブログではお馴染み「最高な点をひたすら上げていこう」シリーズです。論評として素晴らしいのは他のブログ様でも色々書かれているし、前回の感想はちょっと真面目すぎたので、今回は若干ヒャッハー!な感じで行きますか!でもそっちに振りすぎると言語機能が劣化するのでほどほどに……。

それにしても観るたびに新たな発見があります。凄いです。観てる間にいつの間にか指をV8教の形に組んでるのに気付いてビビります。中身がないとか頭空っぽで観れるとか一部で言われるのも、細部の作り込みが凄まじいおかげで無意識に補完できてしまうからなんですよ。むしろぎゅうぎゅうに詰まってるんですね。どれだけ詰まっているのか、それを検証していきたいと思います。と言ってもパンフ読めば分かることとか監督のインタビューなどで言われてるようなことではなく、自分で観て思ったり気付いたりしたことを挙げていくだけなので主観オンリーです。まあ映画観た後ビール飲みながらダベってる感じだと思ってください。内容も時系列も敢えて気の向くままあっちこっち飛んでます。もうツイッターなんかでも色んなことが言及されてるんで被るかもしれませんが、そんなことは関係ない!おれは言いたいことを言うんだ!イモォタァァァァン!

↓以下、ネタバレ含む。むっちゃ長いです。








・初っぱなからアレですが冒頭のトカゲは頭が2つあるんですよね。最初観たときは気付きませんでした。画面中央に立ってるマックスが立ちションしてるのか否かに意識がいきすぎてたのです(言い訳)。あのトカゲで、もう生態系が汚染された世界だというのが分かりますね。しかしトカゲを生きたまま食うってすげーな。それ以降マックスはまともに喋らないので「冒頭のナレーションはトカゲが喋ってたのかと思った」というかた(某フォロワーさん)がいてもしょうがないのです。ところでマックスは立ちションじゃないならあそこで何やってたんだろう?

・とっ捕まったマックスが背中に彫られる「O型 ハイオク」はおそらく誰にでも輸血できるO型のRh(-)ということなんでしょうかね。ラストでフュリオサに躊躇なく血を与えることができたのもそのためでしょう(最初はクリーンな血液という意味かと思ってた。ちょっと調べた)。また輸血袋として逆さに吊るされるから背中の文字も上下逆に彫ってある、というのも細かい。

・マックスの切った髪の毛を幼いウォーボーイが集めてましたが、あれも何かしらの資源として使うのでしょう。慢性的に様々な資源が不足した世界であることが伺えます。あれだけ崇拝されてたイモータン・ジョーがラストでただの肉の塊になった途端みんなに持ってかれちゃうほどですからね。

・逃げるマックスが扉を開けると崖の上。あそこで映るシタデル(砦)の全景は一瞬ですが、大勢の人が地べたにたむろしていること、大きな三つの塔があること、正面の塔の屋上では緑が育てられていること、などが分かります。一回でそこまで把握できたらスゴい。

・イモータン・ジョーの着衣シーンで、彼もまた皮膚病に犯されてるのが分かります。それでも威圧感ある呼吸器とマッチョに見えるアーマーを纏い、過去の栄光である勲章を胸に付け、締めには股間にドクロを装着ですよ。善悪以前に、生きる気力満々なのが凄いから手強い。イモータン・ジョーは人心を操る術に長けていて、ウォーボーイズを手足のように使うために自分を神と崇めさせるのも為政者の姿として歴史に多く見られるやり口だし、「水に心を奪われるな、禁断症状になるぞ」と言うのも、水を極度に制限して狂おしく求めるように仕向けることで麻薬を使うよりもたやすく支配できる、という一端が見えて恐ろしい。

・デカい図体でおつむが弱いリクタスと、小さな体で切れる頭のコーパス。このイモータン・ジョーの二人の息子は『マッドマックス サンダードーム』のマスター&ブラスターを思い出します。マザーズミルクを搾り取られる母乳女たちは元子産み女らしいので、他にもジョーの息子はいるのかも。母乳女たちはなんか美容室でパーマ当ててるおばさんたちみたいですが、母性を刺激させるためか手に持ってるのは赤ん坊を模した人形で、結局は牛代わりにされてるってことですからね、非道です。この搾り取られるだけだった母乳女たちが、取られたものの代わりとばかりに最後に盛大に放出する水に、彼女たちの解放の象徴が見られます。

・砦では野菜らしき緑の植物も育てていて、しかも吊った鎖で上下に動かしたりしています。あれで日の光の調節とかしてるんでしょうか、なかなかの技術。あのシーンでは、周りに支えられて立っていたジョーが嫁の行方を気にした途端むっちゃ速く走るというのに笑います。技術と言えばフュリオサの義手はどうやって動かしてるんだろう。ただくっつけているだけのように見えたけど指動いてたよね?神経接続して油圧とかで動かしてるんだろうか。ということはですよ?オートメイル技術者もいるってことですよ?車は整備・改造お手のものだし、恐らくギターや太鼓の調整が出来る楽器の専門家もいるわけで、イモータンのところは何気に人材豊富です。

・その音楽隊の乗るドゥーフワゴン、力強く太鼓を鳴らす後ろ姿に「リズムで部隊の士気をアゲる奴らがいるのかスゲー!」と思ったのも束の間、カメラが前方にグーッと回り込んだと思ったらそこにいるのがギタリスト!というのは初見の時はブッ飛びました。ギターを弾くコーマドーフ・ウォーリアーを手前にして後ろの車が火を噴くとギターからも火炎放射、というショットは、軍団の全容と炎の恐怖が一発で分かってスゴい。音楽隊の他にも、爆弾槍という武器はあの世界観ならではで良いですね。あと棒飛び隊のアイデアは画期的。画的に面白いだけでなく実践でも様々な見せ場を作ってくれて最高です。

・車絡みの良ショットはさすがに多くて、アクションはもちろん最高なんですが、例えば彼方からV字に展開して走ってくるイモータン軍に向かってカメラが下方向に寄っていきその上を走り抜けていくとか、蜃気楼の向こうに揺らめきながらこちらへ横並びで走って来るイモータン軍なども凄かった。棒飛び隊が左右にユラユラしてるのがまた不気味。

・ウォーボーイズは「V8!V8!」や「イモーターーーン!」と言った雄叫びもイイけど、序盤の「ウォーボーイ!」って連呼するところも好き。お水もいっぱい!ウォーボーイ!ミルクもあるよ!ウォーボーイ!あとはニュークスも言う「死んで甦る」は原語の「I Live!I Die!I Live Again!」の方がイイ。「Witness me!(俺を見ろ)」や「Witnessd!(よく死んだ!)」も印象的。特にニュークスの言う「俺を見ろ」は最初と最後でニュアンスがかなり異なるのが最高です。

・複数の車を合体させた車が多く出てきて、イモータンのギガホース、リクタスのビッグフットは特に目立ちます。人食い男爵のトレーラーみたいなのも威圧感ある。武器将軍の車はキャタピラなので足を取られる沼地もラクラク走行!というのがまたバリエーションになってます。あとあまり映らないけどカーキャリアも走ってて、そこに他の車両やウォーボーイズがわんさと乗ってるんですよね。でも一番戦闘力高いのはヤマアラシ隊のクレーン車付きトゲトゲトラックでしょうか。爆弾槍でも倒せない重機を使ってくるのは彼らだけ。たまたま車の下に爆弾が落ちなければ危なかった。そういえばマックスの愛車インターセプターは冒頭で奪われ改造され最後にスリットを乗せたまま両側から挟まれて炎上。不敏な……

・それにしてもフュリオサはどうやって逃げ切るつもりだったんだろう?ウォータンクに乗ってるボーイズも最終的にどこかで葬り去るつもりだったのか、何か理由付けてどこかに置き去りにするつもりだったのか。まあ結果オーライなんですが。あとフュリオサが頭に黒いの、グリースかな?を塗るんですが、最初予告で観たときは頭半分焦げてるのかと思って戦慄してましたよ。そこまでエグいものではなかった。あれは大隊長フュリオサとしての戦闘スタイルなんでしょう。折り返し後はやってないですね。そういえばニュークス登場時に「大隊長が裏切った」「誰だ」「フュリオサだ」っていうやり取りがあるけど他にも大隊長っているんだろうか。人食い男爵や武器将軍がそれなのかな?

・音楽設計が抜群なんですよ。砂嵐で散ってゆくウォーボーイズのバックで流れるスコアが悲しげながら荘厳だったり、バイク軍団との闘いでの盛り上げかたも素晴らしい。砂嵐後にウォータンクのエンジンの砂をガンガン叩き落とす音に合わせてドラムの音が入ってくるとか、ドゥーフワゴンにカメラが近付きギターの音が聞こえるとそれがいつの間にか楽曲に馴染んでいるとか。どこで流してどこは流さないかとか、ブレイクが入るタイミングとかスゴく計算されているんじゃないでしょうか。

・輸血袋として車の前に張り付けられながらも悪態付きまくるマックス。輸血なんていつするんだと思ったら、マックスを繋ぐ鎖には輸血チューブも絡ませてあってニュークスに直結しているんですね。マックスの鉄分が不足しないか心配です(それどころじゃないが)。ところでいつの間にかマックスの左襟にその輸血チューブがくっついてるのが何度か映ります。いつの間に付けたんだろう?自分に刺さってたのを取っておいたのか、あるいは武器将軍のところからかっぱらってきたのか?(あのバトルの後から見られる)口枷やライフルなどは投げ捨てても役に立ちそうな小物はちゃんと取ってあるというのがサバイバル術。これが最後にフュリオサへの輸血に役立つし、マックスは輸血袋だった経験を活かして迅速な手際でフュリオサの命を救うのです。伏線の妙ですね。

・伏線といえば、マックスが鎖を切ったあとニュークスが鎖を引きずってウォータンクに追い付くシーンで「あの鎖邪魔くさくて走りにくそうだなー」と思ってたら、これがフュリオサの首を絞めるのに使ったり、沼地で木にウインチを回そうとして鎖が足りないときに切り取って足したりとしっかり役に立ってるんですね。あと沼地で武器将軍にライフルを撃つシーンで2発外したマックスがフュリオサに射撃を代わりますが、これもフラジールが一人逃げようとしたときにフュリオサが迫ってくるバイクを長距離射撃で倒したところをマックスが見てるシーンがしっかりあって、その腕を知っているからこそ代わったんですね。ちなみに代わる前のフュリオサがマックスの後ろで「あー、あたし撃とう、か?」みたいにちょっと遠慮がちに手を伸ばそうとするの、フュリオサの劇中唯一カワイイところ。

・マックスがフュリオサたちと初対面するシーンでは、明るい日差しのなかワイブスが並んで水を使っているというオアシスのような画が別世界のようで印象的。そのあと始まるマックスvsフュリオサでは、銃で脅すマックスの死角から飛び出してくるフュリオサ、というショットがあまり見たことない構図でスゴくイイ。ニュークスを交えた一進一退の攻防からマックスがフュリオサに馬乗りになり、ニュークスが差し出したマガジンを銃を叩きつけるように装填してフュリオサの脇に三発!のテンポが素晴らしいです。ワイブスが地味に活躍してるのも面白い。その後ニュークスがボルトカッター取りに行くときマックスが「鎖引っ張りすぎるなや」みたいにオウオウ言うのカワイイ。

・『マッドマックス2』の印象が強いのか「犬が出なくて不満」という声を見かけましたが、これはおかしい。だってニュークスっていうわんこが出てますから。車運転して「むっちゃ興奮したー」とか言ってるの尻尾振ってるようにしか見えないし、鎖持って「ゆけつぶくろー!」って走ってくの投げた棒切れ拾ってきたわんこだし、ラリーとバリーを友達って言うの自分の尻尾追いかけるわんこみたい。砂嵐の中で爆発する車が花火みたいで思わず見入っちゃうとか、エンジン引き抜いちゃうリクタスを見て目をまんまるにするとか、虫食べちゃうとか、もう完全にわんこです。きょうのわんこ、ニュークス、とか言って朝の番組に出て欲しい。可愛い。スリットの投げる槍がマックスの頭を掠めたときにクスッて顔するのもいたずらっ子っぽい。

・可愛いのはニュークスだけじゃないんですよ。最初はカッコいいと思ってたマックスが、何度も観てるうちに可愛く見えてくるのはなんなの?ウォータンクに乗せてと言うフュリオサに「やだ」みたいに意地張ってたのに「一生その顔でいいの?」で折れるとか、フュリオサにキルスイッチの説明を聞いたときの分かったんだか分からないんだか微妙な表情も不安にさせてくれます。これはその後フュリオサの合図で速攻発進したのを見るとちゃんと分かってたんだなと。マックスはデキる子なんですよ。ウォータンクに乗ってまずやるのも隠し武器を取り上げることだし。指を鳴らして銃をさす姿なんかイカす!でもニュークスカーの転倒後に砂から起き上がった直後のイヤイヤ~ンみたいなポーズには「女子か!」って思うし、スプレンディドから水を奪って飲むときに勢いが強すぎて若干ガボガボッってなってるところとか、フュリオサに何と呼べばいいか聞かれクールに「好きに呼べ」と言ったら「バカヤロー」になったときのマックスの「あ、そうくるの?」という意外そうな顔とか、やはり可愛い。

・ワイブス、赤毛のケイパブルは人食い男爵のこととか知ってたりやたら物知り。ゴーグルを頭に付けた女の子ってイイですねー可愛いですねー。ちょっとドリュー・バリモアに似てますね。金髪のダグはいきなり芝居がかったことを言う不思議ちゃんですが、現実離れした美しさなのでなんか許せる。「銃弾は死の種、植えられると死ぬ」と言ったダグが、最後にばあちゃんの持ってた種を守る役割を担うんですね。ショートのトーストは銃の装填も下ネタもいける巨乳ちゃんです。エロいです。黒髪のフラジールは後半バンダナ巻いてヒッピーみたいだけどカワイイ。スプレンディドはお母さん的な存在になって皆を引っ張るのが健気。最後にマックスと交わす笑顔が魅力的です。彼女は『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』のヒロインですよ。

・銃器も含め、劇中最も活躍する道具がボルトカッターというのがなんか好き。ボルトカッターは、貞操帯を切る、相手を殴る、マックスの鎖を切る、ハンドルを奪おうとする鎖を切る、タンクに打ち込まれた銛を切ると大活躍。マックスの奪ったウォータンクを追いかけるときにこれを持ってきたダグちゃんは偉い。

・どのチェイスシーンも凄いんだけど、岩鬼族とのバイクチェイスはとにかくカッコいい。バイクが高所をジャンプしながら追ってくるのは昔あった「エキサイトバイク」っていうゲームみたいで懐かしい(古い)。マックスが無言でライフルを装填しフュリオサがすかさず受け取って撃つ、マックスも運転しながら窓から撃つ。構図もいちいちカッコいい。そりゃスプレンディドの腹の子も興奮でボコボコ蹴りますよ。あとウォータンクのボンネットが燃えてヤバい、どうするんだってときに、いつの間にか消えたなんてことはせず、ラッセルを下ろして砂をかけて消す!これには大感動。しかもその時にエンジンの口をちゃんと閉じてるんですね。少し前にエンジン口を開くシーンもちゃんと入れてるのがまたニクい。細かい描写を色んなところでキッチリ入れてくるんですよね。ハンドルを銛で取られたあとレンチをハンドル代わりにしますが、そのあとガッチリ付け直すというカットもちゃんと一瞬入ってる。

・マックスがサムズアップした直後、マックスの撃った傷の血で足を滑らせるスプレンディド。彼女が落ちたとき、引き返したら終わりと分かっているからこそ「轢かれた」と言い張るマックスは、またひとつ「救えなかった」という業を背負ってしまう、というのが真正面に視線を据えるトムハの表情から如実に感じられて歯をくいしばってしまいます。

・武器将軍は車を走らせるときに「ハイッ」とまるで馬を走らせるような掛け声を掛けます。カウボーイ気分なんですね。使う銃も銃身の長いワイアット・アープみたいなやつだし、西部劇大好きな感じがします。帽子やリストバンドが銃弾でできていたり、口の中から銃弾を取り出したりとその名に恥じない武器マニアっぷりも発揮。視力を失いながらも、ヴェルディの「レクイエム」をバックに両手を拡げて突撃してくる姿なんて神々しくて、それでいてもう妻に銃弾が当たるかもなんて微塵も考えず撃ちまくり迫撃砲までブチかます。劇中で一番マッドです。

・一方で人食い男爵は劇中で一番のゲス野郎です。あの状況で「大赤字だ」とかウザいし、鉄馬の姉さんの背後に車で迫るときの舌舐めずりしそうな顔、轢き殺すときの心底気持ち良さそうな「おほーっ!」って表情。ゲスですねー。しかし彼の最大のポイントは鎖の付いた乳首でしょう。しょっちゅうチョイチョイと乳首いじってます。しかも撃たれるときは手でかばってます。乳首型のカフスまで付けてます。どれだけ乳首好きなんだ。もう乳首男爵でいいよ。彼がなぜそこまで乳首にこだわるのか?これがおっぱい好きとかであれば普通なわけですよ。しかしこんな荒廃した世界でありながら、乳首という一点豪華主義だからこそ権力とマッドを強調できるんですよ!……単に性感帯なだけかもしれませんが。

・マックスのブーツはスリットに取られ、マックスはニュークスのブーツを奪い、武器将軍のところから奪ってきたブーツをニュークスに渡す。敵同士のときは奪うけど仲間には与える、このブーツリレーはある意味信頼の証ですね。一方でスリットはマックスのブーツをアピールするけどイモータンの車に乗せてもらえず、最後にマックスに向かっていくときに指をさすほどマックスに腹立ててます。ブーツの恨みはこじらせると厄介だな。スリットは口が裂けてるような傷があって、バットマンのジョーカーみたいですね。

・イモータン・ジョーは為政者として有能だという声もありますが、自分がピラミッドの頂点に君臨するためにそうしてるだけで、別に民衆のためにやってるわけではないと思うんですよ。優しいわけでもない。ウォーボーイズに魂は共にあると言うのも戦意を高揚させるためであって、ダメならすぐ切り捨てるのはコケたニュークスのシーンからも明らか。岩にぶつかりそうになるとき「前、前!」って言うのもスプレンディドの身を案じたというよりはお腹の子供のことを思って。これは落ちたスプレンディドの抱き抱えかたが腹しか見てないようなエビぞり状態なことからも分かります。彼は愛妻家などではなく、自分が築いた帝国を継げる子を求めているだけなのです。そもそも「子産み女」という呼称からしてそうですね。棒飛び隊がトーストを連れ戻してきたときイモータンが「まずは一人!」みたいに指を一本ピッと立てますが、頭数としてカウントしてるように見えて「私たちはものじゃない」というワイブスのメッセージが思い浮かびます。

・鉄馬の女たちに母親は死んだことを告げたときの、何かを掴んで胸に当てるようなばあちゃんズの祈りかた。ああそんなやり方だった、みたいに微かに微笑むフュリオサの表情が感慨深いです。フュリオサが故郷に戻ってきたのは7000日ぶり。約19年ものあいだ故郷を思って生きてきたのです。故郷が失われたと知ったときの慟哭は19年分の希望の崩壊なのです。

・マックスが塩の海に向かう皆を止めて提案をするシーン、ばあちゃんの一人が「ドカンか!」って言ったときのマックスの「それだ」みたいな顔、劇中唯一おどけたような表情が超カワイイ。「戻るの?」という問いにもあっけらかんと「ンフ」って言うのも和むぞ。「ニュークスもいるし」といきなり話を振られたニュークスが「希望はある」と若干適当に思える返しをするのも笑えます。砦が故郷だ、と言うマックスの言葉だけでどんどん意見が出てきてみるみる希望が膨らんでいくあのシーンは超好き。

・スーパーチャージャーへのガソリンぶっかけバトルは、ニュークスの方はまあ他に吸い出す器具がないからですが、スリットは手で入れてたのに対抗心燃やして口で噴くってのがバカでいいです。スリットは劇中もっともヒャッハーを体現した男ですね。ボンネットにひっくり返って「あははー」みたいな顔してて自由だな。

・ギター男ことドゥーフウォリアーはとんでもない過去の持ち主ですが(wiki参照)基本オンステージなのでいつでもノリノリ。起きたらすぐギター弾かなきゃいけないので大変です。でも終盤マックスに奪われたギターが手元に戻ったあとの「ここからはおれのステージだ!」って感じで弾きまくるのがロックスターで最高。あと前半フュリオサの伝達係を務めるウォーボーイ、フュリオサの少ない言葉に「戦うか」「囮なのか」っていいように拡大解釈してくれるので便利です。後続に「行けー行け、行けー行け」って促すときのリズミカルさも魅力。彼は矢に射抜かれながらも最後に飛んでいったモーゾフが死んだあと、周りが「よく死んだ」って言ってるなかただ一人V8のポーズで祈ってました。たぶんイイ奴。

・ジョーのところに戻ろうとして止められた、嫁の一人フラジール。彼女が終盤リクタスに「連れてって!」と言うシーンには「この期に及んで?」とやきもきするんだけど、これがフュリオサをギガホースに引き上げる手助けをするための演技で、甘ちゃんの彼女も成長してるんだと分かって感動です。

・マックスが見る幻で子供が気を放つかのような仕草に思わず顔を庇うというのがありますが、これのおかげで頭を矢で打たれたときとっさに庇うことになり助かります。マックスの幻影に出てくる人々については前日譚を描くコミックで明かされるようですが、それがなくても色々想像が膨らみます。前回も述べましたがフュリオサのイモータン・ジョーへの最後のセリフ「私を覚えてる?」もまた想像が働く凄いセリフです。

・マックスとイモータンは主人公とラスボスでありながら、一度も直接のやり取りがありません。この物語がフュリオサとイモータンを中心とした話であることを差し引いてもちょっと不自然。ただイモータンの支配を終わらせる切っ掛けを作ったのはマックスの「砦に戻る」という提案であることは確かで、そう考えるとイモータンはどこの馬の骨とも知れぬ輸血袋に敗北したことになります。名も無き者の声が独裁者を倒す、つまり革命の物語ですね。マックスが最後まで名乗らなかったのにはそういう意図もあるのかもしれません。

・リクタスは牛乳飲んで「ん!」っていう顔とか、嫁たちが乗ってる車に火炎放射しようとして怒られたりとか、もう見えなくなってる相手にマシンガン撃ちまくったりとか、アホの子っぷりがカワイイ。最後にニュークスの「俺を見ろ」に対抗して「リクタース!」って自分の名前を叫ぶのもアレですが、そのとき引っこ抜いたエンジンから上がる炎で股間を炙られまくってるんですよ。最後まで期待を裏切りません。

・トム・ハーディの唸り声は実に魅力的。「ン」「ヴ」「ンム」とかちょっと文字化しにくいですが、セリフが少ない分目線や微妙な表情、僅かな唸り声で感情を表してくれます。終盤の「My name is MAX. ……um, ……um, That's my name.」と名乗るシーンは特に素晴らしい。それまでは「輸血袋」「バカヤロー」「ホモのカス野郎」などと散々な呼び名を頂戴したことを考えると余計感慨深いものが……ろくな呼び名がないな……

・ラストに砦のエレベーターで昇って行くフュリオサ一行。序盤のエレベーターでは一緒に乗ろうとする人々が落とされてましたが、ラストは逆に多くの人々が助け合いながら乗って一緒に昇っていきます。歯並びの汚い男が満面の笑みで上を見上げるのが印象的。そしていつの間にか一行から離れて人混みに消えていくマックス。目が合ったフュリオサと無言で頷き合うシーンにいくつもの言葉が交わされているのが感じられます。砦を押さえたフュリオサにはこの先も様々な困難が待っているでしょうが、それはまた別の物語として新たな歴史を刻んでいくのです。

 ※

ちょっと書くだけのつもりがエライ長くなってしまいました。まだまだ語れそうですがいい加減にしておきます。とにかく言いたいのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』最高!ということですよ。「死んで蘇る」の原語のセリフに沿って言えば、

I Live !(マッドマックス観てる)
I Die ! (興奮と感動で死んでる)
I Live Again !(また観たくなる)

の繰り返しです。幸福な映画体験でした。ああ、また観たくなってきた……


(追記)
なんと第3弾までアップしちゃいました。よろしければ続けてどうぞ!
最高な点をひたすら上げていこう。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想(その3)。

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