2015
06.16

アイドルは世界を救えるか。『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』感想。

The_Hunger_Games_Mockingjay1
The Hunger Games: Mockingjay - Part 1 / 2014年 アメリカ / フランシス・ローレンス

あらすじ
モッキンジェイ=マネシカケス。



最後の一人になるまで殺し合う「ハンガー・ゲーム」の記念大会からカットニスを救出したのは、滅亡したはずの第13地区を拠点とする反乱軍だった。スノー大統領の独裁を打ち砕くため革命のシンボルとなるカットニスだが、パートナーのピータを人質に取られる……。ジェニファー・ローレンス主演によるYA小説の映画化『ハンガー・ゲーム』シリーズ完結編、その2部作の前編。

前作の感想はこちら。
恐怖を操る装置の綻び。『ハンガー・ゲーム2』感想。


もはやハンガー・ゲーム自体すら行われず、物語はキャピタル対レジスタンスの戦争ものへと移行していきます。ゲームそのものは色々引っ掛かる点も多かったし、そもそもアンフェアすぎて成り立たないので別になくてもいいのですが、相変わらずキャピタルとそれに付随する地区の全体的なスケール感が分からないし、戦いとは言っても直接対決もなく情報戦がメインなので、こじんまりした印象は今まで通り。で、何が残るかというとやはりカットニスなんですね。このシリーズは彼女の行く末を見守ることこそがメインです。

前作でゲームから救い出されたカットニスですが、レジスタンスの本拠地である13地区に移っても実はキャピタルに利用されていた頃と扱いがさほど変わってません。だから余計にカットニスの焦りや苛立ち、失望、本当に大事なものというのが浮き彫りになります。そしてそれを表現するジェニファー・ローレンスの存在感はやはり最高。ハスキーボイスでの歌も聴かせてくれるし、弓を撃つシーンではなんか『アベンジャーズ』のホークアイみたいになってました。今作では13地区の首相役でジュリアン・ムーアも出てきて、フィリップ・シーモア・ホフマンと合わせてアカデミー俳優が3人も出てるというのはなかなか凄い。ただホフマンはもう少し目立たせてほしかった……

冒頭に前作までのダイジェストを5分くらいやるので、多少内容を忘れてても大丈夫。まあシリーズ観てきた人しか観ないとは思いますが、いきなり今作から入るのは無謀です。最終章をわざわざ2部作にした前編のため若干の間延びもあるし途中で終わってしまう感も強いですが、次回の後編でどう決着を付けるのか、最後までカットニスの運命を見届けるしかないですね。

↓以下、ネタバレ含む。








キャピタルのプロパガンダに利用されていたカットニスは今度は第13地区に革命の象徴として使われます。ちょっと面白いのはカットニスを先頭に戦おう、となるわけではなく、彼女を英雄として「プロデュース」するのがメインということ。カットニスが身に付けているモッキンジェイ(マネシカケス)のアクセサリーを元にシンボルマークを作る。映画チームを組んでロケ班し、彼女主演のプロモーション映像を作る。どうすれば効果的な画が撮れるか検討し、カメラに向かって語りかけ、それをがんがんオンエアする。大勢の観客の待つステージに登場し喝采を浴びる。ついには「首吊りの木の歌」でシングルデビュー。もうね、アイドルと同じなんですね。微妙に恋愛禁止状態だし(と言うか恋愛してる場合じゃない)、病院への慰問もする。ホフマン演じるヘブンズビーはそのプロデューサーであり、要するに秋元康です。

戦意高揚のシンボル扱いをアイドルと一緒にするのは乱暴ですが、反政府心を煽るための象徴化とそれを拡散するためのメディア露出を見てると、結局カットニスは革命のシンボルという宣材としてしか扱われてないのが分かります。弓矢の腕前に加え判断力、行動力に優れたカットニスは本来かなりの戦闘力なのに、アイドル活動(違うけど)以外ではわりと放置されて作戦立案に加わるわけでもない。そもそもハンガー・ゲームも戦いとドラマの演出の上に成り立っていたことを考えると、メディアにいいように扱われる若者の悲劇、という図式にも見えてきます。キャピタルがカットニスのペアであるピータに戦争停止を訴えさせるエセドキュメンタリーで対抗してくるのもそれっぽいです。

そんな思惑にはめられてきただけに、カットニスのオフの日(違うけど)の姿に心情が際立ちます。彼女にとっての優先度は世界がどうこう以前に囚われたピータの救出だし、自らの危険より妹の安否を優先する。「The Hanging Tree」は昔男が吊るされた木の下で会う男女の歌のようですが、自由になるためには首を吊るしかないと死を仄めかす内容にも聞こえます。自分もピータも囚われの身であることに変わりはない、という無意識の愛の歌を歌っているようで、そりゃ彼氏であるゲイルもやきもきしますね。そしてラストでは洗脳されて殺意むき出しのピータに愕然とするカットニス。世界の危機より変わり果てたピータへのショックで終わる、というのがカットニスの大事なものを明確に打ち出しています。

肝心なところがあっさりしてるのでいまひとつ盛り上がりには欠けます。情報戦はハッキングする、阻止されるの繰り返しだし、レジスタンスの攻撃は散発的なゲリラ戦、キャピタルの空爆には息を潜めてひたすら耐えるだけと絵面も地味だし、他の地区がどうなってるのかもよく分からない。仲間たちもあっけなく助け出しますが、あれが本当にカットニス暗殺のためのピータへの仕込みだけだとするなら、ちょっと弱い。あの大統領なら人間爆弾とかにしてても不思議じゃないですけどね。唯一アガるのが弓で戦闘機を撃ち落とすというシーンくらいで、直接激突するシーンが皆無なのもカタルシス不足。うーん、まあこの辺りは後編に持ち越すための嵐の前の静けさである、と思うことにしましょう。弓矢シーンももっと欲しいなあ。さて、アイドルは最後に勝利の女神となれるのか?

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