2015
06.14

通過儀礼を受けるのは。『イニシエーション・ラブ』感想。

initiation_love
2015年 日本 / 監督:堤幸彦

あらすじ
たっくん♪



1980年代後半の静岡、非モテの大学生・鈴木は合コンで知り合った女性マユと徐々に親しくなっていくが……ラストが衝撃だった乾くるみの原作小説を、前田敦子、松田翔太主演、堤幸彦監督で実写化。原作は結構前に読んでいたため、内容以前にあれをどうやって映像化するのかという方が興味津々でした。

で、どうだったかと言うと……なるほど。なるほどねー!どうするのかと思ったら、なるほどねー!!それでこういう作りなんですね。これは「あり」だと思います。色々とニヤニヤしながら観てました。

映像化されると原作にはない味わいがあって、特に大挙フィーチャーされる80年代ポップス。森川由加里の「SHOW ME」に始まり、海辺で1986オメガトライブ「君は1000%」とか、中村雅俊、寺尾聰、松崎しげる、C-C-Bなんて本人映像で「Lucky Chanceをもう一度」と大変懐かしいです。ただ『横道世之介』なんかと比べると狙いすぎ感があるし、フェードアウトのタイミングが凄い雑なのが引っ掛かりました。

そんなことより前田敦子ですよ。あっけらかんとしたある種純粋な笑みで魅了するアイドル力と、同時にそういう形で引き込むことが出来る独特の存在感で、『もらとりあむタマ子』とはまた別の方向性で「前田敦子だから出来た役」だと言えるでしょう。いやー僕もね、実名だと「たっくん」なんですよ。あっちゃんがこっちに向かって「たっくん♪」って呼び掛けるたびに「うひょい!」って返事しそうになって大変でしたね。たまらんですね。あっちゃん可愛い。冒頭に「この映画には秘密があるけど言わないでね♪」って手書きメッセージが出るんですが、あれもあっちゃんの字かな?木村文乃も良かったんですが、最後に全部あっちゃんが持っていってしまいました。

↓以下、ネタバレ含む。








Side-Aがとにかく笑えるわけですよ。完全非モテの鈴木君にはマユが花を背負って見えたり、電話する鈴木のメガネに電灯の紐がカッチカチ当たってたり、舞い上がった鈴木が速攻服買ったり髪切ったり。徐々にこの鈴木たっくんを応援したい気持ちにもなってくるんですね(あっちゃんとのキスシーンでは殺意が湧きましたが)。で、この前半のコメディっぽさと一生懸命さが、後半であるSide-Bに登場するたっくんがいきなり松田翔太になってるのを「そんなバカな」と笑わせながらも乗せてしまうんですね。ここが上手い。

原作では大学生の恋人の風景がたらたら書き連ねられているだけで、そのうち何か事件が起きるのかと思ってたらもう最終ページ。ところが最後の2行で明かされる真実に世界が180度ひっくり返る衝撃を受けます。「あるカップルのさほど珍しくもない恋愛ドラマ」部分は原作に結構忠実。改めて観ると舞台が30年前で携帯もネットもない時代だからこそ出来る話ではあるんですよね。本当に通過儀礼を受けるのは誰か。実に計算され尽くした話だったと思います。

それだけに、残念な点は非常に残念です。映画化における仕掛け自体は良いのにどこがダメかと言えば理由は明白に二つ、一つは前半でマユが「タック」と言ってしまうこと。原作に同様のセリフがあったかは覚えてないのですが、映像だといかにも取り繕っているのが分かるため、あれで「たっくん」という呼び名に裏があることが分かってしまいます。そしてもう一つが最後の答え合わせ、これが酷い。度が過ぎる親切さには「いや、分かるよそこまでしなくても」とかなりイライラしました。「あなたは必ず2回観る」なんてコピーが付いてますが、最後に全部見せてくれるからもう一度観る必要がないんですよ。せめてもっとアッサリやるとか早回しにするとかであれば、後から日付を照らし合わせて観るという観かたもできたでしょうに。ターゲットにしてる層、これはエンドロールで「80s図鑑」とかやってるくらいだから本も映画もあまり接しない若者でしょうが、彼らがそこまでやらないと分からないと思われてるってことですかね?あまり甘やかすと観客も育たないよ?

原作が切れ味あるミステリーなのに、野暮な演出をされたのは不愉快。でもラストの前田敦子の笑顔、あれで全て許してしまいましたよ。ああ……またあっちゃんに「たっくん」って呼ばれたい……あッ、それで「必ず2回観る」なのか!(違う)

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