2015
06.13

足掻いて手にする極上ハーモニー。『ピッチ・パーフェクト』感想。

pitch_perfect
Pitch Perfect / 2012年 アメリカ / 監督:ジェイソン・ムーア

あらすじ
溜まった思いを吐き出そう!



主人公のベッカは音楽業界を目指すも、大学教師である親の指示で不本意ながら大学に入学。一人楽曲のミックスをしたり学内放送部に入ったりするなか、ひょんなことから弱小ガールズアカペラ部に参加することに。個性豊かでまとまりのないメンバーたちと全米大会に行けるのか。アカペラを題材にした学園音楽コメディ。

これはもう万人が楽しいという類いの作品。アカペラと言っても歌われる楽曲は古いのから新しいのまで多岐に渡り、ジャンルもポップスからヒップホップまでと幅広いし、最近のアカペラはボイス・パーカッションや意外と激しいダンスまで取り込んでるんですね。チームによって異なる個性的な衣装やノリノリのパフォーマンスなど、とにかくライブシーンが楽しくてアガります。

ベッカが所属する「バーデン・ベラーズ」というアカペラ部が弱小に転落した経緯が最高なんですが、それはともかく部員集めに奔走する先輩二人も新たに入ってくるメンバーたちもなかなか個性的。極端なキャラ立ちも上手くいってるので親しみやすいです。この女性チームといがみ合ってるのが「トレブルメーカーズ」という野郎チーム。男女間で争うってのが小学生のようですが、ちゃっかり男女の関係になっちゃうのもいるのが大学生っぽい。アメリカの大学らしく自由で陽気でバカっぽい雰囲気が溢れてます。

個人的には主役カップルのベッカとジェシーにいまいち惹かれないんですが(実はアナ・ケンドリックがちょっと苦手)、その分脇がイイ味出してます。『ナイト・ミュージアム エジプト王の秘密』でも目立っていたファット・エイミーことレベル・ウィルソンは期待通りの好演。なんか時々ジョナ・ヒルに見えるのが親しみやすいです(失礼)。リーダーであろうとして空回りしちゃうオーブリーも良かった。小さい声のアジア系の人がボソッて呟く内容が超怖くて面白いんですが、あの声量でよくオーディション受かったな。あとトレブルのリーダーのアイツ!超ムカつく!ちなみにチョイ役で『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』のマザー・ファッカーが出てて「あ、久し振りー」ってなりました。

冒頭のユニバーサルロゴのところから聞かせてくれるし、単語を繋げて即興の歌対決なども面白い。あとエンドロールで出る楽曲の数が尋常じゃないんですよ。それだけの歌がハーモニー豊かに歌われるとやはり楽しいです。スクール・カーストに立ち向かいながらも、ライトで愉快。ゴジラもブッ飛ぶ衝撃のゲロシーンには度肝を抜かれるし、結構なおっぱい映画でもありますよ!

↓以下、ネタバレ含む。








前向きな太っちょやレズビアンのギャンブル好きやセックス狂のビッチ、あるいは仲間内では笑顔だけどベッカには凄い冷たいルームメイトの韓国女子など、個性の付け方に体型やセクシャリティや人種を使うのはちょっと安易ではあるなあとは思いますが、そこはちゃんと周囲が認めたり受け入れたり改善したりされるのが良いです。練習シーンがあまりないので声小さい人が実際どれだけ歌えるかが分からないんだけど、最後にちょっとソロで歌ってたのでひと安心。ゲロの海で手足をバタつかせる姿がダ・ヴィンチの『ウィトルーウィウスによる人体比例図』みたいになってて笑います。クロエがポリープ手術で低音が出るようになったというのはかなり無理がありますが、悲劇を喜劇に変え、さらに強力な武器にするというコメディ展開としてはありでしょう。

ただ、アナ・ケンドリックがカップをポコポコやりながら歌う「The Cup Song」、面白いんだけど「なぜ?あの場で?いきなり?」というのがどうしても解せません。スター・ウォーズ好きのジェシーのルームメイトによるSWネタが最初しか出てこないのも肩透かし。マジック好きとどちらかに絞った方がよかった。大会の解説者コンビは毒舌すぎな気もするけど、アメリカではあれが普通なんですかね?ちょっと『メジャーリーグ』を思い出しました。あとあれですよ、トレブルのリーダーのクズ野郎が何の罰もなく終わるってのはどうなのよ!アイツのドヤ顔は本当にムカつくので、続編でケチョンケチョンにしてほしいところです。

ベッカはなかなか心を開かず物事にクールに対処しようとします。ええカッコしいなんですね。一人で『ブレックファスト・クラブ』を観てるとき手で涙を拭こうとしてメイクを気にしてやめる姿などにもそれが滲み出てます。でもやがて自分から謝って仲間を理解し受け入れることで、自らのミックスの才能を駆使しチームを甦らせます。一方部長のオーブリーも過去の慣例にこだわりすぎて自分の心をなかなか開かないんですね。結果、新たなことを試さない、支配しようとする、人の意見を聞かないなど、リーダーとしてやってはいけないことばかりやってしまう。でも過去のトラウマでありストレスの象徴でもあるゲロを思い切り吐くことで自分を解放します(でも吐きすぎ)。噛み合わなかった二人がプライドを捨てて手を取り合ったときに生まれる奇跡、これが爽やかで良いです。

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/935-2f7996b4
トラックバック
back-to-top