2015
05.20

罪を暴く角、角が与える罰。『ホーンズ 容疑者と告白の角』感想。

horns
Horns / 2013年 アメリカ / 監督:アレクサンドル・アジャ

あらすじ
私の5番アイアン!



恋人を失い、殺しの容疑をかけられた青年イグがある朝目覚めると、人に真実を打ち明けさせる「告白の力」をもった不思議な角が生えていた。スティーブン・キングの息子ジョー・ヒルの原作小説をアレクサンドル・アジャ監督、ダニエル・ラドクリフ主演で映画化したファンタジー・サスペンス。

突然謎の角が生えるという非現実な設定ながら、それを現実への事件に取り込む際の混ぜ方が上手い。真実を語らせる角があったらすぐ犯人に繋がりそうなものだけど、そこも上手く仕掛けが施してあります。言ってしまえば「バカミス」の類いではありますが、絶妙な人物配置と、脇道込みで予想を越える展開に引き付けられてしまいます。かつ本音を引き出すだけでは分からない真相にも泣けます。

何よりも主演を張るダニエル・ラドクリフの、憔悴し変貌していく凄みはかなりのもの。ラドクリフと言えば言わずと知れたハリー・ポッターですが、蛇が出てくるシーンでそれを操るハリポタに多少被るものの、角を生やし追い詰められ息も荒く真犯人探しに奔走する姿は今までになくワイルド。ワイルドついでに言うと、胸元から大幅にはみ出た胸毛が鋼鉄の男ヘンリー・カヴィルにも引けを取らないほどの成長著しい胸毛力を解放しており、今年の胸毛大賞キタ!って感じですよ!そこは別にいいですか?愛情が豊かにも裏がありそうにも見える恋人メリン役のジュノー・テンプルも配役として合ってるし(光を通して薄いワンピから透ける体のラインも素晴らしい)、久々に観たデヴィッド・モースもシブいです。

冒頭の天国から地獄に落とされるというショット、徐々に状況を飲み込ませる導入部、執拗なバッドトリップ描写など魅せる映像も多く、炎と煙をバックに現れるラドクリフなどはテンション上がります。本心を言うことの恐ろしさと同時に、本心の吐露により新たな関係が始まったりもするのが楽しい。結構笑っちゃう感じもありつつ、ケレン味にやられます。面白い!

↓以下、ネタバレ含む。








本音や真実を語っても真相に繋がるとは限らず、人の本心にはちょっとした憎悪や普段口には出せない性衝動、有名になりたい野心や自己顕示欲と言った人間の欲望が轟々と渦巻いているのだ、というのをダイレクトに描くのが面白いです。真相の前に人の七つの大罪が暴かれちゃう。でもマイナス面だけでなく、ミートとその同僚のようにむしろ開ける関係もあるってことで、美しいですね(画ヅラは美しくはないが)。角が生えててもあまり周りが気にならないというのも、悪魔の角だからこその神秘性って感じでイイです。

話の展開が意外と読めないし、読めても想像を超えてくるのがたまりません。ふいに過去編に遡るというトリッキーな展開は幼なじみたちとの関係を描くと同時に「まさかあいつが」というミスリードにもなっています。ある人物が「殺すつもりはなかった」と明かしてあっけなく犯人が判明したと思いきや、善人の隙間から突如として溢れ出る狂気、しかもそれが実にシームレスに起こるのが凄まじくて驚きです。メリンが二面性を持っていたということに多少ガッカリさせておいてからの愛に溢れた真実にはメロドラマっぽいながらも胸を撫で下ろしてしまうし。あとまさかミートがミートになっちゃうとは思わなかった。あのクズが警官になってたってのも予想外ですが。もう一人の女子グレンナも田舎の跳ねっ返りという感じで良かったですね。アバズレに見られることを嘆きながらドーナツ食いまくるのが笑えるけど何か怖い。

ラドクリフ演じるイグ(劇中では「イギー」と呼ばれててジョジョラーとしては反応してしまう)になぜ角が生えて特殊能力を得るのかは語られませんが、敬虔なクリスチャンだった彼女がなぜ死ななければならなかったのか、という彼の魂の叫び、神への怒りが、神とは逆の「悪魔の力」という対抗的な手段で身に付いた、という感じでしょうか。神を罵倒し、マリア像へ放尿することでイグは悪魔に魂を売ったわけです。徐々に伸びてくる角が彼の悪魔化を経過表示しているかのように、能力も真実を言わせるだけでなく、蛇を使ったり人を操ったりできるようになる。恋人メリンを殺された怒り、犯人呼ばわりされた屈辱、そしてメリンに裏切られたドス黒い嫉妬心。喪失感と復讐心が、徐々にイグの人間性を失わせていくんですね。炎上するバーから出てくるイグなんて魔界の王の貫禄十分。マスコミ共を互いに争わせるところは小気味いいほどです。角を折ろうとしたら引っ掛けた鉄骨を曲げてしまうところに至っては「バッファローマンか!」ってちょっと笑います(そしてバッファローマンは悪魔超人という心地よい符号)。

しかしイグはメリンの本当の思いを知ることで彼女への恨みが消え去り、自分への思いに涙し、愛する者を失った悲しみだけがただ残ります。亡き恋人のため、というよりは自分の無実を晴らすためという雰囲気が若干強かったイグが、そこからは殺された恋人のための純粋な復讐者となるんですね。力を抑えていた十字架を引きちぎり、さて悪魔転生だ!と思いきや、大きな天使の羽が生えて宙に舞い、それが瞬時に地獄の業火に焼かれて悪魔となる、これにはおったまげました。この「ルシファーが堕天してサタンとなる」という姿をなぞることで、人としての心を捨ててでも復讐を遂げるという意思が見られます。だからもう変身後は完全体。サイコ野郎は「俺たちは(二人とも)悪魔だ」と言いますが、元からドス黒い悪だった男と、覚悟を決めて魔道に堕ちた男は見た目からしてもう同じ悪魔じゃないんですね。完全体なのに殺られそうになるというこけおどし感のため若干カタルシスは少な目ですが、見た目が悪魔なよりも心根が悪魔なヤツの方が厄介だとも言えるでしょう。

原作ではもっと過去の描写が多く、より人物関係や犯人の人間性が描かれてるそうで、そのせいか確かにテンポが良すぎる感はあるんですけど、結構濃い内容をあれだけ詰め込みながらさほど煩雑さを感じさせないのはアジャ監督の手腕でしょう。酷い目に合わされた兄貴がそれでも弟を守ろうとし、自分の手が焼けても抱き起こすシーンには、罰するだけではなく悔い改める機会を与えるという、悪魔側ではなく神側の視点さえあるようにも思えるのです。

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