2015
05.17

それでも正義を守れるか。『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』感想。

TNG_patrabor_movie
2015年 日本 / 監督:押井守

あらすじ
デッキアップ!



漫画やアニメなど多くのメディアで作品が作られた『機動警察パトレイバー』、その約12年ぶりの映像化として立ち上がった実写化プロジェクト『THE NEXT GENERATION パトレイバー』の劇場版。東京を襲う見えない戦闘ヘリの脅威に三代目特車二課の面々が対峙します。

全12話+1話を7回に分けて上映、その後長編を公開するという思いきった企画の通称『TNG パトレイバー』シリーズ。僕はその最初を観逃してしまったため、それまでの実写シリーズ観ずにいきなりこの劇場版を観るという暴挙に出ましたよ。そのためどこから今シリーズの独自性なのかは分からないですが、『機動警察パトレイバー2 the Movie』 (以下、『パト2』)の続編という位置付けなので内容的にはそれほど問題はなかったです。何と言っても実写ということで、実物大のイングラムを作っちゃった、というのが凄い。

テロの脅威に対する警察というアクション、裏で繰り広げる情報戦などのサスペンスは結構面白い。専門用語もバシバシ入れる会話劇で興味を持続させるのはさすが押井守という感じ。ただ、特車二課の受け継いできたものという曖昧な要素に賭ける高島礼子のスタンドプレイと、筧利夫の働きの印象が強すぎる嫌いはあります。

『パト2』の続編と言えば確かに続編なんだけど、ここまでリフレインな構造だとは思わなかったのでむしろ驚き。せっかくの実写なのに、という思いも拭いがたい。という感じで肩透かし感は残るけど、それでも楽しめました。

↓以下、ネタバレ含む。








構造上どうしても触れざるを得ない『パト2』との関係性、及び実写版で描こうとしたもの、これは押井監督がインタビューで全部語ってます。曰く、これは『パト2』が描いた16年前と何が変わり何が変わらないのか、その差分を描いたものであると。ストーリーも変える必要がない、とまで言っています。確かにストーリーは『パト2』と瓜二つだし、船に乗って橋の下を走るシーンとか、警視庁で後藤田が問い詰められるシーンなど、ショットまで同じだったりする。ミサイルで橋が爆破されるところや警察上層部の使えなさ、終盤まで全く活躍しないイングラムまで同じ。もちろん相違点も多々ありますが、そもそも特車二課の三代目たちが初代とキャラが被ってますね。

それでもバラレルワールドではなく明確に続編だと言うのは、その差分を出すためなんですね。『パト2』での第二小隊長・後藤の名前も会話に出てくるし、第一小隊長・しのぶさんに至ってはチラ見せまである。彼らは警視庁を追われながらも東京で戦争を演出した者たちを捕らえる、という自らの正義を遂行しますが、後継者たる三代目たちも同様の動きをし、高島礼子言うところの「受け継いだもの」を見せる。同じように思えるなかでそれでも違うのが、戦争を仕掛ける側の姿。「起こるとしたら政治的な要求ではなく一人が勝手に戦争を始めること」と監督が言ってますが、そういうワケのわからなさが現代の日本だと言ってるのでしょう。その象徴が狂気じみたグレイゴーストのパイロット、灰原澪であり、結局その時代で起こりうる脅威を描くという点では押井守はブレてません。イングラムが最後にちょっとしか登場しないのも同じで、あくまで道具と言うか武器の一つという扱い。これはもう面白いつまらないを超えて、東京で起こり得る戦争を描いた明確な作家性の顕現と見るべきなんでしょう。

とは言え、焦らしに焦らし、満を持してのイングラム登場にはテンション上げざるを得ませんよ。デッキアップにはゾクゾクするし、出番は少ないながら結構動くし、ポーズきめたショットもあるし、グレイゴーストとの対決では操作グローブと連動したイングラムの腕の動きを重ねて見せたりもして燃えます。せっかくの実写だからもっとイングラムの活躍が見たかったとは思うけど、それはシリーズの他の作品を観ろってことなのかな?その分グレイゴーストがビルをぐるりと回りながらの射撃とか佑馬やカーシャによるアクションなどもあるし、権力や思惑に振り回されながらそれでも正義を守ろうとする特車二課の活躍もあって、娯楽作としての一定の基準は超えています。続編も作れそうな幕引きだったし、四代目が活躍する日が来るかもですね。

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