2015
05.01

俺の右手はアイツと共に。『寄生獣 完結編』感想。

kiseijyu2
2015年 日本 / 監督:山崎貴

あらすじ
逃げろ、シンイチ!



人間に寄生して人間を喰らう寄生生物はどんどんその勢力を拡げ、遂には政界にまで進出。これを阻止しようとする泉新一とミギーの前に、最強の寄生生物が立ちはだかる。コミック『寄生獣』実写化、二部作の後編。

前編の感想はこちら。
俺の右手が火花を散らす!『寄生獣』感想。


原作からの改変や省略は、まああって当然なのでそこを何だかんだ言うつもりはありません。むしろどのエピソードを取り込み、どのように組み替えるかは結構巧みにやってると思うし、原作のテーマも損ねてないと思います。ちょっと喋りすぎな台詞も煽りすぎな音楽も、ある程度の分かりやすさを優先したと考えればまあいいでしょう。残虐シーンも前編に引き続きギリギリまで残そうとした努力が伺えます。つまり『寄生獣』という作品の映画化としてはうまくいったと思うんですね。

ああ……それだけに、演出と編集の詰めの甘さが非常に残念。前編は凄く良かったんだけど、後編はコミック原作云々以前に「映画」としての粗が色々と目に付いてしまいました。

それでも何度かウルッとしたのは新一役・染谷将太と里美役・橋本愛の演技の良さのおかげ。前編で唐突に現れて「誰?」って感じだった浅野忠信も今回は凄まじいラスボス感を出してくれるし、笑いながら殺戮を行うピエール瀧の不気味さも最高。深津絵里も最も難しい役どころである田宮涼子を見事に魅せてくれます。

基本的には楽しめたのでもう少し丁寧に仕上げてくれたら……ただ、良いところも多々あるので、山崎貴監督には今後もディスりや映倫に負けじとこの路線を極めて欲しいところです。

↓以下、ネタバレ含む。








前回の感想で「広川役の北村一輝もパックリいくの楽しみ」とか書いたんですが、それはないよね。うっかりしてました。

とにかくシーンの切り替えが悪い。そこでシーン変わるの?ってのが多すぎるんですよ。相棒の刑事が「俺たちの山じゃないすよ」と言ったあと國村隼演じる平間刑事からのリアクションが返らないうちに次のシーン。市長の広川がしゃべって秘書が返した瞬間次のシーン。もう一呼吸置いてくれれば気にならないのに。結果、テンポは悪くないのにリズムがおかしい。ただでさえ多くのエピソードを組み込んでいるのだからブツ切り感は極力減らすべきだと思うんですけどね。田宮涼子の最後と市役所強襲を同時に見せるのはいいアイデアだと思うんだけど、これも切り替えのタイミングが微妙。

また人物の物理的な距離感がそのシーンの内容と合ってなかったりします。大森南朋演じる記者の倉守はミギーに殺されかけたわりには部屋でミギーと話すときの距離がやたら近いし、田宮涼子が新一に「もう少し待て」というシーンではわざわざ新一の方に戻って横を少し通りすぎて背中越しに話す、というのもよく分からない。キメの画を狙いすぎ感があるんですよ。あと、田宮涼子の死後に新一たちがあっという間に市役所に着いちゃうとか、新一が連絡してわりとすぐ里美がやって来るとか、里美がいつの間にか処理場の二階にいるとか、時間の経過が不自然なところも多いです。最低限必要なカットも色々不足してて、例えば新井浩文演じる殺人鬼・浦上はいつの間に警察から逃げ出したのか、屋上で新一にブッ飛ばされた後どうしたのか。直前に一人殺してる奴がそこら辺にいるのに、寝転んで子犬を埋めた話してる場合じゃない、と思っちゃう。色々気になる点が多すぎるんですね。

とは言え先に述べたように『寄生獣』の実写化としてはそこまで悪くないんですよ。アクションは前編がインパクトあった分ちょっと物足りなさは感じるものの、後藤とのバトルはボス戦らしいダイナミックさ。出来れば三木のヤクザ襲撃シーンはアクションの見せ場にもなりそうだしピエール瀧が最高だったのでもっとちゃんと観たかったですが、ミギーが活躍する場面じゃないのでしょうがないかな。話を畳む関係上、展開に若干の駆け足感はありますが、田宮涼子と赤ん坊の関係が記者と娘の関係と対になっていたり(娘の口の悪さはちょっとイラッとしたけど)、ミギーと別れたあとに婆さんではなく里美によって癒されるのも繋ぎ方としてうまい。橋本愛のラブシーンも大変よろしかったです。ミギーが後藤にトドメを刺されるときの「ギャッ!」という叫び方は悲痛さが凄かった。田宮涼子は寄生生物としては若干感情を出しすぎかな?とも思いますが、あれは絶妙と言うべきかもですね。その点では広川の秘書の男は気持ち悪くて良かったです。

クライマックス、後藤を蝕む「毒」が放射性物質になったのがうるさく言われそうですが、今の時代の毒素としては象徴的でしょうね。画的に『ターミネーター2』を彷彿とさせますが、エグい肉の塊を抱いてる新一というのはなかなか斬新。ここで最も良かったのは、新一が必死で生き延びようとする後藤を一度は見逃して去ろうとしたとき、自分を見つめる里美を見て、人間の身勝手さを謝りながら後藤を火の海に投げ込むシーン。人間というものの業の深さ、それでも生きようという悲壮な決意が、決着の付け方として上手く結びついていると思います。そして新一とミギーの別れで、元に戻った手が示す喪失感の大きさ。人類との共存という希望を示すミギーは、希望であるからこそ新一から去って行きますが、それでも確かにそこに存在している。種を超えた思いに泣けます。

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