2015
04.21

忘れゆく過去にすがって。『カイト KITE』感想。

kite
Kite / 2014年 アメリカ / 監督:ラルフ・ジマン

あらすじ
頑張れプリティちゃん。



秩序が崩壊した近未来を舞台に、両親を殺されて暗殺者として育った少女サワの戦いを描く。1998年に発表された日本のアダルトアニメを実写化したバイオレンス・アクション。

原作は梅津泰臣監督の日本の18禁アニメ『A KITE』。これのエロ部分を省いたインターナショナル版が海外で好評価を受けてカルトな人気作となっており、ここに来て実写化です。実写化の話は前々からあったようですが、原作と大分かけ離れた方向性だったり(主人公がミシェル・ロドリゲスという話もあったらしい)、当初の監督が亡くなったりと紆余曲折があったようですね。結果、わりと原作を念頭に置いた出来になっています。

経済が崩壊し無法地帯となった街が舞台、と冒頭に示し、その経緯や社会の変化みたいなのは特に描かれません。あくまでこの世界の中に生きる少女サワの復讐劇が主点であるという、これはゴチャゴチャ付け足すよりむしろ潔いですね。殺し屋少女がクズ男たちを銃やナイフや格闘で次々かっさばいて行く姿が痛快。トイレでの便器ブッ壊しながらのアクションとか良いです。そんなサワは精神安定のための薬「アンプ」を打っていますが、その副作用により記憶が徐々に失われていくという焦りもあったり。

サワ役のインディア・アイズリーがとってもプリティちゃん(劇中でも敵にプリティちゃんと呼ばれたりする)。コスプレっぽいピンクや赤のウィッグが映えてて、特にシルバーのツインテール、良いです。あまり強そうに見えないからハラハラするのが逆にスリル。愛くるしいのにクールなのでヴァンパイア役とか似合いそう。サワの保護者であるアカイ役はサミュエル・L・ジャクソン、安定のサミュエルです。

ゴア描写をブチ込んだバイオレンス・シーンも結構頑張ってます。出来ればもっとアクションが見たかったなーとか、もう少しエロ(中略)とかありますが、ちょっとヒャッハーな世紀末世界での「戦う少女もの」として面白かったですよ。

↓以下、ネタバレ含む。








原作は殺し屋の少女とそれを操る男の愛憎渦巻く関係に、もう一人の殺し屋の青年が淡い希望として絡み、度肝を抜くアクションや印象深いガジェットなどを入れて60分弱ながら技巧と演出に長けた見事な出来でした。この実写版は冒頭のエレベーターのシーンなどは原作の再現度が非常に高かったりして、原作への敬意も感じられます。

ただ、敢えて原作との比較で語るなら差異はそれなりにあります。もっと色彩も豊かだったオリジナルに比べ、ずっと薄暗くスラムな街並みが続くために画的なメリハリには欠けます。地下鉄や猫和室などのような、美術で「おっ」と思わせる要素がないんですね。また、ド迫力だった二段構えの墜落シーン、あれを外してしまったのも惜しい(一応落ちるけど)。結末が違うのはいいとしても危うい展開を予感させるサスペンスが不足してるし、重要人物であるはずのオブリが地味すぎるためにあれだけ原作で唸らされたせつなさがないのも寂しい。

原作から離れて見てみると、周りが皆悪党という世界にしてしまったため、普通の人々の生活が全く見えてこないです。エレベーターの婆さんなんてどうやって暮らしてるんだろう?死んだ潜入捜査官の娘がマネーガールと呼ばれてやたら重要視される理由も分からないし(単に商品ってだけかもしれないけど)、悪党カップルの女の方が最後にどうなったのかもよく分かりません。人買いするのはビジネスのためという強調のせいか悪党ボスのおっさんが普通の人すぎて、もっと奥に潜む狂気とかあった方が世界観的には合うと思うんですが。終盤のサワとアカイの対決が何かスッキリしない感じで終わってしまうのもカタルシスに欠けます。あと気になったのが、サワが窓の外を見たときにはカイト(凧)が上がっていて、アカイが見たときは上がってないシーン。何か意味があるのかと思ったら何もないんですよ。最後にサワとオブリの二人で凧を上げてた昔のシーンが出ますが、それならもっと劇的に使うことも出来たろうに。タイトルに意味を持たせようという試みは良いだけに残念。何か色々と勿体ないですね。

とは言え嫌いじゃないです。襲われる少女たちに遭遇しても平然と素通りするアカイなんてよく性格が出てるし、原作にあった重要アイテムである血のイヤリングは出てこないものの、代わりに顔の分からない写真が出てきてこれが記憶を無くしていくという設定とうまく結びついていて良いですね。「記憶を無くすことで二度失う」という台詞もとても良いです。何よりインディア・アイズリーが非常に可愛らしく、パンツの中に手を突っ込んでナイフを出したりと頑張ってるので惹きつけられちゃいます。プリティちゃんです。

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