2015
04.19

裁判は始まり、私たちは真実に涙する。『ソロモンの偽証 後篇・裁判』感想。

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2015年 日本 / 監督:成島出

あらすじ
裁判を始めます。



亡くなったクラスメイトの死は本当に自殺なのか。「彼は殺されたのです」という告発状は真実なのか。真実を明らかにすべく遂に学校内裁判が始まる。宮部みゆき原作のミステリー小説を二部作で映画化した、その後篇。

前篇の感想はこちら。
事件は起き、私たちは心の血を流す。『ソロモンの偽証 前篇・事件』感想。

裁判開催に至る過程が説得力を持って描かれた前篇には舌を巻きましたが、後篇もどう見ても茶番になりそうな中学生の裁判がちゃんと成り立つ話運びになっているのが本当に凄いです。前篇同様に細かい演出、語る映像に興奮。生徒たちの演技は勿論、親たちもそれぞれの形で愛情を示すのが良いです。真剣に向き合う親子のドラマであり、本気でぶつかり合う青春物語。

後篇はいまいちという意見も見かけたけど、全くそんなことなかったですよ。確かに謎や不穏さが拡散する前篇と比べて後篇は伏線回収やまとめに入る流れにこじんまりしたものを感じるかもしれないけど、そこで明らかになっていく人間関係、思いや意志というものが焦点なわけだし、多くの人の心情や行動にケリを付けながらある一点に集約されていくストーリーテリングがたまりません。これもミステリーの一つの形ですね。当然原作から端折った部分もあるだろうし、そのために足りない部分もなくはないけど、でもそれが欠点にはなってない。見事な脚色だと思います。もうボロくそに泣きましたよ。素晴らしかった。

藤野涼子ちゃんや他の子も良かったけど、前篇でイカしてた判事の井上くんが今回も超カッコいいよ!最後までCOOL!カッコよすぎて笑います。笑うんかい。

↓以下、ネタバレ含む。








中学生が行う学校内裁判とだけ聞けば学芸会的なノリにしか思えませんが、それが絵空事に思えないのは藤野涼子ら生徒たちが裁判を開くに至るまでの経緯がとても丁寧だったこと、彼らを取り巻く親や教師らもキッチリ描いていたこと、そして事実死人が出ていることに依っています。舞台は体育館だし、壇に上がる判事らはまるで演劇部のような衣装だし、証言台に置いてあるのがピアノの椅子だったりと手作り感満載。それだけに最初はやはりふざけたりお祭り気分の生徒も多いわけですが、塚地武雅の松子父がビシッと場を諌め、最初の証人に田畑智子の刑事を召喚することで一気におふざけ感が消えます。そもそもずっと登校していなかった大出少年が被告人としてその場にいることが異常でさえある。中学生ながら本気で取り組んでいることを飲み込ませてくれます。

必死で怒りや悲しみを抑える姿が本当に良い塚地武雅を始め、他の親たちも前篇よりさらに良いです。涼子父の佐々木蔵之介が母の夏川結衣に裁判について「どうするの?」と聞かれ思わず「どうしよう」って言っちゃうシーンは、子供が本気だからこそ大人も真剣に向き合ってることが感じられてイイです。裁判最終日に涼子を送り出す藤野家の画が、幸せな家族のポートレートのように玄関口で切り取られていて、ああ涼子は幸せなんだなって思えるんですよ。だから「お前の返ってくる場所はここにある」と父が言うのもポーズじゃないというのが伝わります。一方で永作博美の樹理母は妨害工作をしようとして墓穴を掘ったり、娘にバカ呼ばわりされたりします。娘を守りたいのは本心なのに、その守り方が娘の言い分を聞いて理解しようというプロセスをすっ飛ばした盲目的なものなため、空回りしてしまうのが悲しいです。

そして生徒たち。大出は事件当夜のアリバイが証言でハッキリし「もう大丈夫」という顔を装いながら、無罪を言い渡されるときに心から安堵の表情を浮かべます。その大出を弁護する立場でありながら、告発状が出されるに至った理由を容赦なく突き付け続ける神原。それは彼自身が裁かれる覚悟故の行動だったでしょう。樹理はその顔に陰がかかるショットで暗黒面の発露を表し、その通りに最低の嘘をつくわけですが、この嘘は神原により全て彼女自身に返ってきます。樹理が最後に松子両親に謝るシーンは、観ているこちらがギリギリ救われた思いさえ抱きます。

そして遂に対峙する涼子と神原。当初から彼が纏っていた不可解さが明らかになり「裁いてくれ」と叫ぶ神原と、同じように級友を見殺しにした罪を抱える涼子。神原の訴えはエゴでしかないかもしれないし、涼子の裁判への熱意も自分のためでしかなかったかもしれない。でも最初から「誰かを裁きたいわけじゃない、真実を知りたいんだ」と言っていた目的は、こうして全ての真相が白日の下に晒されることにより達成されるわけです。これは中学生が通るヘヴィな通過儀礼なんですね。だから最後に皆がそれぞれの帰り道へ別れていくシーンは、一段階成長した少年少女の爽やかさに満ちているのです。ついでに言うと、判事の井上くんが最後に「では」とか言ってメガネをクイッてやって去っていくのがスーパークールです。あいつ最高だな。

しかし泣かされた……涼子が小日向文世の元校長に礼を言うところなんて、前篇で校長が漏らした嗚咽が印象深かっただけにボロ泣きですよ。終盤もエラい泣いてしまい、尾野真千子の大人涼子の話が終わって現代に戻ってきたときに同じように現校長の余貴美子が泣いてて「うわ、かぶった」って思いましたよ。あれはちょっとやめて欲しかった(気恥しいから)。そういうちょっとした不満もなくはないです。涼子が雨のなか泣きながら走るシーンは松子の死の場面を連想するんだけど、あそこは父親が止めなかったら危機一髪だった、くらいにしてもよかったかな。樹理が裁判に出たいと言った理由がわざわざ嘘をつくためならちょっと不自然です。柏木君は「~だよぅ」っていう言い方が絶妙にイラッとしながらもちょっと笑いそうになっちゃう。あの口調で大人ぶったことを言っているというのが狙いなのかもしれませんが。あと黒木華の森口先生の証言はあまり必要性が感じられないのが残念。でも市川美和子に殴られるシーン、主観でカメラが血に染まっていくとか、割れて溜まった赤ワインに血の赤が溢れてくるのとかはスゴくイイです。

ともあれ、明らかになる真実にそれぞれ付随するドラマ、前篇のエンドロールでずっと映っていた屋上の意味を始めとする前篇との繋がり、裁判というワン・シチュエーションながら引き込まれる映像的な見応え、と抜群の出来です。これは前篇・後篇分けて考えずに一本の物語として観るべきでしょう。学校内裁判が伝説として語り継がれてるなんて大げさな、と思ってたけど、そりゃ伝説にもなりますね。


ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻 (新潮文庫)ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻 (新潮文庫)
(2014/10/28)
宮部 みゆき

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