2015
04.04

星の名を持つシンデレラ(肉食系)。『ジュピター』感想。

Jupiter_Ascending
Jupiter Ascending / 2015年 アメリカ / 監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラナ・ウォシャウスキー

あらすじ
たらい回し。



家政婦として働くジュピターは、実は宇宙最大の王朝の王女だった!何者かに命を狙われるジュピターは宇宙の傭兵上がりのケイン・ワイズと共に、地球を狙う魔の手と対峙する!という、ウォシャウスキー姉弟のSFアクション。前作『クラウド アトラス』は原作付きでしたが、これは姉弟のオリジナル脚本ですね。

ウォシャウスキー姉弟監督作ということで結構期待はしつつも、巷の評判が最悪だったのでどうしたことかと思ってたんですが、いやあ……なるほど。観終わったあと「うん。うん。うん?」と困惑してしまいましたね。あれれ?みたいな。実は自分が銀河の王女様でしたーと知ったジュピターとそれを護衛するケインを軸に銀河をまたにかけた大冒険、かと思ってたら、何か違うぞ?みたいな。全てが少しずつズレてるような、何とも奇妙な感覚。

良かったところを挙げると、前半のビルの合間の空中戦は迫力で良かったです。敵役のエディ・レッドメインはかすれ声と激昂した時のシャウトのギャップがすさまじく、大変気持ち悪くて最高でした。ミラ・クニス演じるジュピター王女様は発情期なんでしょうか、エラいアクティブです。とんがり耳で空スケーターでショーン・ビーンにボコられるテイタムのチャニングぶりは良いですね。ちゃんと脱ぐしね。ショーン・ビーンは一体いつ死ぬのか!というハラハラもあります。

逆に悪かったところは、うーん、一つだけ決定的なものを挙げるなら、「ウォシャウスキー姉弟ってこんなに話運び下手だったっけ?」ってことですかね。まあ酷評が多いのも分かるっちゃあ分かります。

とは言え、思い返してみてそこまで嫌いかと言えばそうでもないんですよ。色々欠落したり描きすぎたりしてるからオススメかと聞かれれば「う、むむ」とはなりますが。スタイリッシュなSF大作、ではなく金のかかったバカ映画として観た方が多分幸せになれます。

↓以下、ネタバレ含む。








大仕掛けの割にはスケールのでかさを感じられないんですよ。「玉座を狙う悪党と平和のためにそれを取り返そうとする姫」にしとけばいいのに、現代的なビジネスの話なんかにしちゃうから「あれれ?」になっちゃうんですよ。地球で収穫はいいとして(いつどうやって何年周期で?など謎だらけですが)、その覇権を争うのが3兄弟の間というお家騒動でしかないとか、ローンがどうのとせせこましいことを言い出したりとか、何か全体的にちゃちいんですよね。一番酷いのは(ある意味面白いが)王女となるには申請が必要で、その了承を得るために色んな機関を回らなきゃいけないところ。最近の王族は王族となるために役所をたらい回しにされるようです。しかも散々回された挙句「ご愁傷様」って言われるしで、何だか全然祝福されてないというね。さらに最初に連れて行かれる姉のところから、弟があっさりとジュピターを連れ出し、そこから脱出したら今度は兄のところに行く羽目になる。舞台が弟のところになったら姉はその後出てこないし、兄のところに移ったら弟も出て来ない。なにこの壮大なたらい回し。

肝心のアクションもゴチャゴチャしすぎて何をしてるかよく分かりません。ケインたちがロボット?パワードスーツ?的なものに乗って宇宙戦を展開するという最高にアガるはずのシーンは、結局どういうメカに乗ってるのかもよく認識できないうちに終わります。ラストのケインvsトカゲマン(名前忘れた)のバトルが延々と続くのはまあいいとして、最後にトカゲマンの首を穴で閉めて倒すという盛り上がりも、リモコン持ってピッてやってるのが分かりにくいためいつの間にかトカゲマンがブラ下がっているというマヌケな画に。

マヌケと言えば、ジュピターは何の策も練らずアブラサクス兄のところに行った挙げ句、最後に突然逆らって星が壊滅するほどの大騒動を起こしますが、それについては特に反省はないようです。しかしなんで地球人から宇宙の王女と同じDNAが生まれるんだろう?マザコンの兄貴、酒池肉林の弟、後半には忘れ去られる姉というアブラサクス3兄弟の皆さんも、ジュピターのことは放っておけば済むものをわざわざ手を出して大やけどです。対するジュピターさんはいきなりケインに言い寄ったりするのは緊張しすぎて奇行に走っただけなんでしょうか。いや、彼女はきっと愛に生きる女なんですよ。「こんな人生は嫌だ」と言ってたわりに、ラストで元の生活に戻って満足気なのも男が出来たからに違いないのですよ!あるいは犬好きだから忠実なペットが飼えて嬉しいだけかもしれませんが。そしてその犬野郎ことケイン・ワイズは実際は狼人間らしいですが、なぜか羽まであるので狼っぽさと言えばたまに唸るくらいです。しかしながらもし尻尾が付いてたら、ジュピターに対し仏頂面しながらも尻尾は千切れるくらい振っていたことでしょう。カッコいいはずなのにどこか微妙なホバーブーツや、どこぞのモビルスーツのようなシールドという装備が野性的で良いです。

……何か書いてるうちに楽しくなってきたぞ。敵地に乗り込んで助けると言うのを2回も繰り返し、しかもなぜか2回目は手伝わないショーン・ビーンですが、イヤあんたそこは行かないと。最高の死に場所じゃないすか。おかげで劇中死ぬ役者として名高いショーン・ビーンともあろう者が生き長らえちゃうと言うね。娘が地球に置いてけぼりで空気なのが不憫です。ジュピターの母親はすっかりやさぐれて「愛は幻想だ」とか謎発言をしますが、最後に「あなたの父を愛してた」的な手のひら返しなことを言うのは多分情緒不安定なんでしょう。あと前半ジュピターを狙う空中バイクに乗ったハンターがぺ・ドゥナに似てるなと思ったら本人でした。途中で消えるの残念。

おとぎ話なんだろうな、と思うのですよ。「あたし実は王女さまだった!」というのはまさにそうで、白馬の騎士ならぬ狼の用心棒が迎えに来て、豪華絢爛な城に連れて行かれて(拉致だけど)、悪い王子様から救った男と本当の愛を育む、みたいな。そんなベタ要素満載なおとぎ話を壮大な舞台でやりたかった、んですかね?ミラ・クニスがトイレ掃除する姿は、親戚一家に冷たくあしらわれるのもあって完全にシンデレラです。「実は王族だった」と言うのはファンタジーRPGの王道でもあるし、「少女漫画っぽい」という意見を見かけたときは「なるほど」と思いました。ラリー改めラナ・ウォシャウスキーのパーソナルな面が多分に表れているんでしょうか。少女の妄想話、そう考えると可愛げを感じてしまって、だからそれほど嫌いになれないのかもしれません。

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