2015
03.23

森という名の混沌。『イントゥ・ザ・ウッズ』感想。

Into_The_Woods
Into The Woods / 2014年 アメリカ / 監督:ロブ・マーシャル

あらすじ
I Wish…



魔女の呪いのために子供に恵まれないパン屋の夫婦が、呪いを解くためおとぎ話の主人公たちが行きかう森の中へとやって来る、というブロードウェイの人気ミュージカルをディズニーが実写映画化。

登場する元ネタは「シンデレラ」「赤ずきん」「ジャックと豆の木」「塔の上のラプンツェル」。予告などでは「アフター・ハッピーエンドを描く」となってますが、実際は本編そのものも込みになってますね。そこに不妊で悩むパン屋の夫婦と魔女が絡んできます。往年のディズニー作品を彷彿とさせる楽曲は良いし、クロスオーバーするおとぎ話というのは日本ではさほど目新しくはないものの、森という共通項で語るのは面白いですね。

でも舞台劇としてならともかく、明らかに映画的な演出には失敗してるんですよ。ブラックでシニカルな内容は良いと思うんですが、とにかく観てて長く感じる。つまり退屈。終盤などは「え、まだ歌うの?」という感じ。独唱する婆さんのアップを延々と映すのにはさすがにウンザリ。分かったから。メリル・ストリープが上手いのは分かったから。ロブ・マーシャルは『シカゴ』は良かった記憶があるんですけどねえ。ただクリス・パインらが演じる王子様はバカで最高でした。ここだけ繰り返して観たいくらい。

決して「めでたしめでたし」なファンタジーではないので、うっかりファミリーで観に行ったりすると帰り道が無言になること間違いなし。色んな意味で唖然とします。

↓以下、ネタバレ含む。








これが舞台ならいいんですよ。中心に森を据えてそこを行き来するおとぎ話のキャラたちが色々やり取りする、というなら舞台構成として面白いと思うので分かります。でもこれを映画にするならそれなりに画に力がないとツラいんですよ。冒頭の主要人物たちが次々切り替わりながら歌うところなんかは物語の始まりを予感させて良いんですが、以降の歌うシーンは特に工夫もなくタラタラと続くだけ。アップのまま延々と歌う姿を映すならそれなりに情感を高めることが必要だと思うんですが、そこまで盛り上げられないまま多用されるし、せっかくエミリー・ブラントが感情豊かに歌うシーンもそこら辺を行ったり来たりするだけで画に魅力がありません。楽曲は舞台のものをそのまま使ってるのかな?せめて曲をもう少し短くするとかアレンジした方が良かった。

物語的には、結構みんな自分勝手でろくな人間が出てこないです。シンデレラは3回舞踏会行って3回逃げ出すとか、もうどうしたいのかよく分かんない上に、なんだあの鳥を操るスキルは。能力者か。と言うかシンデレラはガラスの靴じゃないんですね。赤ずきんはたくましすぎるフードファイターな上に後半は「赤ずきん」ですらないと言うのがある意味斬新。ジョニー・デップは一人だけ人間じゃないので浮きまくってます。ラプンツェルはパン屋の妹のはずですが、感動の再会などは一切なく育ての親まで捨てて男とあっさり逃走。牛大好きジャック少年は人様のもの盗み過ぎで、そりゃ巨人も怒ります。もう巨人としては進撃するしかないですよ。

パン屋夫婦もジャックに負けず結局は人のものを奪いまくるという構図になるので、「人を蹴落としてでも望みを叶えよう」的な話に思えちゃうんですよ。本当は嫌なんだけどしょうがないんだ、と自分に言い聞かせながらです。しかしその結果、パン屋は妻を失い、ジャックは母を失い、赤ずきん(と言うか狼ずきん)はおばあさんを失い、シンデレラは王子の妻という夢を失います。退場する人々も本当にあっけなく退場しちゃう。悪党と見なされる人たちはもっと酷くて、呪いをかけた魔女は沼に飲まれてしまうし、シンデレラの継母や姉は「靴が入らないなら爪先や踵を切ればいいじゃない」という継母の躊躇ない行動も全く効果を成さず、挙げ句鳥に目を潰されるとか容赦ないです。ジョニデのオオカミもどう見ても変質者の暗喩であり、これは腹かっさばかれて死にます。要するに因果応報が描かれるんですね。これは現在では口当たりの良くなったそれぞれのおとぎ話が本来持っているテーマでもあるでしょう。罪を犯した者は罰を受け、再出発するしかない。鬱蒼と茂る森は混沌の象徴であり、そこから抜け出すには罪を認め合い手を取り合うべきだ、ということなんですね。

……と思ってるんだけど、最後の方はぶっちゃけ「早く終わんないかなー」とばかり思って全然集中出来なかったので、いまいち自信ないです。あとはそうだなー、パン屋夫のジェームズ・コーデンは『はじまりのうた』でも紅茶に魔法をかけてたのでこの世界観でも結構違和感なかったなーとか、アナ・ケンドリックがなぜか時々吉田沙保里に見えてしまう自分は疲れてるんだろうかとか(ホントすいません)、重要アイテム「黄色の髪」がトウモロコシで!いいんかい! とか色々思うところはありますけどね。

しかしここだけはホメないといけないのが、二人の王子ですよ。なんだあのバカ二人は!(超ホメてる)川に飛び込み!胸をはだけ!高らかに歌い上げる!何なのあのヒゲ面は。そして何なのあの王子というよりロックスターな風貌は。パツパツのロッキン衣装で胸毛さらしてシャウトって、フレディですか?クイーンですか?プリンスなのに?しかもバックに美しい遠景を映すことで、よりによって劇中最高の解放感!もう笑いを堪えすぎてプルプル震えてましたよ。ちょっと「ブフォ」って出たかも。あとクリパがエミリー・ブラントにチューしようとして止めてまた戻ってを繰り返すのが陽気なゾンビのようでまたもやプルプル。ディズニーでの王子様の描かれ方はそろそろ何とかした方がいいんじゃないかと思ってましたが、ここまで突き抜けちゃったらもう言うことないです。悪意のなさとチャーミングさは最も強くてタチが悪い、という良い例なのかもしれません。

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