2015
03.19

人生は暗号よりも難解。『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』感想。

The_Imitation_Game
The Imitation Game / 2014年 イギリス・アメリカ / 監督:モルテン・ティルドゥム

あらすじ
おたもしたろいた。(タヌキ)



第二次世界大戦でドイツ軍が世界に誇った暗号機エニグマ、その暗号の解読に携わったイギリスの数学者アラン・チューリングの人生を描く、史実を元にしたドラマ。主演のベネディクト・カンバーバッチは第87回アカデミー主演男優賞にもノミネート。

すげー面白い!激動の時代、あまりに数奇な人生を生きた男アラン・チューリング。第二次大戦が舞台なのでシリアスな面はありますが決してそれだけではなく、暗号を解くというミッションへの挑戦、個人プレイからチームプレイへの変遷というドラマ、大戦の英雄か犯罪者かという歴史的ミステリまで描かれるんですね。そして同時にマイノリティの悲哀をも映し出す。中核にあるのは「関係性」であり、時代に翻弄されながらも人が追い求めずにいられない関係性、これを多面的で劇的な物語として語るのには唸ります。

アラン役ベネディクト・カンバーバッチのハマりぶりは言うことなし。『SHERLOCK』とキャラが被りそうでいながら実は全く違う人物の表現がイイ。突然のジョークには思わず笑います。胡散臭いのに熱いマシュー・グード、柔らかい口調で怖いことを言うMI6のマーク・ストロング、渋カッコいいチャールズ・ダンスと脇を固める面子も素晴らしい。紅一点とも言えるキーラ・ナイトレイの眩しい陽性も実に魅力的。

普通と違う男とそれを易々と受け入れる女、チームの絆とのし掛かる生殺与奪、三つの時系列が向かう先、アランが後世にもたらしたもの。ここまで切り口が多いのにまるで雑多な感じがしないのは見事です。どこか暖かみのある音楽もとても良くて、機械とリンクしてリズムを刻むところなどは高揚感さえもたらします。生まれるのが早かったかもしれない天才、アラン・チューリングはいかにして後世に名を遺したのか。史実の行間を豊かに彩った脚色が素晴らしいです。

↓以下、ネタバレ含む。








暗号解読に関してはなかなか成果が出ずやきもきしますが、暗号の鍵を見つけ走り出したときの高揚感、回りだした機械に合わせ鳴り響く勇壮な音楽、機械が止まり遂に解読したときの興奮が素晴らしい。そして直後に訪れる冷静かつ残酷な判断。論理的には正しいけど心情的には承服できない究極の選択が重いです。また暗号解読の機械と共に使われる「キーワードの設定」や「検索」といった言葉がまるでコンピュータのようだなと思ったら、まさにその通り原型だったわけですね。実に多くの要素が盛り込まれています。

3つの時系列が交互に語られますが、流れ的にはどれも同じ構造を持ってるんですね。変わり者と思われいじめにもあう少年時代、まとまなコミュニケーションを取ろうとしない大戦時、不審者扱いで捕まる戦後。始まりは全て周囲に馴染めない変人としてスタートし、やがて関係性を築ける相手と出会っていきます。少年時代は自分を理解してくれる少年クリストファーと友情を深めます。大戦時は昼食を揚げ足とりで断ったり首相に直訴したりと突拍子もないことをしていたアランが、キーラ演じるジョーンと出会うことで仲間にリンゴを渡したり下手くそなジョークを言い出したりする。強がりをやめることで周りが受け入れるところは泣けます。そして大戦後の取調室でアランのことを知ろうとする刑事との対話、これによって物語は語られていきます。その後3つの時間軸はそれぞれが喪失で幕を閉じます。最愛の友人の死、カミングアウトによる大切な人との隔絶や仲間と共有してきた機械と機密の破棄、嗜好を薬で抑え込むことによる本人の自由意思の喪失。

アランは変わり者として孤高を気取っているように見えますが、手にしては失う人生の繰り返しにより、常に孤独に怯えているようにも思えます。「機械と人間に違いなどあるのか」という思いは、突き詰めれば同じだという科学的見地以上に、裏切ることのない機械にすがるしかなくなったアランの孤独がもたらした結果とも見えるのです。機械に亡き親友クリストファーの名を付け、これが奪われるとなると「私を孤独にさせないでくれ」と泣くアランの姿がとても悲しく胸を打ちます。

天才、変人、同性愛者、コンピュータの礎を築いた男、大戦を早く終わらせた男。想像しなかった人物が成し遂げた、想像もしない偉業。しかし彼が本当に求めたものは、ただ自分を理解してくれる人との関係だったのかもしれません。

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