2015
03.17

事件は起き、私たちは心の血を流す。『ソロモンの偽証 前篇・事件』感想。

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2015年 日本 / 監督:成島出

あらすじ
クラスメイトが、亡くなりました。



1990年のクリスマスの朝、城東第三中学校の校庭で男子生徒の遺体が発見され自殺と断定されたが、「彼は殺されたのだ」という告発状がクラス委員の藤野涼子の元に届き、事態は混乱していく……。宮部みゆき原作のミステリー小説を二部作で映画化。原作は未読ですが(すげー読みたい)、文庫で全6冊の大作です。

もう、凄い!原作が宮部みゆきなので話の面白さは間違いなかろうとは思ってましたが、いやまさかここまで映画的な完成度が高いとは。一時も目が離せないストーリーテリング、距離感を詰めることで惹き付ける濃密な演出、出番の多さに関わらず印象深い、どこにでもいそうな人たちを演じる役者陣の凄さ。ふと見せる子供の残酷さや滲み出る大人の保身を描きつつ、中学生という最もあやふやな年代だからこそのスリルに終始釘付けになります。そこに息づく人物たちの心情の見せ方に、感動とは異なる思いで何度も泣きそうになりましたよ。そして凄いショットの連発。

主演は1万人の中から選ばれたという役名と同じ芸名の藤野涼子、悩んだ末の真っ直ぐな決意の表情や喋り方に表れる意思の強さが素晴らしい。数年経ったらとんだクールビューティーになりそう。『幕が上がる』とは別人のような黒木華を始め、キャストがどれもハマってます。登場人物がかなり多いのに全く煩雑にならないのは見事。

地味そうな話だしわざわざ前後編に分けるほどなの?と思ってたけど、とんでもない。全く無駄のない作りに圧倒されましたよ。色んな切り口でもってとにかく語りたくなる。ああ……これは凄いよ。前篇でこれだ。後篇どうなるんだ……。ミステリとしての決着も楽しみすぎます。

↓以下、ネタバレ含む。








そんなに派手な話ではないはずなのに凄い勢いで迫ってくるように感じるのは、思わず声が漏れそうなシーンが随所にあることが大きいです。冒頭の死体発見現場からして、上から映した真っ白な世界で徐々にカメラが引いていくという強烈なインパクト。野田君が移動したらそこに漏らしたあとがあるというのもさりげないです。松子が車にはねられた時のブッ飛びかたなどは度肝を抜かれるし、倒れた松子の側で徐々に雨に混ざりながら弾ける血の色も衝撃。或いは保健室のカーテンの隙間から突き刺さる樹理の視線とかゾワリとします。あそこで何て言ってたんだろう?

同級生の死で宙ぶらりんになりながらも、中学生ならではの能天気さというのはありますね。遺体を死体と言っちゃうとか、ビデオと聞いて「エッチなやつじゃないのかー」とか。涼子の友人まり子が裁判に参加するとき一緒にやると言う男子なんてまり子のこと好きなのバレバレだし、陪審員として集まった面子もどこか裁判というイベントを楽しんでる雰囲気が感じられます。判事の井上君の「仕方ないな(眼鏡クイッ)」って言いながら、でも嬉しそうなところとかちょっと微笑んじゃう。一方で闇もあります。女子に対して容赦なく暴力を振るう大出が殺人の噂により社会的に抹殺され、父親からも暴力を受けているとか。体型を気にせず明るく振る舞う松子はニキビに悩む樹理を慕っているけど、樹理は松子を都合よく扱える相手としか思ってなくて、松子もそれを感じながらも「彼女は友達だから」と決めつけた上で接しているとか。

そんな子供たちを演じる若手キャストは本当によく集めたなというくらい粒揃い。特筆はやはり藤野涼子ですね。真っ直ぐな、痛みを伴おうとも逃げない決意の表情が凛々しい。いじめの現場に背を背けるのは樹理があまり好きでないというのもあったかもしれませんが、そこを柏木君に偽善と言われて流す涙とか、腹を決めた後は声質に強さを滲ませてきたりなど素晴らしいです。その柏木君のイラつかせ具合とか、謎の他校生・神埼君のミステリアスさとかもイイですね。涼子と一緒に死体を発見する野田君はまえだまえだの一人なんですね。太ましくて気付かなかった……。

子供たちの良さは大人たちの演技もあってこそ。黒木華は大人し気な雰囲気と侵食を始める狂気の両立がさすが。柏木君の死を告げるときの台詞が意味ありげで気になります。松重豊の大雑把そうでいて辞表を持ってでも生徒に味方する熱さはイイですね。永作博美の「パパみたいな人と結婚しちゃダメよ」と娘に言っちゃったりブルーハーツ歌いながら飯食ったりという無神経な母親が、ラストで娘のやったことを知ってどういう行動を取るのかも興味深い。夏川結衣が随分老けたように見えるのは個人的にショックですが、裁判を開きたいと言う娘に協力することになるくだりの母親っぷりが良いので耐えます。あと本編とあまり関係ないと思われる市川美和子のホラーすぎる怖さスゴい。写真に写る柏木君や、ラストの闇の中で笑う樹理、そこに突如姿を現す母親と、心理描写による怖気だけでなくホラー映画的恐怖演出まで取り込むことで何か恐ろしい事態が進行していることを匂わせますね。田畑智子の人当たりが良くてもやはり刑事である雰囲気とか、小日向校長の吐きそうな嗚咽とか、感情的になる学年主任とか、ゲスな報道レポーターとか、どの人物も印象深いと言うのは大したものです。塚地が出てくるとホッとしますね。あとチョイ役でも嶋田久作が出ると何か嬉しいです。

まだ前篇だけなので物語として結論めいたことは言えませんが、それでも不可解な自殺や垣間見えるバックボーン、子供たちだけで裁判まで漕ぎつける過程などで鷲掴みです。果たして告発は真実なのか、誰が何を隠しているのか、他校の生徒でありながら介入する神埼君の狙いは一体何なのか。そして遂に開廷する学校内裁判。刮目して後篇を待ちますよ!

 ※

後篇観ました!ということで感想はこちら。
裁判は始まり、私たちは真実に涙する。『ソロモンの偽証 後篇・裁判』感想。



ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)
(2014/08/28)
宮部 みゆき

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