2015
03.07

その宿命ゆえに時を駆ける。『プリデスティネーション』感想。

Predestination
Predestination / 2014年 オーストラリア / 監督:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ

あらすじ
どっちが先?



凶悪な爆弾魔を捕えるためタイムトラベルを行う時空警察のエージェントが、とある青年と会話をするのだが……という、ロバート・A・ハインラインの短編小説を映画化した時間旅行系SF。これはすんごい面白いぞ!

展開も着地点も全く見えないままどんどん進む物語にずっとドキドキしっぱなし。時代性のあるSF美術、魅力的なギミック、タイムトラベルもののある意味逆手を取る展開、そしてピースが次々とハマっていく快感!これは究極のアレですよ。アレ。ああっ言えない。ここまでアレな映画はなかなかないぞ!まさかアレとアレがアレしてアレとか、これ以上語ろうとすると全部伏せ字になるので語れないというのがアレだけど、とにかく最高!

主演のイーサン・ホークは『6才のボクが、大人になるまで。』とはうって変わり『ガタカ』を彷彿とさせるSFものながら、安定の存在感。そして相手役のサラ・スヌークがとにかくスゴい!若かりし頃のジョディ・フォスターにエマ・ストーンを掛け合わせたような独特の風貌で難役をものにしてます。監督のスピエリッグ兄弟は前作『デイブレーカー』で新たなヴァンパイア世界を創造してシビれさせてくれたけど、今回は新たなタイムリープものをやってのけてくれます。”時の流れ”と”人間の存在”、その因果関係を飛び越えたアクロバティックな物語は、誰もが反芻し検証したくなる魅力満載。

これはあらゆる情報を仕入れないようにして、何も知らずに観るべき。戦慄と感動を同時に味わえるという稀有な作品。最高です。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭の爆弾魔のシーンから伏線だらけ。ジョンの一人語りが延々続くシーンでは「爆弾魔どうなったの?」とやきもきするし、ついでに「仕事しろよバーテン」とちょっと思ったりもしますが、全て計算。ジョンの「私が少女だったころ」というパンチの効いた出だしに引き込まれ、物理的にパンチをかます少女に驚き、遂に始まるタイムリープにワクワクが止まりません。スペースコープ社やバイオリンケース型タイムマシンのレトロな未来感、ジャンプした時の風が巻き起こったり車のガラスが割れたりする演出と細かい点も大好物。そして捨てられた赤子、自分に感じる特殊性、止められない爆弾、「俺の後を継げ」の真意、そんな張り巡らされた伏線が後半次々とハマっていく。物語は決して軽くはないのにこの爽快感が素晴らしいです。

正直、何となく話は見えるんですよ。序盤でイーサン・ホークの顔に貼り付けられたような傷跡が沿っているので「ああこれは顔が変わったんだな」と思う。勘のいい人はここからジョンとの関係まで見えるかもしれません。僕はそこまでは分からなかったですが、ジョンが過去に行って帽子を被った姿を見た瞬間に「え?ひょっとして?まさか?」と気付いて、彼女とぶつかった時には「うわー!」と叫びそうになりました。先が読めたからガッカリという弱点になってるのではなく「まさか!そうだったらスゴい」というのを本当にやってしまうことに対する「うわー!」なんですね。

何がスゴいって、タイムリープもので必ず議論に上がるタイム・パラドックス、そのタブーともいうべきパラドックスそのものに主点を置いているところです。観終わって思い返すと、一体どこが始まりでどこが終わりなのか分からなくなる。物理の領域なのか哲学の領域なのかさえ悩みます。バーテンがジョークを聞かれて「鶏が先か卵が先か」と答えジョンが笑えないと言うシーンがありますが、彼自身にとってはその会話自体がジョークのようなものなのです。閉じることのない宿命の輪廻が主人公の人生を何巡もさせる。まさに自分の尾を食う「輪廻の蛇」。原題の「Predestination」は「宿命」の意味であり、バーテン自身が「宿命というものもある」とジョンに諭すのは既にその輪の中の出来事です。

ジェーンが感じる自分が普通の人とは違うという感覚は「輪廻」のもたらす結果であるのでしょう。誰とも分かり合えなかったのに、その初めて会った男とだけは通じた理由。自分しか愛せない女が愛した者。そして性転換というより両性具有と言うべき存在。恋愛への興味はなくても性への興味はある、というのも矛盾していません。まるでナルシシズムをも越えた究極の自己愛のようです。しかし自分を愛するから繰り返すのか、繰り返した結果自分を愛したのかも最早よく分かりません。自分が自分を始末するのを知っていながら誤った道へ進んだのか、誤った道へ進んだ自分を止めようとしたのか、それすらも分からない。鶏が先か卵が先か、これが最後まで貫かれているのがスゴいですね。それでもラストの「君が愛しい」という思いだけは真実であるのでしょう。

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