2015
02.21

魔に囚われたポリスマン。『クリミナル・アフェア 魔警』感想。

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魔警 That Demon Within / 2014年 中国・香港 / 監督:ダンテ・ラム

あらすじ
催眠ぐるぐる~。



2006年に香港チムサーチョイの地下道で起こった警察官による警官射殺事件からインスパイアされた作品。ある警察官が強盗団ボスに知らずに輸血したことから何かが狂って行く、ダンテ・ラム監督作。

警官が警官を射殺するという実話からまさかこんな話が出来るとは。警官と強盗団ボスの話から連想される、例えば正義と悪の戦いとか、根底で通じるバディものとか、そういう話ではないんですね。そこに描かれるのは、刷り込まれた正義感の隙間から溢れる抑えられない心の闇。着地点の見えないサスペンスは、不安を煽る音楽もあって、もはやサイコホラーの域に達しています。

ぴっちり七三わけのデイブ役ダニエル・ウーの真面目そうなだけにヤバい狂気、ホン役ニック・チョンの『激戦 ハート・オブ・ファイト』とはうって変わった悪のカリスマ感。二人の存在感に加え『ドラッグ・ウォー 毒戦』のような市街地の銃撃戦、壮絶なカークラッシュ、連鎖する死の炎、と予想の斜め上を行く展開に釘付け。アンディ・オンも『激戦』に続き登場。

結構入り組んだ話で、意味深な現在と過去の交錯に戸惑い、悪夢的な精神世界には唖然。後半ようやく構造が見えてきたと思いきやまだ捻ってくるし、よもやそこに美人姉妹のカウンセリングなんてものが入るとは思わないですからね。様々な要素が入り込み、そして全てが冒頭表示される「魔」の文字に集約される。なんとも言えない迫力があります。

↓以下、ネタバレ含む。








市街地の銃撃戦でゴア描写も飛び出す緊迫感、腹に鉄骨刺さったまま病院へ行くホンの凄まじさ、捕らえられても華麗に逃げ出す逃亡劇、爆発する車で炎に包まれる人間のこれでもかというスロー表現、欲に眩んだ者たちの裏切り。そんなスリルとバイオレンスの一方で、謎めいた過去や催眠療法による悪夢といったサイコスリラーが展開されるのが予想外。幻覚幻聴で映像がぐにゃっとしたり、運転する姿が一回転したり、どこか懐かしさを感じる演出ではありますが。デイブが自分を押さえられなくなったりおかしくなると画面に赤い色が広がるのが分かりやすい。

クソレイプ野郎をつるはしでブッ殺したときにホンが出てくることで、デイブかホンに自分の悪の部分を見出しているという構造がやっと分かりますが、少し意外だったのは「ホンが犯行を重ねてると見せかけて実は自分が犯人だった」というミステリー仕掛けにしてないことですね。ホンとデイブはあくまで別人として区別されており、蠢くのはあくまでデイブの心の闇だというのを強調してます。ペンキぶちまけ犯を半殺しにしたり祖母から目を離したヘルパーに拳を握りしめたりする彼の危うさは、自分へ鞭打ち制裁を行うほどの正義感との板挟みで葛藤する。これはラストで悪徳刑事を助けようとするところまで一貫しています。

デイブの父は暴動時に投げた火炎瓶を警官隊に弾き返されて火だるまになって死亡します。その弾き返したのがホンそっくりの警官であり、デイブはその警官の家に火を付け殺害、生き残った警官の母親を引き取った、というのが真相ですね。ホンがデイブの悪の心の象徴となるのも父親からの叱責により正義感と歪みを同時に持つに至ったのもこの過去に起因していたわけです。炎で死んだ父親、炎で殺した警官、目の前で炎に包まれた同僚。最後に憎むべき犯人を炎から救いだそうとして自らも炎に飲まれるデイブ。ラストの吹き出す火柱に一面火の海のビジュアルは凄まじく、全てを焼き尽くす地獄の業火のようで身震いします。

警官としての良心で助けようとしたのに全ての犯行が彼のせいとなって事件は幕を閉じます。誰もが心に悪を持っている、という最後のメッセージ。それは他人にはうかがい知ることのできない闇として誰もが持ちうるものなのかもしれません。

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