2015
02.18

ここから再び始めよう。『はじまりのうた』感想。

begin_again
Begin Again / 2013年 アメリカ / 監督:ジョン・カーニー

あらすじ
違って見えるいつもの街。



シンガーソングライターのグレタが音楽プロデューサーのダンに見出され、アルバムを作るためにニューヨークの街角でレコーディングを敢行していく。キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ共演のハートウォームな音楽ドラマ。これ、凄く良いですよ!

落ち目な音楽プロデューサーと寂しいシンガーが失ったものを取り戻す話。厳しい現実はあるものの、そこで立ち止まらずに先へと進もうとするんですね。何より物語と深く関わり、映像と共存する音楽の素晴らしさ。文字通りの「舞台」となるニューヨークの街、それを色付かせるマジック・オブ・ミュージック!音楽を聴く楽しさ、奏でる楽しさを思い出して、楽しさのあまり泣きそうになるという稀有な体験。楽曲もとても良くて、同じ曲でも歌い手やアレンジを変えることで異なる印象を与えてきます。観た後にサントラが欲しくなるという声も大いに納得。

元有名プロデューサーであるダン役のマーク・ラファロがとにかく最高。観る者を虜にするロックな行動、街中でレコーディングするときのノリノリの録音風景に引き込まれます。しかも今年の胸毛No.1きたよこれ!一方でグレタ役のキーラ・ナイトレイが素敵な歌声を披露し、感受性も豊かなシンガーとしてこれまた最高。一緒にレコーディングするメンバーたちも皆良くて、特に売れない路上ミュージシャンのスティーヴが愛らしい。グレタの恋人デイヴ役の「Maroon 5」アダム・レビーンが、最初はパッとしないのがどんどんスターオーラ発揮してくるのはさすがです。あの爆発ヒゲはどうかしてますが。

金儲け主義の音楽業界と音楽を楽しむ人たちの対比も面白い。ビターな味わいも込みで後味ハッピーです。

↓以下、ネタバレ含む。








最初はやる気なさそうな女となんかじっと見てるキモいおっさんかと思うのに、そこから歌うグレタに会うまでのダンのエピソードが始まり、二人が出会ってダンが「悲惨な出来事があるだろう」と言うとダンに会うまでのグレタの悲惨なエピソードになって、また冒頭に繋げる。この構成。ただのおっさんと歌い手の背景を順に見せることで一気に親近感を沸かせ、冒頭の出会いシーンに戻る。この「ここからが始まりだ」という、実は劇的な出会いなのだと知らしめる構成がイイです。まさに原題の『Begin Again』が初めから描かれてるんですね。

こういったさりげなくドラマティックな演出は随所に見られます。冒頭グレタの歌に興味なさげな会場を映し、グレタのアップに移ってからカメラがパンするとダンが映っているとか。ダンの目にはステージ上の楽器が奏で出す情景が見えるとか。レコーディングのためにくすぶってるミュージシャンたちを集めていく様子は、それぞれは短いけどちょっとした背景を垣間見せるとか。街角録音で騒ぐ子供たちをコーラスに参加させちゃうとか。トラブルガムってあの黒人ラッパーの人がいきなりライムの効いたラップを始めるところとか。スプリッターで曲を聴きながらNYの街を躍り歩き、クラブで違う曲を聴きながらダンスとか。そもそも街中で録音するというゲリラライブ的な高揚感が素晴らしい。娘に冷たくされ悲しそうなラファロの顔のアップなど笑える要素もあったり。音楽で繋がっていく多幸感で人も街もどんどん魅力的に見えてきてワクワクします。

ダンは元敏腕プロデューサー、グレタは魅力的な曲を書くソングライター、デイヴは大スターと、才能ある人の話ではあるんですよ。でもスティーヴのように歌はダメだけどミキサーや機材調達という違う方向で実力を発揮する者もいる。「おいしくなーれー」って紅茶入れる能力とかね。持たざる者を無視してるわけではないのがいいですね。他のメンバーたちも、大人しそうなバイオリンの彼が屋上ではしゃいでたり、物静かなチェロの彼女が演奏中地味にウキウキしてたり、ピアノの彼のバレエ教室を去る時の早さなどもイイ。ダンが娘の成長を知り妻との関係を修復するのも音楽の力と徹底してます。

ダンとグレタが惹かれ合いながらも結局くっつかず元サヤというのがちょっとビターではありますが、これが悪くない。二人で帰ったときスティーヴが不在だったらどうなってたか分かりませんが、そんな予感や成り行きも憎めないです。エンドロールではアルバムを1ドルでシェアするという「マジすか」という展開ですが、それさえもこの物語にはふさわしい結末ですね。つーかあのアルバム欲しいな!


はじまりのうた-オリジナル・サウンドトラックはじまりのうた-オリジナル・サウンドトラック
(2015/01/21)
サントラ、キーラ・ナイトレイ 他

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