2015
02.10

スパイの大冒険&活劇!『ジョーカー・ゲーム』感想。

joker_game
2015年 日本 / 監督:入江悠

あらすじ
深田恭子は天使かもしれない。



第二次大戦前の日本、陸軍の極秘諜報組織「D機関」の結城中佐によりスパイとなった嘉藤は、機密文書「ブラックノート」を奪取する任務に就く。柳広司の同名スパイ小説の映画化。

世間の評判は賛否両論分かれてましたが、いやこれ面白かったですよ。短編集である原作小説のエピソードを上手く組合せたスパイもの。リアル諜報合戦というよりはスパイ冒険活劇であり、それさえ分かれば混沌とした時代性に無国籍な舞台でのスパイアクションが心地よいです。『007』シリーズを意識したようなオープニングに『カジノ・ロワイヤル』のボンドのようにとにかく走る姿。『ミッション・インポッシブル』的な騙し。さらには『プロジェクトA』を彷彿とさせるアクションに、ルパン三世的味わいまで。美味しいところを上手くまとめてて終始ニヤニヤ。

正直お話的にはかなりマズい点も多いです。「ダメだ」とか「酷い」とかいう意見も分かります。でも静と動の間の取り方、アクションの魅せ方、陽光眩しい南国での影のかかり方と、とにかく絵面がカッコいいんですよ。脚本の粗さを演出でカバーしてるという感じです。入江悠監督はいい仕事してますね。

結城役の伊勢谷友介は最高にキマってるし、亀梨君もかなり良いので、アイドル映画と見なすのはちと勿体ない。何より深キョンのベビーフェイスに似合わぬエロさ!ぶっちゃけ深キョンのエピソードがなければ映画の完成度は上がったと思いますが、彼女のサービス満点さがこの映画の素晴らしい点でもあるので悩ましいです。あと軍服姿の嶋田久作が『帝都物語』の加藤保憲みたいなのにもニヤニヤしてしまいます。

ストイックなスパイが華麗に敵を欺くような、緻密でシリアスな展開を期待すると肩透かしを食らうので注意です。さあどうすんの?どうなるの?そう来たか!え、それはないだろう!って一喜一憂しながら観るのが楽しいです。

↓以下、ネタバレ含む。








大体原作由来のところは面白く、オリジナル要素のところがダメですね。例えば監禁場所から脱出しようとして追い詰められ、もうダメだというときのスリーパーのシーンは原作にもあるスリリングなエピソードですが、これで危機を脱しておきながら「深キョン助けなきゃ」って戻って捕まっちゃうってアホすぎます。そもそもD機関の男がハニートラップでブラックノートを奪われるという展開には唖然とするし、それでいて深キョンの持ってたチェスの駒をいつの間にかすり替えてたってのはそんなバカなって感じだし。女スパイが出ると聞いた時点で予感はしてましたが、案の定深キョンが絡むオリジナルシーンはことごとく酷い。

しかし深キョンはメイド服にチャイナ服にはだけたシャツというナイスなコスプレ、鞭打たれての悶絶、峰不二子なみの活躍という、男臭い話の中での華でもあるんですよ。さっさと逃げなきゃいけないのにわざわざキャッツアイみたいな服装に着替えるなんてのは、もうそういう立ち位置なんだと明言してるようなもんですね。あれは監督がわざとやってるとしか思えないぞ。だから最後も男たちがあくせくやってるなか一人去って行くのは爽やかでさえあります。

この爽やかさが良いんですよ。冒頭のシリアス展開で死刑に処されるところに突然結城が現れて縄をスパッと切っちゃうところから、 目が回りそうなほどのカメラワークでスパイ教育の目まぐるしさを表す訓練シーン、軍のお偉方を出し抜く仕掛け、「死ぬな殺すな」の教えによる悲劇の回避、追っ手をまくときに衣装を次々と変えながらスルスルと逃げていく逃亡劇。そんな積み重ねが全体的に爽やかな印象を与えます。

これは裏を返せば軽いということにもなってしまい、それによるデメリットもありますけどね。亀梨演じる嘉藤は正義感を買われてスカウトされただけにしてはいくらなんでも最初から有能すぎるし、小出恵介には騙されたけど嘉藤にまで真相を隠す意味がよく分からないし、逃げながらどんどん変装しても結局追いかけられてて意味ないし、お偉いさんの部屋に盗聴器を仕掛けるだけならあんな手の込んだことをしなくてもD機関なら誰でも出来そうだし。極めつけはクライマックス、火薬にたまたまライターの火が付くとか、たまたま写真で火を繋ぐとかはあまりに偶然すぎてスパイとしての計算高さが全くないです。「殺すな」の教えもたまたま敵の大将マーカスが生きてたから守られたっぽいし。

ただ、爽やか娯楽方向に振りきってるからこその楽しさってのもあるわけですよ。演出が分かりやすいというか、馴染みやすいですね。『プロジェクトA』まんまのノックして開く扉でぶつけるとか、壁の上の僅かな隙間をジャンプして通り抜けるとか。監督自身ジャッキーのファンだと公言してるのでこれは確信犯でしょうね。シーツがサラサラするなかでのでラブシーンはまるで『悪の法則』の冒頭のようですが、ちょっとチュッチュしすぎじゃないですかちょっと!みたいな気恥ずかしさを感じたり。火薬を炎が伝っていく画は『ミッション・インポッシブル』、時計台は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と「ああ好きなんだな」って思える要素もブチ込んでくる。結城がコーヒー、英国のマークスが紅茶とそれぞれのカップをアップにすることで、二人が対立するトップであるという立ち位置も見せる(マークスはトップのくせに前線に出すぎだけど)。楽しめるものを作ろうという思いが伝わってきますよ。

時に地味でさえある諜報活動や国の威信をかけた攻防といった原作の味はあまり残ってないですが、シリアス一辺倒のリアル路線だけじゃなく、この爽やか路線も一つの娯楽アクションの形としてあっていいと思うのです。


ジョーカー・ゲーム (角川文庫)ジョーカー・ゲーム (角川文庫)
(2011/06/23)
柳 広司

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