2015
01.29

恐怖の吸血鬼は愉快な隣人。『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』感想。

What_We_Do_in_the_Shadows
What We Do in the Shadows / 2014年 ニュージーランド / 監督:タイカ・ワイティティ、ジェマイン・クレメント

あらすじ
URYYYYY!



闇のパーティ撮影のため撮影班がヴァンパイアたちと行動を共にする、という体のモキュメンタリー。ニュージーランド映画なんですね。これは楽しいぞー。

ヴァンパイアといえば耽美とかクールとかいうイメージですが、現代に生きる吸血鬼たちの日常はそんなカッコいいイメージとは縁遠い上になかなか大変。血は吸わなきゃいけないし、正体はバレちゃいけないし、家事もしなきゃいけない。そんな彼らの様子を時に淡々と、時に臨場感たっぷりにカメラは映していきます。

陽気なカメラ目線のヴィアゴ、拷問好きの変態「串刺し公」ヴラド(『ドラキュラZERO』の主人公じゃねーか!)、ナチス・ヴァンパイアを自称するディーコン、ノスフェラトゥ的な大御所ピーターとヴァンパイアメンバーは彩り豊か。さらに新たにヴァンパイア化した新入りや、狼男まで登場して賑やかです。また随所にぶち込まれる「ヴァンパイアあるある」が面白くて、うっかり大動脈を噛んで大流血とか、銀のロケットで火傷とか、コウモリファイトとか、よくもまあこれだけ入れたなってくらい入ってます。描かれる日常も8千歳の古株の迫力から新米の悩みまで多彩。狼男との確執とか、皆に好かれる人間スチューのイイ奴感とか、結構作り込んでます。ヴィアゴ役のタイカ・ワイティティ、ヴラド役のジェマイン・クレメントは監督・脚本も兼任なんですね。

実際ヴァンパイアが現実にいたらこんな感じに生活してるかもな、と思えてくるのが好ましい。アイデア一発ものながら、あらゆるドラマを取り入れてたり、細部にもこだわった作りになってるので、しょーもなくも楽しい。ゆるーく笑えます。

↓以下、ネタバレ含む。








食事問題、増える仲間、決別、仲間の死、アンデッド同士の交友や対立など様々なドラマが描かれますが、基本は大真面目にバカをやっていてそこがイイです。それもヴァンパイアだから許されるというか、通常の人間と違う体質や感性だからこそってのが上手いところ。何百年も生きてるんで正直ファッションセンスとかも古いんだけど、これがヴァンパイア・スタイル!と開き直ってるところが楽しいです。

新しく仲間になったニックは嘆くかと思いきや「飛べるのが楽しい」とかぬかすし、好物のポテト食ったら体が受け付けなくてドバドバ血を吐くし、『トワイライト』の主演は俺だと言ったり、アホです。「ポーク(串刺し)」に反応する串刺し公ヴラドとかもね、アホです。「恥辱の行進」なんてアホを通り越してバカ丸出しですが、これが彼らのしきたりだと考えると歴史を感じたりとかね、しませんけど、そういったギャップも上手い。ヴァンパイア同士がコウモリに化けてケンカするんだけど、人型に戻って相手がコウモリのうちにブン投げた方が勝つというのも笑えます。

それでいて愛する人の写真を入れた銀のロケットを火傷しながらも首にかけたりするせつなさもあったり。まあそんなせつなさはラストでノリノリのおばあちゃんのために吹っ飛ぶわけですが。確かに年下だけどな……。一方でヴァンパイアに襲われるシーンでは、ドアが開かず迷路のような屋敷を走り回りながら、奴らがどこから襲ってくるか分からないというのが結構な恐怖で、呑気に浮かびながら掃除してた屋敷とは別物のような迫力があります。さらには8000年生きても死は一瞬という無常感まで出てくるので、本当に盛り沢山ですね。

ゾンビやヴァンパイア・ハンターまで出てくるのも嬉しいところ。特筆はやはり狼男たちですね。股の臭いをかぐとか投げた棒切れに反応するとか、犬ッコロぶりが泣けます。かと思えば満月の晩に見せる本性の恐ろしさ。狼男って変身するとき服が破けるけど人間に戻ったときはやはりフルチンなのか、という余計な納得要素も。しかしそんなキャラ立ちしまくりの人物ばかりの中で最もワンダーなのが、一人の人間であるスチューであるというのがね、ニクいんですよ。ヴァンパイアたちに好かれ、インターネットで憧れの日の出を見せ、決して取り乱さず友人がヴァンパイア化しても見捨てないIT企業人スチューの人間力に、ヴァンパイアとの共存の可能性さえ見せるという凝った作り。種の違いは関係ないのだ、大事なのは愛され力(と赤いほっぺ)なのだと言わんばかり。まあ最後は狼男になっちゃうけど、遂にはヴァンパイアと狼男との仲まで取り持つし、スチュー旋風ハンパないです。

こうして書いてると「ああ、これ好きだなー」という思いがどんどん大きくなっていく不思議。意外と緩急あるし、最後の集合写真にはじんわりするし、愉快痛快です。

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