2014
11.29

方程式では解けない問い。『天才スピヴェット』感想。

THE_YOUNG_AND_PRODIGIOUS_TSSPIVET
THE YOUNG AND PRODIGIOUS T.S. SPIVET / 2013年 フランス・カナダ / 監督:ジャン=ピエール・ジュネ

あらすじ
ちなみに姉さんはアイドル志望。



片田舎に家族と住むT.S.スピヴェットは10歳にして天才的な頭脳を持つ少年。ある日発明した永久機関がスミソニアン学術協会の科学賞を受賞したスピヴェットは、授賞式のスピーチをするため一人都会への旅に出る、というお話。

ユニークな人物たちによるファンタジックな雰囲気が魅力的。最初は既に天才のT.S.君が旅をしててもあまり成長の余地が感じられずロードムービーって感じではないのかな?と思いましたが、喪失を補うための旅により不器用な家族皆がその先へ進むという意味でちゃんとロードムービーになってるのがイイです。牧歌的でほんわかしながらも、全てが根底にある一つの事件へと向かう構成になってるんですね。

主人公のT.S.スピヴェット君がすごく可愛らしくて応援したくなります。キャンピングカーのカモフラージュは隠れれればいいのにと思いつつも絶品。母親役のヘレナ・ボナム・カーターが無表情のまま愛情を示すという意外と難しそうな役柄をこなしてて、ああさすがだなあと。

ジュネ作品は『ミックマック』以来かな。毒気は随分減ったけど、おなじみドミニク・ピノンも出てくるし、今回は3Dによる絵物語感がスゴく良くて、3Dにはまだこういう使い方もあるのか、と新鮮でした。天才少年も本質は少年であるということを貫く視点が優しいです。

↓以下、ネタバレ含む。








章の始まりの飛び出す絵本とか、空想を吹き出しで表現したときとか、監督本人が3Dで観てほしいと言っていた通り3D効果が面白いです。飛び出し具合がかなりの深度なので立体感が凄く、使いどころもユニーク。こういう既存の技術を新たな手法を見せてくれる作品は良いですね。

T.S.君は片田舎にそぐわない頭脳明晰な少年です。受賞に父親を騙ったり、周りには色々と気を使った発言をしたり、人との接し方も心得ている。でも双子の弟を目の前で失った悲しみをどう処理したらいいかは分からないんですね。その結果「自分が悪いのだ」という罪の意識を感じる方向へ行ってしまう。

スズメは葉の隙間が多い松の葉では守れない、という話が出てきます。これは論理的な帰結ではありますが、T.S.君の頭でっかちな点を象徴していますね。でも旅をするなかで、例え根本的な解決にはならなくても色々教えてくれたり気遣ったりしてくれる人がいるということを知ります。しかも子供扱いしないんですね。一方で授賞式では、小さい子供が受賞者ということで大人たちが群がり、スピーチで弟とのいきさつを話しても聞いてる人は可哀相に、という他人事。そんな興味本意で群がる大人やお涙頂戴を狙うテレビに対して戸惑う彼を救うのは、うちに帰ろうと言う母親であり、しつこい番組ホストの男をぶん殴って家族を救う父親なのです。松の葉でスズメは守れなくても、守るという意思が大事なこともある、ということを知るわけですね。

一人で考え結論を出そうとするだけでは解けない問題があることを認識したT.S.君。解決できない悲しみはあるけども、悲しみを共有することはできると示した家族。そしてT.S.君は新たな家族のためにその才能を発揮する。あまりベタベタしないハートウォーミングが心地よいです。

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/856-c3700b9d
トラックバック
back-to-top