2014
11.27

虚と実と未知。『楽園追放 Expelled from Paradise』感想。

rakuen_tsuihou
2014年 日本 / 監督:水島精二

あらすじ
アンジェラはまだ16だから!(サバ読み)



人類が肉体に囚われず生きる電脳世界ディーヴァ。そこに現れたハッカー、フロンティアセッターを追うためアンジェラは肉体を得て現実世界に降臨する。『魔法少女まどか☆マギカ』虚淵玄脚本、『機動戦士ガンダム00』水島精二監督によるSFアニメ。これは堂々とSFを名乗ってよいですね。

冒頭から電脳ワードをガンガン使って釘付けにし、派手なチェイスとおっぱいまで堪能させ、戦闘ロボットまで投入しての序盤はノリノリ。その後仮想現実と実世界との差異を描くところはかなり失速して心配になるものの、中盤のフロンティアセッターの登場から俄然面白くなり、終盤はまたもノリノリ。戦闘ロボットの描き方から使い方までね、さすが分かってんなー!と。

ヒロインのアンジェラがいかにもな衣装ながらそれがイイ。現実世界に対する苛立ち、仕事に対する野心でツンケンしっぱなしの彼女が地上の協力者ディンゴと旅をし戦いながら真実に直面する、というある種の価値観の拡がりの話でありながら、善悪では語れない選択の物語。しかも揺れるおっぱい、バイクのシートにまたがった尻、と健康的エロ要素も忘れない。肉体を16歳相当にしたため余計なラブロマンスも入れずに済んでるというのは結構デカいと思います。まあ16歳であの悩殺バディはどうなんだという気もしますが(ホメてます)。

虚淵脚本は台詞が多いけど今作は前半は特にちょっと喋りすぎの気がしてて、もうちょっと演出で語らせればいいのにと思ってたけど、でもその喋りが結構大事になったりするんですね。人間の感情の説明が辞書的ではなくコンピュータの立場での理解を言語化しているのもユニーク。逆に喋らずに語るところもあったりして。

新たな友情と旅立ちの物語に繋がるのもイイ。どんな捻りがあるかと思いきや意外と王道ですが、それが却って好印象だし、どこか懐かしさも感じられて良いです。

↓以下、ネタバレ含む。








中盤までは話の展開にさほど新鮮味もないですが、その分アクションは魅せてくれます。戦闘ロボットの球体から変形するというデザインがかなり良くてアガるのに、序盤であっさり退場したときにはかなりガッカリしました。そのぶん終盤さらにパワーアップした新型で登場というのがね、もう「フォォォォ!」ですよ。

序盤以降もギミック満載で行くのかと思いきやアナログ世界へ、というギャップは良いんですが、さほど目新しくもないことをちょっと喋りすぎててクールさや味わいや緊張感なんかに欠ける気がします。現実での重力、空腹、疲労、病気といった現象にアンジェラが戸惑う様はなるほどとは思うんですが。臭いについての言及があれば完璧だったかな。電脳世界に比べて嗅覚への刺激って結構ある気がするんですよ。まあその分味覚への刺激が出てくるのは良いですね。うどんに七味で表情が変わるのには「だろー?」って思っちゃう。サンドワームのバーベキューが結構旨そうです。

ともあれフロンティアセッターは抜群に良いですね。インターフェイスのデザインも『WALL・E』とか『ショート・サーキット』を彷彿とさせる親近感だし、自我を持つに至ったAIが歌の良さを「解析」してアレンジやセッションまで行うのが楽しいし、メモリの消費やプロセッサの負荷で感情を表現するのも理にかなってて不自然じゃないです。そして人類の敵ではなく一緒に旅をしたい仲間として、人類を導く知的生命体ではなく共に歩こうとする友人として描かれるんですね。それがすごく好き。アンジェラに向けた「宇宙へ旅立ちませんか!」の台詞には震えます。

サイバー世界否定、現実世界礼賛という単純な話ではないです。主役二人は過去は全く語られない代わりに価値観をハッキリ示し、そこに第3の可能性を示すという構図であり、善悪の戦いじゃないというのがイイ。楽園を否定はしないけど、オンラインじゃないとなにも出来ないそこは思ったより窮屈だよ、と言うんですね。そして個々の歴史が語られないぶんフロンティアセッターが100年以上準備を続けていた、というのが際立ちます。アンジェラが魅力的な第3の選択を蹴って地に足をつける選択も熱い。そしてツンツンしてばかりだったアンジェラが楽園から追放されても最後は車中で笑顔を見せるラスト。ギミックはクールだけど生き様の描き方がホットです。

ところでフロンティアセッターの旅立ちのシーンでは「お前が歌うんかい!」と思いました。


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