2014
11.06

ヤツこそは絶対的ジャスティス!『イコライザー』感想。

The_Equalizer
The Equalizer / 2014年 アメリカ / 監督:アントワン・フークア

あらすじ
ホームセンターは戦場だ。



ホームセンターで働くマッコールが行きつけのダイナーで知り合った娼婦の少女テリーを救うため立ち上がるという、『トレーニングデイ』の主演デンゼル・ワシントンと監督アントワン・フークアによるサスペンス・アクション。うああああああ最高だ!超カッコいい!

「実は強かったヤツが孤独に戦う話」なんですが、こういうの大好きなので怒濤の強さを見せるデンゼル・ワシントンにシビれまくりですよ。追い詰められて増す不穏さと、それとは逆に高まる期待感に力入りっぱなし。ガタイはいいけど特にマッチョというわけでもないのにそれが十二分に強そうに見える、かつ思索的な賢者めいた趣も同居しているというデンゼルの魅力が最大限に発揮されてて、必殺仕事人的なストーリー展開と相まって、もうフークア最高。

しかもそれだけではなく、滑らかに滑るようなカメラワークの心地よさ、全ての仕事を映したりせず余計な描写は省略する潔さ、盛り上げ方が絶妙な音楽などが素晴らしい。冗長に感じかねない主人公マッコールの描写や人間ドラマの部分が、いかんともしがたい背景や天誅に至る過程として説得力を持たせています。ホームセンターが武器庫となり、さらには雨降る荒野の決闘場へと変わるこのケレン味!そして圧倒的恐怖を叩きのめす絶対的ジャスティス!ヒーローでありナイトの誕生に震えます。それに見合う敵役もスゴくイイ。

どれくらい面白かったかというと、デンゼル・ワシントンがカッコよすぎて予告で言ってた「19秒で倒す」というのが全く関係なかったなんてもうどうでもいいくらい!そしてあろうことかクロエが出てることを途中で忘れかけたくらい。このおれが!クロエよりデンゼルだと!なんてこった!

実はそれほどアクションは多くないのにすげーアクション映画を観た!という気分になっちゃうところもスゴい。ビル・プルマンやメリッサ・レオ登場にちょっと驚きだし、マンディの美しさと怯えっぷりも良いです。脚本も演出も役者も台詞も音楽も最高。

↓以下、ネタバレ含む。








主人公マッコールの素性はハッキリとは語られず、元CIAの凄腕、奥さんを亡くしている、死んだことになってる、くらいしか分からない。でも他に説明や回想がなくてもこれで十分なんですよ。同僚の警備員試験のためにダイエットを手伝ったりアリーナのことを気遣ったり、弱い立場の人には親身になる良い人であるというのが描かれてるし、台所や洗面所の掃除、ダイナーでのナプキンやスプーンの並べ直しなどで、整理整頓が好きなのも分かる。頭は綺麗に剃るしスニーカーはちゃんと汚れを落とす。キッチリしてます。一方で不正警官は容赦なく叩き潰し「正しいことをしろ」と諭す。こうして見ると正義感があって、なおかつ整理するのが好きなんだなって思うんですね。だから社会からはみ出した悪党は許せない。Equalizerは「等しくする者」という意味であり、釣り合いを取ろうとするのもこの性格ゆえってことでしょう。でも最初は別に仕事人でも何でもなくて、ごく普通の常識人。マフィアのオフィスを出ようとしてドアをバタバタ開け閉めするのは常識と正義感の狭間での葛藤だろうし、元CIAの仲間に「許可をもらいに」来るのも、人殺しは許されることではないという意識があるからでしょう。基本銃を使わないのもそれが殺しのためだけの道具だからかもしれません(日用品では殺すけど)。それでも「自分なら救えるかもしれない」と思ったから行動に移る。「大いなる力には大いなる責任が伴う」と認識したわけで、まさにヒーローなんですね。

しかしそのあとは養豚場の豚でも見るような目で悪党どもを冷淡に葬っていくという鬼畜っぷり。マフィアの机にあるドクロの置き物を最初は揃えて並べただけだったのが、交渉決裂後はそのドクロを殺す相手に向けて明確に目標を定める。相手が死ぬタイミングを見計らって言葉責めまでする。その後もほとんど無敵、冷酷かつ冷静。人質を取られたらヤバいと思うでしょ?誘い出すから大丈夫。撃たれてヤバいと思うでしょ?焼いて塞ぐから大丈夫。テディを倒して去ったあとのシーンがいきなり3日後のモスクワで、まさか本当に壊滅させるのって思うでしょ?させるんです。半端じゃあない。拳銃を一瞬で奪い取るのとかどうやってるんだって驚きます。それでもどこかでピンチに陥るんじゃないかとハラハラさせる。しかしそんな不安を払拭するように悪を根こそぎ倒していく。最後のテディに対しては手足を一本ずつ奪っていくというこれ以上ない天誅っぷり。最近じゃアメコミにもここまで無敵なヒーローはいないですよ。

何を映して何を省略するかも良く選ばれてて、ヒーローが証拠残さないようそそくさと去るシーンなど映さないし、なんなら殺しのシーンさえ省略して使用済みのハンマーを売り場に戻すだけで語る(戻すんかい!とは思いますが)。かと思えばダイナーでのアリーナとの会話シーンは何度もじっくり描いたり、炎をバックに歩き去るシーンは豪快かつ「もっと急いで!」っていうくらいゆっくり見せる。ホームセンターの戦いなんて音楽と共にスローで現れたり、雨のなかでの決闘かましたり、縛り首に串刺しまで出てきてほとんど西部劇ですよ。本筋関係ないけど工場のおばちゃんたちに退職金を払うシーンもイイ。

悪役テディも最高です。暴力よりもその前段階の言葉による怖さ、立場をハッキリさせ恐怖で支配するというのが実に堂々たる悪。激昂もしないが躊躇もない強烈なヴィランです。椅子に寄りかかった態勢からカメラがぐるんと反転するシーンなどは、テディが街を覆い尽くす邪悪な存在だというのを視覚的に表していて凄い。なぜか悪徳警官がわんさか出てくるのが、正義が信用できない街だからこそマッコールは立ち上がったのだ、というふうにも取れますね。デンゼルが『トレーニングデイ』ではその悪徳警官だったというのはちょっと面白いです。

あと台詞回しがいちいちイイんですよ。「老人と海」をネタにしたアリーナとの会話とか、騎士の話を自分の世界に当てはめて実情を仄めかすところとか。アリーナが「読書が好きそうな名前かと思った、ロバートとか」って言ったら実は本当にロバートだったってのもイイですね。テディがマッコールについて「糸屑か瓶の蓋のようなものだ」と言うのに対して同じ言葉を使って返す舌戦もイカしてます。また特に前半、並行に撮った壁とかタイヤとか作業場のカーテンとか、変な角度からどうってことないもののどアップで始まるシーンが多いんですが、そこに日常の風景ながらどこか落ち着かない感じがあって、マッコールと平穏な日常との間の違和感として入ってきますね。滑らかなストリングスが奏でる旋律の後ろで、ダーティな音や打撃音が鳴っている音楽も効いています。こういった演出に気付くと、一見退屈そうな前半が実はとてもドラマティックなことが分かります。

しょっちゅう本を読んでるマッコールですが、本と言えば最後に読んでるのが「インビジブルマン」=透明人間で、これが偽の素性を持ち後顧の憂いなく悪党に挑めるマッコールと重なります。テディは最後に「お前は何者だ(Who are you?)」と叫び、これは最初に殺されるスラヴィも同じ台詞を吐いて死んでいきます。悪党にとって利害関係もない者を断罪するような奴は理解できないのです。悪党に理解できない概念、それこそが正義です。そして陽の当たる場所へと解放されたクロエの笑顔を見、広大なる海を見ながら自分の生まれた意味を知ったマッコール。まさに冒頭の「人生において重要な日は、生まれた日と生まれた意味を知る日」というマーク・トウェインの言葉通り。ラストは人助けサイトまで開いて、困っている人が「自分で話を紡ぐ」ことが出来るようにしようとする。街の守護神、ボストンのスイーパーの誕生です。ホームセンターからシティハンターへ。これは強烈に続編希望ですよ。

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