2014
10.15

肌の下の本質。『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』感想。

Under_the_Skin
Under the Skin / 2013年 イギリス / ジョナサン・グレイザー

あらすじ
シュボッ!



スカーレット・ヨハンソンが男たちを誘惑する妖艶な何者かに扮し、初のフルヌードにも挑んだ異色スリラー。原作はミッシェル・フェイバーの同名小説。主演がスカーレット・ヨハンソンでこの副題とくれば「アレみたいな感じか」と思うところですが、これが全然違います。

冒頭からして何を映しているのかさっぱり分からない。精神にくる音が鳴り続けるばかり。スカヨハが車で男を引っかけているように見えるけど何かおかしい。ドキュメンタリーかアート系かと言わんばかりに説明台詞もナレーションも一切なしで、何が行われているのかなかなかハッキリしない。観る者はなすすべもなく傍観するしかありません。そんな中でやがてスカヨハの変化に気付き、その結末を見届けることになります。

マイノリティがなるべく他人と交わらないよう慎重に行動するなか、既存からの変化を試みるスカヨハ。スコットランドを舞台に独立投票に関する話を絡めるのもそういうことなのでしょう。キューブリックを思わせる独特な映像と間に翻弄されます。そしてスカヨハが披露するフルヌード、その肉感的な裸体はむしろ人間的で、その本質との対比を感じさせます。

観た後は不思議で不穏な余韻が続き、個人の考察を余儀なくされる。これはある意味凄い。あらすじとか知らずに観た方が驚きがあっていいかも。ただ確実に観る人を選ぶので、スカヨハおっぱいだけを目当てに観るとポカーンとします。

↓以下、ネタバレ含む。








しかし『種の捕食』なんてサブタイが付いてるからてっきり『スピーシーズ 種の起源』みたいなエロバカ娯楽SFかと思ったら全然違うんで面食らいます。あと海辺に取り残される赤ちゃん、あれは胸が張り裂けそうなほどキツい。冷徹な視点を感じます。

主人公(名前さえ分からないのでスカヨハと呼びます)はどうやら人類を捕食しているエイリアン、らしいです。男性を一人ずつ自分達の空間に連れ込み捕らえて中身を吸い出してる。その仕組みは不明。男たちは服を脱ぐので余計なものもなくちょうどいい。残るのは皮だけ。 複数人は相手にせず、身寄りや知り合いが近くにいない者だけを選ぶという慎重さ。誘うだけでなく溺れかけた者にはとどめを刺して運んだりもする。4人くらいはいるらしい皮のツナギを着たライダーは後始末や見た目のチェックの役割か。

こうして振り返っても捕食の理由とか彼らの目的などは結局分かりません。でもそこは重要ではないんですね。異質な世界で生きる者が新たな意識に目覚め、それに近付こうとすることを描いてるからです。生きるということ、死ぬということ、美しさ、快楽。認識したことで世界は変わって見えます。でも肌の下にある本来の自分が変わるわけではない。

スカヨハが新たな意識に気付くのが顔面奇形の男を連れてきた時ですね。男を沈めたあとにガラスに映る自分を見てなぜか男を助けたスカヨハ。自分達と同じようにひっそりと生きる男に同情したのか、美醜の違いに何かを思ったのか。冒頭の女性の衣服を脱がす際に手にまとわりついてきた蟻が示す生、高波にさらわれ姿を消す親子が示す死、親子を助けようとして意識を失った男の命を奪うスカヨハ。奇形の男を救ったのは生と死を見てきた彼女が何かを感じたからでしょう。そこからスカヨハはおかしくなっていき、補食行動の道具である車を降り、ケーキを食べようとしたり(吐いてしまうけど)自分の体を鏡で隅々まで見たり、セックスしようとしたり(これは構造的に欠陥でもあったのか)、どうも人間のように行動したいと思っているようです。この性交に挑むシーンで、それまで不快音を掻き鳴らすだけだった音楽に僅かにメロディが混じるんですね。でもそのメロディは不安定で若干音を外したまま、結局はうまくいかないのです。

捕らえた人が液体か固体かもよく分からない空間で瞬時にシュボッ!って吸われるシーンはビビります。皮がヒラヒラ。皮の下の肉体はドロドロになってどこかへ流れていきます。対してスカヨハの皮の下は男に乱暴されて無惨にもさらけ出される。火を付けられ煙となり、これまたどこかへ漂っていきます。地球人も宇宙人も等しく肌の下をむき出して消えていく。最初の方で声をかけた人々の英語が訛ってて何語を話してるか分からなかったんですが、そんな差異も一皮剥けば大した違いはない。変化を求めても本来の自分は変わらなかったけど、死ねば皆同じく無に帰するのです。


アンダー・ザ・スキン (BOOK PLUS)アンダー・ザ・スキン (BOOK PLUS)
(2001/12)
ミッシェル フェイバー

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