2014
09.29

少女は歌いながら、夢を見る。『舞妓はレディ』感想。

maiko_wa_lady
2014年 日本 / 監督:周防正行

あらすじ
舞妓はぁぁぁぁん!



舞妓に憧れて京都の花街、下八軒にやって来た春子を一人前の舞妓にするべく言語学者が手助けするミュージカル・ドラマ。構造的に『マイ・フェア・レディ』に似てる上にタイトルがダジャレ感満載なのもあって「和風ミュージカルねえ……」と若干ナメてましたが、これは良いです。古典的なシンデレラストーリー+αを京都を舞台とした和の世界で、しかもミュージカルで描ききってます。そこまで大きな事件が起きるわけでもないんだけど、春子の人との関わりや成長の過程を丁寧に重ねていくのが心に染み込んでいくので、最後はもう色んな場面で泣けてしょうがないんですよ。

ミュージカルシーンは派手にカメラが動かないのもあって、純和風の風景で突然歌い出す不自然さが気になり最初はちょっと馴染めないですが、春子がお茶屋に慣れていくのと一緒に程なく入っていけるようになります。春子役の上白石萌音ちゃんは伸びやかな歌声で十分な歌唱力。津軽弁と鹿児島弁のハイブリッドということですが、イントネーションは近いものがあるのかも。春子の爺さんの津軽弁は津軽出身の僕でさえ一部聞き取れないほどネイティブでしたよ。しかも彼女は本当にこれ以上ないほど田舎娘に見えるので、さすがにこれは舞妓は無理だろうと思わせるのがまた良いです。カメオ的な出演者が多いのも楽しいし、『Shall we ダンス?』好きへのサービスカットがあるのも笑えます。あと高嶋政宏が「胸毛を抜いて吹き散らかす」という胸毛ファンには見逃せないシーンもあるので注目だ!なんだ胸毛ファンって。しかも連れがジローラモなので濃さ倍増です。

楽曲はスタンダードなミュージカル・ナンバーを意識した感じのキャッチーでゴージャスなものが多く、映像が和で音楽が洋というギャップに別世界感がありますね。同じ曲が最初と最後で違う使われ方をするのも効いてるし、何より歌が持つ力というものを感じられます。気難しそうな躍りの師匠まで陽気に踊り出したときは「おぉふ」ってなったけど。テーマ曲の「まーいこーはレディ~♪」は脳内で無限リピートすること必至。観終わったあととてもハッピーな気分になれます。

ちなみにチョイ役で出てくる鳴物の師匠役の彦摩呂が、ものすごくジョン・グッドマンに見えるのがたまらん。

hikomaro

↓以下、ネタバレ含む。






言葉の矯正や所作の学習により田舎者の女性が一人前の淑女になるという点でオードリー・ヘップバーンの『マイ・フェア・レディ』と通じるわけですが、着地点が恋愛話となる『マイ・フェア・レディ』とはずいぶん異なり、本作はあくまでも春子の成長が主眼です。先生への淡い恋心も描かれますが、最後に長谷川博己演じる先生をしれっと騙すところなんてそら恐ろしいくらいです。イントネーションをモニターに波形で示す演出は『マイ・フェア・レディ』にも出てきますが、これは本作の方が使い方としては上手いですね。あれだけギザギザしていた春子の発音がほぼ完璧に滑らかな波線を描くのには感動します。京都の雨は~という歌もスペインの平野に~という歌を引用してるんですね。

単に少女の成長を描くだけではなく、舞妓・芸妓は水商売である、というのもちゃんと言及しているのは良いです。「舞妓はアイドルだ」というセリフも出てきますが、AKBグループの松井珠理奈や武藤十夢がバイトの舞妓役というキャスティングがそれを分かりやすく表現しています。要は舞妓は祇園の象徴的な存在となってるはいるものの、そこはあくまで旦那衆が遊ぶ花街であり、伝統と格式があっても水物であるという現実は見据えてるんですね。濱田岳演じるお茶屋の青年がその点で良いアクセントになってます。それだけに春子が舞妓になった時には少し複雑な思いを抱きますが(春子もそのうちしゃちほことかやるのか……みたいな)、そこはミュージカルという形式と京都独特のはんなりした雰囲気で薄まっており、あくまで努力をして成長するという十代特有の輝きに話を振っているので、さほど重さは感じないバランスになっています。大人の駆け引きは田畑智子や草刈民代の姉さんがたが担ってるので役割分担になってるしね。

おおきに、すんまへん、よろしゅうおたの申します、という人とのコミュニケーションで重要な3語を繰り返し修練する姿に見守る気持ちが膨らむし、遂にお座敷デビューとなった春子のお店出しの準備を誰も言葉を発さず真摯に行うシーンは、高揚感に緊張感が混ざったような感じでイイです。初のお座敷を見事に勤め上げる姿は涙なくして観れないくらいに入れ込んでしまいますよ。春子が抱えていた母に関する秘密の明かされ方がまた「皆知ってた」「大好きな姉さんだった」とかね、泣けます。春子のことも皆大好きという気持ちが込もっちゃってますからね。富司純子のおかみさんなんて最初は追い返そうとしてたのに今は春子が可愛くて仕方ない感じ。そう言えば若い頃のおかみさん可愛いなと思ったら大原櫻子でした。

そしてそんな思いを周囲に抱かせてしまう上白石萌音ちゃんの魅力。最初にテーマ曲が流れるときは下八軒に来たばかりでこれからどうなるのかという感じだったのが、ラストのテーマ曲では舞妓として成長した姿で華麗にのびのび踊る。「お化け」という節分で仮装する風習を取り込んだことで、色とりどりのゴージャスさにも繋がっており、フィナーレらしい大団円となるわけです。あー京都行きたいなー。


映画「舞妓はレディ」 ミュージカル・ソングス&サウンドトラック・コレクション映画「舞妓はレディ」 ミュージカル・ソングス&サウンドトラック・コレクション
(2014/09/10)
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