2014
09.17

影を照らす光を求めて。『イン・ザ・ヒーロー』感想。

in_the_hero
2014年 日本 / 監督:武正晴

あらすじ
中の人はいるのです。



特撮ヒーローものでスーツアクターを務めるベテランの本城。生意気な新人、一ノ瀬の面倒を見たりする中、大きなチャンスが本城に訪れるが……というお話。唐沢寿明がヒーローの中の人として『20世紀少年』以来の映画主演。夢を諦めない男ものですね。その点ではヒーロースーツの外と中という、光と影がとても分かりやすい題材です。特撮ヒーローの裏側を見せるお仕事映画でもあります。色々と滾るものがあるし、感動的なのも確かです。

ただ、前半はありきたりな人物説明と間延びした演出で非常に退屈。冒頭の特撮ファンにはたまらない始まり方は良いと思うし、新人俳優に説明する体でスーツアクターの現場を解説してるのもまあ分かるんですけど。あと本城が実はスゴい人というのがなかなか描かれないので、単に経験長いだけの礼儀にうるさい人かと思っちゃうんですよ。ブルース・リーに憧れてずっと端役やってるイタい人かな、そんな人が夢を語ってもなーとか思って引いてしまう。実際は全然違う、というのが分かる中盤以降は面白くなってきますが。

元ライダーマンの唐沢寿明のアクションのキレは見事です。元仮面ライダーフォーゼの福士蒼汰と並ぶと新旧ライダーの共演というメタな観点もあったり、元フォーゼがヒーローものをナメてる役だったりというのは面白い。寺島進の出オチ感と黒谷友香の威勢のいいオカンも良いです。結婚式のシーンは劇中一番泣けました。娘役はぐっさんともりもり回鍋肉食べてるCMの子かな?吉川晃司の曲も良いです。

個人的には引っ掛かる点が多いですが、人に勇気を与えるテーマを描いたものとしては悪くないと思います。あとサプライズ・ゲストには笑いましたが、ポスターなどで盛大にネタバレしてるので台無しですね。

↓以下、ネタバレ含む。








せっかくベテランと若手という引き立て合いそうな組合せなのに、前半は一ノ瀬がオーディションに受かるまでがメイン、後半は本城が代役に挑む話がメインと、フォーカスがどっちかに寄ってる印象が強すぎて視点がブレてしまう。もっとベテランの悲哀と若手の勢いを対照的にしてもよかったと思うんですけどね。その点はむしろグリーンの人が「才能あふれる若さには敵わない」と言うのが一番現実的だし悲しい。あそこで涙しました。

あとあの題材でハリウッド大作映画ってのはどうにもコケる予感しかしないんですが……タイムスリップする話みたいですがなんでそれが忍者合戦になるのかはよく分かりません。ただこれは日本を舞台にしてアクションも見せられて代役として起用できるという設定が必要な以上しょうがないですかね。代役と言いながらフィニッシュで顔見せちゃったけどカットされないんだろうか。あの監督がね、ノースタント・ノーCGはいいけど撮りたいシーンの説明大雑把すぎだし、安全対策とか全く無視だし、「水の味が分からないヤツは信用できん」とか海原雄山みたいなこと言い出すし、「俺の映画だ」を連呼して自己顕示欲丸出しだし、なんか信用できないんですけど。ハリウッド映画だからスゴいみたいな腰の引けた感じはちょっとなー。そんなアウェイで己を表現するのがいいんだろうけど。

他にも一ノ瀬の態度の悪さが不自然に極端で、それが自分の本心を隠すためだとしても、まだそこまで親しんでない本城に自分の状況を全部説明しちゃうのはどうなんだとか、母親に対して全く恨みとかないの?とか、レストランや飲み屋などで一発エピソードをかました後、まだ同じ場所でシーンが続くってのがとてもかったるいとかあります。

それでもクライマックスのアクションシーンは、舞台を立体的に使う大人数の殺陣が迫力だし、スタッフの画など余計なものを入れず本当にひとつの映画のように見せてたのは良かったです。ハリウッドアクションというよりは日本の時代劇チックですが、日本のアクションスターの生き様を魅せるために日本の伝統的アクションを込めまくるのは正しいと思います。これを本当にワンカットで見せてくれてたら最高だったんだけどなあ。そこに本城が大抜擢されたのも、ちゃんとアクション俳優の事務所HACを立ち上げてるとか、業界では一目も二目も置かれてるとか、そういう積み重ねの結果が反映されたのだ、というのをちゃんと描いていたのは良かったです。あの松方弘樹でさえ駆けつけるくらいだからな。スクリーンに顔と名前を出したいという夢を冒頭で語っているからこそラストの仁王立ちには震えます。そこまで描いていれば、スカウトされた後ロッキーみたいに走り出すのもご愛嬌でしょう。たとえジャリ番と言われても皆で最高のものを作ろうとしている気概も感じられます。

結局本城は「持ってる人」だからあそこまで行けたというのはあるんですけど、それを言うと終わっちゃうんですよ。年を取ってくると日々を生きるのに精一杯で夢を見れない人は多いだろうし、芽が出ないまま頑張り続けるのはとてもしんどい。信じて続けていれば夢は叶う、ということ自体も信じないといけない。そんな壁を乗り越えるための勇気を正面から描いているわけですね。

そして戦隊ヒーローのピンクの真実を知ったとき、人は大人になるんだな……


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