2014
09.09

スカヨハ様にひれ伏そう。『LUCY ルーシー』感想。

lucy
Lucy / 2014年 フランス / 監督:リュック・ベッソン

あらすじ
脳がフル回転します。



台湾で学生をやってる女性ルーシーが、韓国マフィアによって腹に埋められた強力な麻薬のためにとんでもない力を身に付ける、というサイキックSF。

人間はせいぜい脳の10%しか使っていないがそれを100%使えるようになればどうなるか、という「なんとなく科学的に思える」という見地から始まりますが、どう見ても科学的根拠はないです。ないですが、そんなことどうでもいいんですよ。だってこれすげーバカで面白いんだもの。いやバカなんじゃあない、物凄いハッタリをかましてそれを最後まで貫き通す攻めの映画なんですよ。攻めの方向が間違ってる気もしますが、そのおかげで物語はとんでもない拡がりを持つのです。どう見ても頭悪いのに知的興奮が味わえる、そんな両極端な二面性なんてそうそうお目にかかれるものじゃないですよ。宇宙の真理をヤクで理解するとか、超アカデミックな話の横でドンパチするとか、こんなのはもうベッソンにしか作れない、という要素が満載。

主演はスカーレット・ヨハンソンですが、ビビる女子大生から一変して超然とした人物になる様が素晴らしいです。勿論どアップの長回しでも全く問題ない美貌や、『アベンジャーズ』他でも魅せたアクションもあり。何より脳の活用が30%、50%とカウントアップしていく(このダサい演出も逆にイイ)につれどんどん人間離れした能力を身に付けていくその神々しさですよ。そんなオーラというか毒気というかに当てられて、もう「スカヨハ様」と呼びたくなりますよ。ほら、星空を見上げて自分の小ささを痛感するとかあるじゃないですか、あの気分ですよ。スカヨハ様の前では僕らは虫けらも同然なんですよ。でもそんな虫けらの僕らにスカヨハ様は知識というお宝を授けてくださるのですよ。なんという多幸感!『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシクもルーシーを狙うマフィアのボスとして十分な存在感を発揮し、モーガン・フリーマンもいい具合に重しとなってます。

冒頭の緑色の細胞が分裂していく映像に「増殖するメトロイドみたい」とちょっとワクワクしちゃった時点で僕の負けでしたね。常識とか論理性とかを超えてむしろ哲学的ですらあるし、妥協を知らない突き抜け加減はそういうハッタリ空想科学が好きな層にはご馳走ですよ。まあ「頭悪い」と言われたら何も言い返せないんですが……

↓以下、ネタバレ含む。








役者陣の演技と存在感に頼ってキャラ造形を省略する、という意味では抜群のキャスティングですね。スカヨハ様なんて手をスッて動かせば物浮かせたり人操ったり、もはやジェダイマスターです。荒々しく車を飛ばしてるにも関わらずあれほど「絶対事故らない」という安心感があるカーチェイスは初めて見ましたよ。あの刑事じゃなくても「一緒に来るか」と聞かれれば当然行くでしょう。「思い出に」などと言われた日には涙流しながら付き従いますよ。スカヨハ様マジ神だよ。ひれ伏すよ。……と思わせるのがスゴい。そもそもルーシーが本当に学生なのかさえこっちは知らないですからね。でも別に問題ないんですよ、超人になった時点で普通だった頃には戻れないという話だから。腹切られながら母親と電話するシーン、あれが人間としての最後の人間らしい描写なわけですね。

チェ・ミンシクだって背景はよく分からないけど、悪そうな奴らのボスとして出てくるだけで最凶の組織と分かるし、自らガンガン殺すことで危ない奴だというのも分かるし、手を洗うのに洗面所なんか使わないというぞんざいさでラスボスなことまで示すわけですよ。英語を一切喋らないというのも貫いてる感じでイイです。あとモーガン・フリーマンもね、あれだ、いつも通りだ。

そりゃ最初の方の自然の風景や動物を差し挟む演出は「えっ」と思いますよ。いや言いたいことは分かるけど、チーターに食われる画とかね、どうなのそれって。あとスゴい速さでキーボード打ちますが、パソコン自体のスペックが上がるわけではないのであんなに画面がチャカチャカ出たり消えたりしないだろうとか。神々しかったスカヨハ様の顔が突然半分崩れたりとか。電波に干渉できるとか、姿を変えるとか、物質を変換するとかもう何でもありかと。まあ色々思いますけど、でも脳の活性化というのはそういうことなんだ、で済ませちゃってるのが潔いんですよ。そもそも超能力ものはそういう人知を超えた力を描いてこそだし、逆に今度は何が出来るようになるんだ、というので引っ張るわけです。ルーシーというのが最初に発見された人類の名前と同じというのも、こじつけではあるけどきっちりハマる感じがいいですよ。超越しすぎてチートだけど。

ベッソンによるスタッフへのメモによると最初は『レオン』、中盤は『インセプション』、最後は『2001年宇宙の旅』のイメージで、とあったらしいです。うん、まあ、なるほど……なるほどとしか言えませんが。ラストは同じスカヨハ様の『her 世界でひとつの彼女』に通じるものがありますが、個人的には『NIGHT HEAD』『AKIRA』『マトリックス』『GODZILLA ゴジラ』って感じでしたけどね。ゴジラといっても放射熱線を吐く場面だけですけどね。あれは最高にトチ狂った表現でグルービーでしたよ。もうね、バカと天才は紙一重なんですよ。だからベッソンは天才と言っていいのかもしれないな。


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