2014
09.04

大事な何かを盗まれる。『ルパン三世』感想。

lupin_the_3rd
2014年 日本 / 監督:北村龍平

あらすじ
どこかの窃盗団の話。



今更説明不要の天下の大泥棒、ルパン三世の実写化。世界一のセキュリティを謳う金庫から秘宝クリムゾンハート・オブ・クレオパトラを盗み出すためルパンたちが大暴れします。

みんな大好きルパンですよ。アニメは通常TV版もスペシャルも大体観てるし、映画も公開されたものは全部観てます。最近では『次元大介の墓標』というルパン本来の魅力をパーフェクトに描いた傑作もありましたね。あ、すいません最初の実写版『念力珍作戦』は観てなかった。

長年続く作品だけに、多くの人が「ルパン三世とはこういうものだ」というイメージを個々に持っていることでしょう。ルパン三世に小栗旬、次元大介に玉山鉄二、石川五ェ門に綾野剛、峰不二子に黒木メイサ、銭形警部に浅野忠信、というキャストが事前に発表された時は、有名どころを揃えつつも「原作とイメージが違う」という声は当然多かったようだし。でもモンキー・パンチの原作は別格として、そもそも様々な人の手により多種多様なルパン三世が作られてきたわけで、それだけ話の広げ方に自由度を持つ作品と言えるんですよ。だから僕は「いろんなルパンがあっていい」というスタンスです。

で、今回の『ルパン三世』です。なにやら観る前から酷評が目についたので、かなりハードル下げて観ましたよ。なんならルパンに似た何かだと思って観てました。キャストは思いのほか良い印象です。渋カッコいい玉山次元、出てくるたびにブフッて笑える綾野五ェ門、カップラーメンすする姿が様になる浅野とっつぁんは良かったです。小栗ルパンも軽妙な雰囲気は悪くないし、メイサ不二子も妖艶さはまあ良しとしましょう。ボディにダイナマイトさが足りないけど不二子の本質はそこじゃないしね。『オンリー・ゴッド』のカラオケ神まで出てたのは驚きました。

ところがですよ。それ以外は設定も脚本も演出も音楽も全部ダメ。どれだけダメかと言えば、観終わったあとあまりの酷さに我慢できずに酒を飲みに行ってしまったくらいです。こんなことは初めてですよ。これは飲まずにいられない。ルパンとして見なさないようにしてても観ててイライラ、その後にこれがルパンだったと思い返すとなおさら怒りが収まりません。僕が考えるルパンの味は「スマート」「トリック」「ハードボイルド」なんですが、どれひとつとしてなかった。「いろんなルパンがあっていい」というスタンスだと言いましたが、全く擁護する気になれない唯一の例外となってしまいました。『ガッチャマン』の時のようにおちゃらけて書くほどの余裕もないので「観るの楽しみ」とか「面白かった」という方はどうかそっとブラウザを閉じてくださいね。

↓以下、ネタバレ含む。長い上に文句しか言ってません。








改めて言っておきますが、役者の演技にはそれほど不満はありません。不満は演出と設定にあります。ルパンがよく分からん窃盗団みたいなのに所属してるという時点で「??」となります。ルパンファミリーは別として、必要に応じて誰かと手を組むことはあっても本来一匹狼であるルパンが組織の一員でしかないという設定にまず愕然。ルパンに関して言えば変装が酷いです。プレスリーみたいな超目立つ格好で出てきたり、とっつぁんに化けるのはいいけど正体見せるのが柱を越えたら小栗顔になってるというものだったり。せめて顔ベリッてやろうよ。ラスト敵地に武力突入ってのもスマートさの欠片もないし、最後に脱出方法を用意してないというのもなあ。ルパンだぞ?

次元は組織の一員というよりはボスの用心棒みたいな感じなんですかね。なぜか不二子に対しては「あの女は信用できない」の一点張りの次元が、ほとんど接点のなかったルパンに対しては「馬が合いそうだ」って言われただけですぐに肩を抱くくらいくっつくって何なの?ホモなの?世界一のガンマンなのに早撃ちらしきシーンもなく、ラストの敵との一騎討ちも落ちてる銃の引き金を撃ってそれで狙撃するというもので、なぜまともに勝負させないのか。次元だぞ?

次元に限らずルパンファミリーの始まりや繋がりを描こうとしたのかもしれませんが、そのあたりの経緯が適当すぎ。なぜルパンは五ェ門のことは知ってたのか、なぜわざわざ日本まで迎えにいくのか。あと車真っ二つにするくらいはしようよ。五ェ門だぞ?不二子もこの組織の一員ですが、不二子なんてルパン以上に周りを利用する女なので、さしたる目的もなく組織に属してるなんてありえない。不二子の兄妹設定もやるなら最後までやれよ。好きな相手のために嘘ついてまで妹名乗るって。不二子だぞ?

とっつぁんはがなってばかりでバカに見えますが、銭形幸一は本来ルパンの裏をかくほどのキレ者ですよ?目的のためにルパンを利用するならまだしも、たきつけてルパンが動くの待ってて気付いたら終わってたとか。そもそも銭形の目的はセキュリティの社長なのかルパンなのかどっちなんだ。あととっつぁんだって暑けりゃコート脱いで小脇に抱えるくらいするよ。

他にも敵の拠点に乗り込む前にみんなしてなんか修行みたいなこと始めたりとか、一体何のノリなんだ、とかね。それに予告状の絵とかフィアット500とか拡声器の埼玉県警とかアニメ版に目配せしてるのは分かりますが、それが『カリオストロの城』関連ばかりなのもかえって鼻につきます。

他にも山ほどあるけど、とりあえず「ルパン三世」としての不満点を挙げました。じゃあこれらを考えないように、つまりオリジナルなクライムアクションとして観たらどうか。売りはアクションだと思うんだけど、この肝心のアクションシーンが誰がどこで何をやってるのかさっぱり分からない。カーチェイスも同様。せっかく役者陣が頑張って動いてるのにどれだけのことをやってるかを分かってあげられなくてポカーンとするしかないんですよ。せっかくの不二子ちゃんのキャットファイトもポカーンです。僕の動体視力が衰えたんですか?でもカット割りが激しくても動きがよく分かる『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』という素晴らしい前例があるんですけどね。

決めのカットがカッコいいと思いきや何度も同じようなカットが出てきてうんざり。音楽がいい感じかと思ったら似たような曲を延々と流してこれまたうんざり。ドラマ部分はやたらアップが多くてくどいし、デ・パルマみたいな画面分割をアクションシーンでやるので視点が定まらない。ルパンにかけてた手錠をとっつぁんが逆にかけられるシーンのもたもたした感じ。爆発に巻き込まれて死んだはずのマイケルが部屋の隅できれいに寝そべってる不自然さ。ラストの4人が並ぶカットは絵になるところなのにセキュリティのおっさんと秘書がその前に立ってて邪魔。その二人が消えたらさっきと同じ構図でまた4人が立ってるという工夫のなさ。最後のタイトルロールもテンポ悪くてカッコ悪いし、せめて役者の名前はもう少し長く映してあげなよ。あとサプライズゲストが出るのはいいけど、あんなに長く何度も映す必要ある?もう、カッコいいと思ってやってるであろうことがことごとく肌に合いません。

話としては若き窃盗団がボスの敵を討つ話、だったはずがその敵が殺す相手を間違ってましたーとなって、今度はお宝を狙いだす。その盗みが復讐のためだとしても何だか釈然としません。あといらない仲間があまりにも多すぎ。余計な人物が増えた結果主役であるはずのルパンファミリーの見せ場が減ってるんですよ。終盤いきなり出てくるプログラマの女、要る?ラスボスは見てるだけで何もしないし、あまつさえ「やるな、会ってみたい」って何言ってんだ?そもそも厳重なセキュリティって要塞みたいにデカい金庫ってこと?『ミッション・インポッシブル』と『エクスペンダブルズ』を足して10で割って薄めたようなクライマックスで、かろうじて保ってた世界観までブチ壊します。

ルパンが「俺の名はルパ~ン三世」と自ら名乗るシーンもないので、あれは本物のルパンじゃないのかもしれません。本名がどうとかワケわからんことも言い出すので、多分別人じゃないですかね。ひょっとして『ルパン三世』だと思ってたこれは『ノレハロン三世』とかなんじゃないかな?

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