2014
08.31

勝利なき解放感。『プロミスト・ランド』感想。

Promised_Land
Promised Land / 2012年 アメリカ / 監督:ガス・ヴァン・サント

あらすじ
ガス買います。



デキる好青年スティーヴが天然ガスを買う会社で成果を上げるため田舎町で必死で権利を買い歩くも、そこに反対派が現れ……というヒューマンドラマ。

シェールガスの掘削は決して安全ではないとする反対派の老教師の言い分がググった程度の田舎者の知識だろうと思いきや、相手がMIT卒の知識人と知って楽なはずの仕事は厄介な案件に。スティーヴ役はマット・デイモンで、脚本にも参加。ジェイソン・ボーンのように腕力で解決するわけにもいかず(そりゃそうだ)なかなか苦労します。

でも環境破壊の話も絡むとは言えさほど説教臭さはないし、環境保護団体アテネの男という伏兵が現れたり、たまたま知り合った町の女性との関係も描いたりと話が転がるので飽きません。登場人物も結構癖のある人が出てきて、田舎の人の朴訥さと無知ゆえの貪欲さが同居してたりとかちょっとした怖さも感じます。スティーヴの相棒スー役の『ファーゴ』のおばちゃん、フランシス・マクドーマンドも絶妙。何より終盤で主人公の価値観がひっくり返る展開に上っ面の環境問題は吹っ飛びます。

でもなー。話としては良いと思うし、あのスピーチには泣けるけど、でもどうにも観てるのがツラかったです。周りに嫌われながらも、会社を信じて悔しさをバネにして熱意と工夫で頑張る社会人、という図式を作りながら、でも正しいこと大事なことって何?というのを突き付けてくるんですよ。世の中綺麗な仕事ばかりじゃないし、ある程度自分も歯車だと分かってる人ほどツラいんじゃなかですかね?……などと思ってしまうくらい、いつの間にか自分と重ねすぎてしまいました。ガス・ヴァン・サント作品は『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』しか観てないけど、観てるとなんだか取り込まれやすい気がします。

↓以下、ネタバレ含む。








町では悪者扱いされ、バーでは殴られ、気になる娘は目の前でライバルに連れていかれる。それでも会社のために必死こいて働き、悪い点は隠したり値段は抑えたりとクリーンじゃないこともやってのし上がって来たスティーヴなだけに、自分もコマにすぎなかったという事実へのショックはあるでしょう。でもありのままを暴露してクビになっても自分には何も益はないのです。相棒のスーも結局は会社側の人間で、電話やメールもおそらく子供宛ばかりではなく、雑貨屋の店主に惹かれるものがありつつも「たかが仕事よ」と割りきってる。それはビジネスとしては当然だと思うし、ラストのスティーヴの行動は大勢に照らせば愚かだとも思うけど、じゃあそのまま続けるのか、というと続けられなかったわけです。どっちに転んでも負け戦なんですよ。そこには社会というのはそういうものだ、という冷徹な視点を感じなくもないです。だから観終わった後、解放感はあっても爽快感は感じないです。

「狂気の沙汰」で場を沸かせて町に溶けこもうとしたりするも、散々歌えないと言いながらスプリングスティーン歌って一気に会場を熱狂させるアテナの男の人心掌握術には適わない。そうやって会社に監視されたり試されたりしてそれでものし上がっていけるかどうか、自身の過去を振り切ってまで間違いかもしれない信念を貫けるかどうか。こうして見せ付けられると何が正しいかなんて分からなくなりますが、ギリギリまで踏ん張りながら悪党になれない選択をしたスティーヴ。これはマット・デイモンの持つ雰囲気だから出来たという気はします。

じゃあ本当にスティ-ヴは負け犬なのか、ビジネスは汚くて当たり前なのか。そこに一縷の希望として光るのがレモネード売りの少女であり、彼女が掲げた看板に偽りなく真っ当に商売しているということがスティ-ヴの指針となるわけです。エンドロールで続く空撮の美しいながらも茫漠と広がるその風景は、先の見えない人生のようでもあります。彼の選択が正しかったかどうかは、今後の彼自身によるのでしょう。


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