2014
08.27

思い出は美しく儚げ。『ホットロード』感想。

hotroad
2014年 日本 / 監督:三木孝浩

あらすじ
誰が悪いのっ?



母親とうまくいかない少女・和希と、暴走族のリーダー格・春山が徐々に心を通わせていくという80年代の少女コミックを、能年玲奈、登坂広臣主演で実写化。原作は未読ですがタイトルくらいは聞いたことあって、意外にも映像化は初らしいです。

いやあ驚いた。まさか能年ちゃんが中学生の役とは。ヤンキー話にしてはやけに健全だし、族の攻防があの程度で済むはずないし、心情をナレーションで語るのも微妙だけど、夜明けのハイウェイとか陽光の照り返す海とか青い空をバックに立つ灯台とか夕陽に浮かぶ江ノ島とか、映像がとてもキレイ。出演者たちがインタビューで再三「空気感」という言葉を使ってたんですが、映像から滲み出る空気感というものは確かにあります。

問題は「なぜ今これなのか?」ってことですね。言っちゃえば普遍的なテーマを持っているからで、人は安らげる居場所を求める、愛する存在が生きる力となる、ということですね。それを描くには情報過多な現代よりも、80年代のネットも携帯もなく人同士が直接ぶつかり合うというシンプルな舞台の方が描きやすかった、というのはあるでしょう。普遍的なテーマを強調したいためか時代性は極力排除されてます。服装や髪型は若干今っぽい方に寄せてるし、当時の曲や雑誌やテレビ番組といったサブカルチャー的アプローチを全く使ってない。それでもバイクとか特攻服とかに80年代の空気感も残しています。クラスメート女子のウザさとかね。ただ、この空気感というのを重視したせいか、結果としてどうにも輪郭がぼやけてるというか、イメージで押しきってる印象。題材にもどうしても少し古さを感じる。でもそれらが味なんだ、と言われればそうかもな、とも思うのですよ。

春山役の登坂正臣って三代目J Soul Brothersのボーカルの人だったのね。よく知りませんが、素晴らしくヤンキー顔なので睨みを効かせるシーンなどはよく映えます。しかしそんな主役を差し置いて鈴木亮平が雰囲気だけなのにやたらカッコいいんですよ。仲間と喧嘩した春山に族のヘッドとは思えない爽やか口調で「誰が悪いのっ?」って諭すように言うのはとても変態仮面とは思えなくて良いです。

↓以下、ネタバレ含む。








和希は正直能年ちゃんに合ってる役でもないと思うけど、じゃあ他に誰が適任かと言われると難しいですね。グレかけながらも透明感を損なわず「凄いキレイなんだよ中身が」と言われても違和感がない人はちょっと思い付かない。橋本愛とか……ダメだ、まんまヤンキーになるのは『あまちゃん』で証明済みだ。そういう意味では能年ちゃんが主演というのは役にとっては良かったでしょう。でも能年ちゃんは笑ったりはにかんだりする役の方がいいです。真剣な顔すると可愛いというより男前になるので。

母親と通じあえない和希の寂しさ、それを埋めてくれる春山という存在。なぜ和希が春山に惹かれるのか正直よく分かりませんが(最初の殴るシーンなんてビンタというより顎の付け根辺り殴ってて相当痛そう)、同じような寂しさを抱える者同士が出会い、人との繋がりを知り、愛してくれる人の存在で死にたくないと思える、ということを描いてるとは思います。ただそれを描くための80年代というのはやはり必然性がないんだよなあ。同様のテーマでも、現代を舞台にしネットを題材としながらも人との繋がりを描いた『ディス/コネクト』のような良作もあるので。

とは言えあの年代の少年少女が持つ危うさとか瞬間的な美しさというのはあるわけで、それを切り取って提示することには成功していると思います。命は大事なんだと先生や母親の彼氏といった大人が言葉で説いても通じないわけで、ぼんやりしたイメージで不安定な思春期を表現するというのも一つの手段だなと思いました。親にむかってお前呼ばわりはいかんなーとも思うけど、木村佳乃の少女返りしちゃった母親のイタさがあるのでしょうがないか。「いらないわけないじゃない」のシーンは不覚にもウルッと来たし。父親とのただひとつの思い出が鈴木君とのものだったというのは驚いたし、最後はきっと春山は死ぬんだろうと思ってたからそこも驚きました。まあね、朝からカニ食ってしかもそれに当たるという展開にも驚きましたけど。そういう意味では予告で観たそのまんまではなく結構意表を突く展開があるので楽しめましたよ。

実際は族の潰しあいなんてあんな頭に包帯巻く程度で済むわけがないし、横浜ナイツの面々は全く強そうに見えないし、タバコも派手メイクもリーゼントもキスシーンさえないのは不自然に健全だけど、これって未来の和希が過去を思い返す話なんですよね。つまり青春の1ページという美化された思い出を儚げに語るということなので、これはこれでありだなと感じます。エンドロールで流れる尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」も良く合ってます。


ホットロード 1 (集英社文庫―コミック版)ホットロード 1 (集英社文庫―コミック版)
(1995/08/18)
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ホットロード 2 (集英社文庫―コミック版)ホットロード 2 (集英社文庫―コミック版)
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