2014
08.05

悪魔の音色、天使の歌。『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』感想。

Paganini
Paganini: The Devil's Violinist / 2013年 ドイツ / 監督:バーナード・ローズ

あらすじ
悪魔が来たりてバイオリン。



あまりの演奏の上手さに「悪魔に魂を売って技術を手に入れた」とまで言われる18世紀に実在したバイオリニスト、ニコロ・パガニーニの生涯を描きます。

女好きでギャンブル好きのだらしなさとは裏腹に、バイオリンを弾かせたら凄まじいパフォーマンスを披露するパガニーニ。あまりにスゴくて、最初のうちは聴く方が付いていけずに冷やかしてしまうほどです。主役のパガニーニを演じるのは、現役のバイオリニストであるデイヴィッド・ギャレット。長髪イケメン、演技は初めてだそうですがそうは見えない、その存在感が良いです。楽曲も素晴らしいですが、何と言っても超絶テクでストラディヴァリウスを弾き倒す演奏シーンは圧巻。さすがリアルな世界的演奏家、この時代にこんなのがいたら確かに悪魔がどうこう言い出す人がいてもおかしくないという超ハイレベル。結構激しく動きながら弾くので「バイオリンに長い髪が絡みそう」とか思ったりするくらい。そんなパガニーニに黄色い声を上げたり中には興奮のあまり卒倒する女性まで出てきて、そのカリスマ性からもリサイタルというよりライブと言う方が相応しいくらいです。

原題は『悪魔のヴァイオリニスト』ですが、本当に悪魔と契約したのかどうかはボカしてますね。これにより変にファンタジー色が強くならず、パガニーニを人間として描くという匙加減として良いです。マネージャーのウルバーニ役であるジャレッド・ハリスが悪魔的紳士という雰囲気抜群なのも効いてます。あとヒロインのシャーロット役、アンドレア・デックがむっちゃ可愛いですよ!しかし興行人の名前がジョン・ワトソンで娘がシャーロットってマジだろうか?舞台もロンドンだし。

そんな当時のロンドンの霧に包まれた怪しさもあって、単なる伝記ものではない雰囲気で盛り上げます。物足りない部分もありますがわりと良いです。

↓以下、ネタバレ含む。








パガニーニの人生を語るという構造上しょうがないんですが、ライブシーンの盛り上がりが物語の山場でもあるので、そこに行き着くまでが少々もどかしいし、ライブ後の展開は失速を感じてしまいます。前半は酒場で演奏するシーンなんかはとても良いし、冒頭の客が盛り上がらない演奏も侘しさを感じて悪くないんですが、それ以外はパガニーニのだらしなさや芸術家故のワガママっぷりばかりで、彼の野心とか苦悩とかがいまいち伝わりません。後半ではライブ後に実はウルバーニにアヘンを吸わされてたり精神的に支配されていたというのが判明しますが、そんな関係性はそこまで全く描かれてないのでいきなりパガニーニが屈服する姿に唐突さを覚えます。ウルバーニの目的も結局は金であるという以外特に見られないのも若干味気ない。終盤はその後の人生を一気に見せる必要もあったでしょうが、いきなりシャーロットの腹が大きいとか、突然自分の曲を楽譜に起こし始めるとか、駆け足感が否めません。狂気というほどのものも見られないし。一番引っかかるのはパガニーニの息子の描かれ方で、誰の子なのかもハッキリしないし、猫可愛がりしてるわりには同時にシャーロットに夢中になってたりして、ちぐはぐな感じがします。

とは言え、ウルバーニという悪魔とシャーロットという天使の対比は効いていますね。シャーロットがステージでパガニーニと共演するシーンは素晴らしく、目線の絡ませ方や歌詞とリンクする感情などで徐々に近付いていく二人の心情が出てると思います。またシャーロットはモテモテのパガニーニに人間性のNGを突き付けてくるあたり、堕落した人間を救う天使のような存在として一貫しています。対するウルバーニは、出会いのシーンに悪魔との契約を思わせる胡散臭さを匂わせ、パガニーニが女性とイチャついてても咎めるでもなくしたいようにさせるという、人間を堕落させる役割を担います。ステージ上に悪魔のような影を見せる演出は客席にはコミカルに映りますが、彼の本質を知っているとヒヤリとする場面です。そしてパガニーニに追い出された後、自宅の窓の外に一瞬映る悪魔の姿。逃れられない悪魔との盟約を感じさせるギリギリのラインです。それでもパガニーニにはシャーロットへの想いがあるので、闇に飲み込まれずに物語は幕を閉じるのです。

ただ他の登場人物がいまいち。新聞記者の女性とかシャーロットの母親とか絡み方が微妙に半端だし。あと女性の権利を守ろう会?みたいな団体が超ウザかったです。そんな中で光るのが、オーケストラのバイオリンの彼。パートも髪型もパガニーニと同じなのに、バイオリンは借りパクされるわステージのパガニーニを見て「勝てる気がしない」の顔になるわで気の毒ですが、最後にパガニーニにバイオリンをあげるという気前の良さがイイです。

でもやはり演奏シーンですね。ヘタすれば地味で退屈なドラマになりそうなところを、魅力的な演奏シーンにより音楽ドラマとして成り立たせている、その点は十分満足。デイヴィッド・ギャレットのクラシックとロックのクロスオーバーアルバムというのも聴いてみたくなります。

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