2014
08.04

愛を求め踊る少年。『リアリティのダンス』感想。

La_danza_de_la_realidad
La danza de la realidad / 2013年 チリ、フランス / 監督:アレハンドロ・ホドロフスキー

あらすじ
ウクライナ商会へようこそ。



共産主義者が弾圧される軍事政権下のチリで、厳しい父と優しい母と暮らすアレハンドロ少年は何を見るのか。『エル・トポ』などで知られるアレハンドロ・ホドロフスキー監督が自身の少年時代を、ときに現実的に、ときに幻想的に描く23年ぶりの監督作。

親の愛を求めて無理強いされる痛みにも耐える息子と、息子に厳しく当たる父の本当の姿が描かれます。と言っても単なるハートウォーミングになるわけはなく、常識の通用しない展開やパワフルな映像に圧倒され、観る者に解釈を求めてきます。怪しい行者やフリークスやペスト患者や独裁政権といったものと接しながら、少年は世界を知り、父親は己を知る。息子だけでなく父の話でもあるのです。今のホドロフスキーが振り返るからこそ見えてくる親の姿ですね。母親は熱心なキリスト教徒で、常に歌いながら喋るというのも象徴的。

R18で観たのでモザイクなしのモロ見えでしたが、男根主義の父親が男根をさらすことで自らの内面をさらけ出すという意味もあるのかなと思います。父親役は『エル・トポ』のフルチン少年を演じたホドロフスキーの息子ブロンティス・ホドロフスキーですが、あれから44年も経ってまたフルチン演技を見せてくれようとは。さすがに拷問シーンの「つまんで電撃」はちょっと笑ったけど超熱演です。

様々な暗喩を使いながら描かれるリアル、そこで踊り踊らされる男とその息子は同じように愛を求めるのです。一見難解そうに思えますが、人と神と家族を描く物語が心に響きます。ちなみにポスターなどの写真ではホドロフスキーが少女の胸をまさぐってるように見えますが、あの子供は男の子なので大丈夫です。ん?たぶん大丈夫です。

↓以下、ネタバレ含む。








母の父親がフルチンで踊りながら酒樽に上り、スポーンと落ちた樽に火が付いて焼け死ぬ、というシーンはさすがに笑いました。コントか。イヤいいんですけど。

強い男であることを息子に強制し「神など信じない」と言う父親は、信じられるのは自分だけ。でもその裏には自分が親に愛されなかったという思いがあり、厳しい父の姿は無意識の仮面なわけですね。暗殺しようとした大統領が馬に愛情を注ぐのを見て殺すことが出来ずに逃げ出し、その結果手が固まって動かなくなりますが、信念より愛情に心動かされるような人物だったわけです。しかし目が覚めたときに自分を救ってくれた小人症の女性は自ら命を絶ち、仕事を与えてくれた老人は息を引き取る。愛情をくれた人々が目の前から消え去る恐怖と、道行く修道士が自分の手に蜘蛛を置いて去ってしまうように善人のように見える人でさえ救ってはくれないという絶望。そんな経緯を経て、自分が家族に対し己の憎む独裁者と同じように振る舞っていたことを認めて、ようやく手が動くようになります。父の仲間の暗殺者が「犬が仮装する世界で生きたくない」と言って自殺するシーンは、ラストの「独裁者の仮装をしていた」と言われる父に繋がるものがあります。

一方で常に歌いながら喋る母親は熱心なキリスト教信者で、最初は息子が自分の父親の生まれ変わりでないと知って錯乱しますが、その父の死を受け入れた後ではどんな不幸や恐怖も覆す存在になります。暗闇を恐れる息子を救うため全身を黒く塗って「闇と同じになればいいのよ」と言える人なわけです。夫の罹ったペストを悪魔と見なし、神に救いを求めますが、奇跡を起こす聖水(宗教用語)というものを本当に聖水(AV用語)で見せるというのがスゴい。あれは度肝を抜かれました。で、本当に治ってしまう。この奇跡は神の愛というよりは母の愛情が起こした奇跡であり、つまり母は絶対的な愛情の象徴として描かれるのです。

時折ホドロフスキー自身が現れて当時の自分に語りかけますが、愛されるために言うことを聞こうとする息子に、愛情はそこにあるんだよと教えてくれる。その視線がとても優しいです。


エル・トポ HDリマスター版 [Blu-ray]エル・トポ HDリマスター版 [Blu-ray]
(2013/09/03)
アレハンドロ・ホドロフスキー、ブロンティス・ホドロフスキー 他

商品詳細を見る

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/812-cb48657b
トラックバック
back-to-top