2014
07.20

選択の自由と生き方の統制。『ダイバージェント』感想。

divergent
Divergent / 2014年 アメリカ / 監督:ニール・バーガー

あらすじ
組分け帽子は出てきません。



近未来のシカゴ、「無欲」「平和」「高潔」「博学」「勇敢」という5つの共同体の何れかに属さなければいけない世界、その適性検査で何れにも当てはまらない者は「ダイバージェント=異端者」として危険視される。ヴェロニカ・ロスのヤングアダルト小説『ダイバージェント 異端者』を映画化。

原作は読んでませんが、ティーン向け人気小説が元ながらイチャコラ度は思ったよりも低め。とは言え人によっては受け付けないでしょうね。僕としてはこういった少し異質な近未来世界での青春ラブストーリー、『ハンガーゲーム』シリーズとか『図書館戦争』なんかもそうですが、意外と嫌いじゃないなというのが分かりました。ちょっと長いなとは思うんだけどそこまで退屈ではないし、それくらい丁寧に描いた分が後で活きてくるってのも悪くないです。どうやら4部作(3部作で最終話が2分割)を予定しているらしく、序盤としての世界観の説明も兼ねてるんでしょう。

主人公トリス役のシャイリーン・ウッドリーはスゴい美人と言うわけではないけど独特な顔立ちの美しさで惹き付けられるものがあります。その点は『ハンガーゲーム』でのジェニファー・ローレンスに似てますね。殴り合ったり撃ち合ったり頑張ってます。ケイト・ウィンスレットの物静かな威圧感は凄まじいし、『ダイ・ハード ラスト・デイ』でのマクレーンの息子や『アウトロー』にも出てたジェイ・コートニーの超ワルそうな感じも良いです。マギーQをもっと出して欲しいところですが今後も出てきそうなのでとりあえず良しとしましょう。

映画としては正直言いたいことは山ほどあります。説明不足だし、設定が活かし切れてないし、首をかしげる箇所は多々あります。恐らく原作では描かれているところを時間的制約で端折ってるんでしょうが、それにしても脚本は粗いです。次回作で補完するにしてももう少し一本の作品として成り立つようにして欲しかったですが、ひとまずは今後色々明かされる展開に期待、ということにしておきます。

↓以下、ネタバレ含む。








5つの派閥に分かれた世界、そこでは家族よりもそのコミュニティの方が重要です。それぞれの特性の枠に当てはめることで制御するという意味合いがあるんですね。この点はそもそも違和感を与える点で、平和のためと言いながら逆に危ういバランスとして描かれます。そこに「異端者」という特殊な属性の者が入ってくると、バランスが崩れてしまう、それ故に異端者の存在が際立つわけです。……という理屈は分かるんですが、派閥に分ければ平和が維持できるというのは随分暴論。その理屈で行くと「博学」は知識を担うという役割で「無欲」は政治を担う役割なんだから、「博学」が「無欲」を倒してまで政権を奪取しようというのはそれこそ世界のバランスを崩すはずで、異端者と変わらないように思うんですが。しかも「無欲」への武力行使に「勇敢」が手を貸す理由もよく分かりません。この辺りは「高潔」が裁く話になるんじゃないの?と思うんですがこの派閥は物語にほとんど絡んで来ないし、農業を担う「平和」に関しては完全に空気です。それぞれに対する抑止力というものがいまいち働いてないんですね。そのために危ういバランスが発生して話が転がるんでしょうけど。

そもそも平和を維持するための5派閥なのに、なぜ「勇敢」上層部は「戦士を育成する」などと言ってるんでしょうか。何と戦うの?平和なんじゃないの?パトロール中に出会った無派閥者たちについて「悪さはしてない」などと言ってたので無派閥は犯罪の温床というのはあるんでしょうが、「勇敢」のランク下位者は追放されて無派閥になるそうで、犯罪の温床である無派閥者を警察組織である「勇敢」がわざわざ作り出しているということになります。その足切りを避けるため必死で頑張ってるトリスたちにとっては理不尽このうえないです。

そのトリスもなぜ「勇敢」を選んだのかがいまいち伝わらず。何となく自由そうで憧れるなあという感じだったんでしょうか。奇声を上げながらパルクールみたいに街を飛び回り、走ってる電車に飛び乗っては飛び降りる無賃乗車の人々に、治安の維持なんて任せて大丈夫なんでしょうか。トリスの兄に至ってはいきなり親とは異なる「博学」を選びますが、後から考えればそれらしい前フリはあったものの、その動機がよく分かりません。そもそも性格診断で「あんたの適正はこの派閥だよー」と言われてもそれを無視して好きなところを選べるというシステムなので、じゃあ性格診断意味なくない?と思ってしまう。異端者を探すという理由があるのかもしれませんが、適性と異なる派閥に行ってその派閥の意志に反する行動をとる者が出てくる方がマズいと思うんですけどね。選んだ派閥は二度と変えられないと言ってるのに、トリスの母などは過去にどうやら変えたことがあるようだし、どうも一貫性に欠けます。異端者についても、なぜ彼らにだけ薬が効かないのか、バランスを崩すからだとしてもなぜ世界を滅ぼす存在とまで恐れられるのかもよく分からず。というか今回の騒ぎで派閥のバランスは既に崩れちゃってるんじゃなかろうか。

というわけで、嫌いじゃないと言いながらそもそもの設定や細かい点を全くホメてませんが、というか完全にdisってますが(他にも山ほどあるけど)、良かった点もあるんですよ。まずトリスとフォーが仲を深めていく過程はなかなか良かったです。観覧車での二人の距離の近付け方とか、フォーが服を脱いで刺青を見せる辺りとか。フォーはツンデレもいいとこですが、トリスとのバランスも合ってますね。あとトリスが母親と一緒に逃げ出す時の「母娘共闘による銃撃戦」というのはあまり観たことないパターンだったので新鮮でした。母役のアシュレイ・ジャッドが美しくて素敵です。また、フォーが撃つときは顔をそむけなければ撃てないとか、ラストにケイト・ウィンスレットが言うことを聞かないので薬で操って止めるとか、冒頭で「無欲」だからと鏡を見ることを禁じられていたトリスが深層心理で見せるのが合わせ鏡の風景だとか、そういう伏線の回収が上手いところもあるんですよ。

なので続編の出来如何によっては遡って評価が上がることもあるかもしれません。やっぱり粗い感じで続いてしまうかもしれないけど。描かれてない部分も多々あるだろうし、その辺りの「シリーズ通してどうか」と言うのもあるとは思うので、とりあえず次も観ますよー。


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