2014
07.19

戦え、覚えろ、強くなれ。 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』感想。(その2)

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Edge of Tomorrow / 2014年 アメリカ / 監督:ダグ・ライマン

あらすじ
終わりのないのが始まり。



滅多にやりませんが、感想の2回目です。前回はこちら。
戦え、覚えろ、強くなれ。 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』感想。(その1)

前回の感想では、原作が好き過ぎたせいか「面白かったけど感触としてはいまいち」みたいに書いたんですが、展開を知った上で2回目を観たらこれがスゴく面白かったんですよ。特に前半は何度観ても最高すぎます。ずいぶん改編されたなと思ってた後半も、ちょっと好感度上がりましたよ。

そこで勢いに乗って、原作に囚われずに楽しめたポイントを改めて挙げていきたいと思います。

↓以下、完全ネタバレ。








・冒頭はギタイが地球に攻め始めたところからのニュース映像。リタがヴェルダンで活躍したニュースも流れますね。そのなかでケイジがさりげなく登場してペラペラ喋るのが、なんかいつものトムと違うなと思わせる。それは将軍に前線に出ろと言われたときのケイジの姑息な態度で納得するんですね。口先で世間を渡る広告マンという雰囲気がよく出てます。というか、まんま映画の宣伝をしてるトム・クルーズみたいで面白いです。

・最初の戦いでのケイジのアップアップぶりは素晴らしいですね。これをトム・クルーズが大真面目な顔でやるのがイイ。ずーっと「リロードどうやるの?ねえどうやるの?」って聞いてるし、行進中に「いやもうマジダメッス」って感じで列から逃げ出そうとして捕まるところとかは名場面ですね。コントの域ですね。

・ビル・パクストン演じるファレウ曹長が語る「運命は自分で切り開くもの」という訓示は、図らずもケイジがその後自ら実践することになります。試して死んでやり直すのは一見ギャンブル性が強そうですが、訓練と実戦の積み重ね、何手でどう動くかの検証、という堅実で綿密な計画に基づいているので、ギャンブルとは異なるんですよ。

・ギタイはむっちゃ速い動きでドギャーンって来るし何か触手みたいなのでウバシャァーッて攻撃して来て全然勝てる気しないですね。あんなのと何度も戦うとかいくらリセットできると言っても、いやリセットされるからこそ無限に戦わなくてはいけなくて地獄ですよ。でも口をホアァァァッて開けた顔がアホみたいなので、それを思い出して「あの顔はないわー」とか思えば戦える!(何の話だ)

・冷静に考えると、死んだら時間が戻るというのはケイジの死による世界のリセットということで、ならそれはケイジが存在するから世界も存在するということなのか。それともその世界自体はケイジ不在のまま続き、新たな時間軸が発生するのだろうか。ケイジが車の下を転がろうとして轢かれて死んだ際、ファレウが「なんでこんなことを」みたいに言ってて死んだ後の世界がほんの数秒だけど映る。ファレウがそこまで言った時点でケイジが絶命したとも考えられるけど、もしその後もその世界が続くと言うなら死んだ数だけ並行世界が発生することになるのではないか――などと色々考えてみましたがめんどくさくなったので、リセットボタン押したんだな、って思うことにしました。

・前回の感想では「これは覚えゲーみたいなもので強くなっているという感じが弱い」と書きましたが、その覚えた行動は先の展開に進むためであり、先に進むには技術も必要なので結果的にスキルアップしてるんですよね。つまり必然的に強くもなっているのでした。訓練シーンは笑いどころだけど単に繰り返してるわけではなく、歩くのも大変だったのが滑るように敵を掻い潜り、すかさず背中の銃でガンガン倒すまでになって「あいつは本当に新兵か?」と言われるのが痛快です。

・ワゴン付きの車でギタイに襲われたあと、車の尻を振ってワゴンを振り落とすのが何気にイイ。

・ケイジがリタに会わずに行くのを「先に進むための手段を試すため」という攻略するための行動だと思ってましたが、それよりはヘリの場所でリタがどうやっても死んでしまうからでしたね。リタが最後に本当のミドルネームを教えた後の行動だから、それで決意したのでしょう。ケイジは戦場で何度もリタの死に顔を見ているからもう耐えられなかったわけです。これはリタが同じくある男性の死に顔を「300回は見て頭から離れない」と言っていたことからも繋がります。

・初めて映るシーンも実は何回めかのループだったりします。ヘリのある車庫でコーヒーを入れるシーンで、観る者はリタと同じタイミングでそれを知ります。また目覚めてから出撃までの間にも、PT(訓練)としてランニングしてたり、抜け出したケイジを仲間が探すというシーンもあったりします。それを敢えて映さず必要なときに出すのが、同じシーンの繰り返しにならない上に新鮮味もあります。逆に何度も繰り返すことでループによる事態の変化を印象付けたり笑いに昇華させたりしているシーンもある。上手いです。

・ケイジがリタと共に将軍に会いに行ったときに、リタが誰かに出くわしたりしないように歩数を計って移動するダンスのようなシーンは「この局面でそれ入れるか!」と思いつつ、僅かに息を抜ける上にシャレていて実にイイ感じ。昔あったブルース・ウィリス主演の『ハドソン・ホーク』っていうバカ映画を思い出したけど、あれとは全然違って良いです。

・将軍の説得に(表面上は)成功するシーンは、ケイジがスポークスマンの手腕を発揮して整然と語るのが印象的。少し先のことを先回りしてペラペラ喋る技も効いてます。

・輸血されたことによる能力の消失がなぜ分かるのかが納得できなくて、そこから先はループはなくなるわ原作と全く違う展開になるわでノリきれなかった、というのがあったんですが、よく見ると輸血されて目覚めるときに目の中の黒い靄のようなもの(能力の発動時に何度か出るエフェクト)が消えていく、というシーンを見逃していたことに気付きました。そこが視覚的にも一応分かるように描かれていたので、そこから先はやり直しの効かない一発勝負であるというのも受け入れられたし、死んだら死にっぱなしという緊張感を感じるようになりましたよ。J部隊に「犠牲になってもらう」と言うのも「人類のために死ね」っていうことですからね。

・リタをJ部隊に紹介するとき、それまで何度か呼ばれていた「戦場のビッチ」という通り名ではなく、人類を初の勝利に導いた「ヴェルダンの女神」という称号で呼ばれる、ここが最高に熱いです。さらにその名を出すのが、それまで一言も喋らずケイジに名前さえ覚えられてなかったアイツだと言うのがまた滾ります。アイツ。名前なんだっけ?

・オメガの隠れ場所が「ルーヴル」というのは「ループ」にかけてるんだな!(違う)

・オメガの手前でアルファをおびき寄せる役をケイジではなくリタが担うのは、ケイジが足に通信装置をブッ刺したときの怪我があるから。死ぬのが分かってるからこそのリタの「もっとあなたのことを知りたかった」というセリフからキスシーンへの流れが良いです。また、ケイジの方はこの時点でリタのことをもうかなり知っていて、それでも彼女を送り出すしかない、というのがせつないです。

・最後の戻りについてはちょっと分かりづらいですね。オメガは時を操る能力を持ちます。アルファが死ぬとオメガは時を戻すと言ってますね。ケイジはアルファの血を浴びてアルファと同じ能力を持ったので、ケイジ=アルファが死ねばオメガは時を元に戻します。ケイジは輸血してアルファの能力を失うものの、最後にオメガの血というか体液を浴びて今度はオメガと同じ能力を得ます。それにより自分の都合のいいときまで時間を戻せるようになり、それで主要キャラ皆が生きてる時点まで戻るのです。過去に戻ったらギタイが消えてしまった理由としては、時間に干渉できるオメガの存在はその時間軸の中で一つであり、その存在自体は不可逆的である、だから一度死んでしまうと過去に戻っても蘇れないから。――と考えたんですが、正直自信ないです。ちなみにギタイは精神統合された一つの生命体という定義が既に成されているので、オメガが死ねばドローンである他のギタイが活動停止するのはそれほど問題はないと思います。

・ケイジがリタに会うために起動スーツを着た兵士たちの中を通って行く時、最初のループの時は胡散臭い目で見られてたのに、ラストの将校の服で歩いて行くときは兵士たちがちゃんと整列してケイジを迎えるんですね。図らずも英雄の凱旋という風景になっていてイイです。

・ケイジが最後にリタに向ける満面の笑み、ここはもうセリフの必要ないですね。もうギタイとの戦いで死ぬこともないし、リタとの訓練で気軽にリセットされることもない。何より、もうリタの死に顔を見なくても済む。そこまで繰り返してきた膨大な時間の中でのマイナス面が全て払拭されたのです。色々と笑わせてくれたケイジは、最後に色々な思いを込めて自ら笑うのです。


All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)
(2004/12/18)
桜坂 洋

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