2014
07.15

ヴィラン+ラブ=ツンデレ。『マレフィセント』感想。

maleficent
Maleficent / 2014年 アメリカ / 監督:ロバート・ストロンバーグ

あらすじ
うぇ~るうぇ~る。



ディズニーアニメ『眠れる森の美女』を、悪役であるマレフィセントを主人公にして実写化。主演はアンジェリーナ・ジョリー。

これは驚きましたね、良くも悪くも。かつてのディズニーアニメの悪役は基本的に完全に悪者として描かれており、その中でもマレフィセントはディズニー最強のヴィランとの呼び声も高い人物。そんな最強キャラの誕生秘話、みたいな話かと思ったら、これがまさかのオリジナル再構築。そしてまさかの『アナと雪の女王』の系譜を引き継ぐテーマ。同じように童話を下敷きにした『スノーホワイト』の現代的アレンジでも『オズ はじまりの戦い』の前日譚でも『アリス・イン・ワンダーランド』の後日譚でもなく、物語そのものの改変というのは大胆です。下手すれば原典否定にも成りかねない。「え、ディズニーとしてはこれでいいの?」と思っちゃうんですが、それは面白いところです。

やはりマレフィセント役がアンジーである、というのがね、強みなんですよ。デカイ悪魔的な角の生えたアンジーが、大鷲のような巨大な翼を広げたときの無敵感と言ったらないです。強力な魔力を操り、高速で飛びながら敵をはね飛ばし、時に飛びながら回転して体当たりをかますスクリューアタックの破壊力がスゴい。と思わせて完全にバレバレのツンデレという別の破壊力が!「醜いわね」と言うのが「超カワイイ!」にしか聞こえない。それをアンジーがやってるというのがイイんですよ。あと吐息みたいに「んふん」ってコソッと言うのもなんかイイ。アンジーは製作にも関わってるだけあって気合いの入り方が違います。

まあでもね、そんなアンジーもエル・ファニングの弾けるような超絶スマイルには敵わないですよ。そりゃウェルウェル言いますよ。ドラゴラムだって唱えますよ。3妖精が可愛くない上にウザいので相対的に可愛さ増し増しですよ。色んな意味で唖然としたけど、バトルシーンは3D効果もなかなかだったし結構面白かったです。

↓以下、ネタバレ含む。








実はイイ人なのに男に裏切られ悪の女王と化して魔力で玉座を作って座るところなんて完全にラスボスじゃないですか。悪役の魔女的女性と言えば『ナルニア国物語』のティルダ・スウィントンや『オズ はじまりの戦い』のミラ・クニス、『スノーホワイト』のシャーリーズ・セロンなどが浮かびますが、その誰よりも戦闘力が高いというのがさすがアンジー。鋭い頬骨は特殊メイクだそうですが迫力2割増しだし、翼がなくても無尽蔵の魔力が凄まじい。それでも魔法が無生物には効かないっぽいとか、金属に触れるとダメージを受けるというのが魔女というより妖精っぽいです。翼を失ったときの叫びの悲痛さが素晴らしいですね。終盤の翼と合体するシーンなんてどう見てもマジンガーZのジェットスクランダーで熱いです。

そんな破壊神マレフィセント(長いので以下マレっち)も、純真無垢のオーロラちゃんにかかればコロリですよ。あんな可愛い赤ん坊じゃしょうがないし(あれ本物の赤ん坊?超可愛い)、ゴッドマザー!とか呼ばれてキャッキャウフフしてれば情も沸くってもんですよ。少女時代のオーロラ(ちょっとだけ映る子ですかね)はアンジーの実子らしいし、そりゃ母性も爆発ですよ。この時点でマレっちにとってはオーロラはもう元カレとは切り離された存在なんですよね。いばらの壁に囲まれたマレっちと糸車の針に囲まれたオーロラというのが対になってるシーンなどでも二人の繋がりを感じさせます。

それにしてもオーロラが謎の魔女に出会ってのち、その魔女の過去が明かされる、という感じかと思ったら、思い切り時系列で語るんですね。しかもどうも駆け足のところが多いように感じる。テンポがいいと言うよりは、削りすぎてると言うか、どうも全体的に肝心なところをはしょってる気がしてしょうがない。だからどうにも軽いんですよ。その最たるのがシャールト・コプリー演じるステファン王。最強の生物ドラゴンにも怯まない兵士たちを作り上げた狂王として、コプリーはむしろ『オールド・ボーイ』よりも狂気が滲み出てるんだけど、でも玉座のためにマレっちを裏切る動機が、親を失った身の上から這い上がろうという野心なんでしょうが、それがいまいち伝わって来ない。マレっちへの恐れは裏切りに対する罪の意識が肥大したものとも見れますが、そこまで掘り下げた感じもしません。あの状況で3妖精に姫を預けるのも意味不明だし。3妖精に関しては人間界と妖精界が対立状態にあるにも関わらずオーロラ誕生祝いに行くというのがまた謎。マレっちと敵対してるってことなのか、でもそこは描かれない。

軽い理由はもう一つ、真実の愛の描かれ方です。真実の愛のキスってこの物語一番のキモのシーンのはずですが、それをあまりにあっさりと覆し、目覚めはマレっちにより施される。「真実の愛などない」と思い込んでの呪いだったでしょうが、それを自分自身の愛情で解いてしまう。この展開は観てれば予想は付きますが、でも「真実の愛は男女間だけではない」というのはまんま『アナと雪の女王』なので呆気に取られます。会ったばかりの男と結婚なんてとんでもない!っていうのをここでも語ってるんでしょうか。マレっちとオーロラは血の繋がりのない赤の他人なので家族間でもない。ここまで来ると「血の繋がりより過ごした時間」という話になりますね。それはそれでもいいんですけど、でも実の母である王妃については呪いをかけるシーン以外は全く描かれず、虐待するでも愛情を示すでもなくあっさりと死なせて終わりなんですよ。ちょっとね、テーマに対してフェアじゃないなと思うんですけどね。だから軽く感じるのです。

まあでもね、他人の子にここまで愛情を注げるという美談であるし、ラストのナレーションがオーロラだと分かり「この話ができるのはマレっちのおかげ」みたいなことを言うのでめでたしめでたしですよ。正直このナレーションのセリフはオリジナルも本作も事実である、みたいな全く腑に落ちないことを言ってて混乱するんですが、どちらもディズニーだよ!ってことを軽く匂わせてるんでしょう、多分。それに最も軽いのは王子の存在ですからね。ディズニーにおいて王子様はとうとう添え物になってしまったようで、空中を浮かんだまま連れて行かれるし、DT臭がスゴいし、何の役にも立ってないし。それでも最後はちゃっかり顔を出して、オーロラちゃんと仲良くなりそうな予感を醸し出してるので(それが余計添え物感を強くしてはいるものの)、カラスマンに負けない男になってくれることを祈りたいところです。


眠れる森の美女 プラチナ・エディション (期間限定) [Blu-ray]眠れる森の美女 プラチナ・エディション (期間限定) [Blu-ray]
(2008/10/22)
ディズニー

商品詳細を見る

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/805-3e8a18a7
トラックバック
back-to-top