2014
07.07

家族という定義の誤り。『私の男』感想。

watasi_no_otoko
2014年 日本 / 監督:熊切和嘉

あらすじ
二階堂ふみは北国も似合う。



桜庭一樹の第138回直木賞受賞作を、主演・浅野忠信、二階堂ふみで映画化。地震による津波で家族を失った少女・花が親戚にあたる淳悟に引き取られ暮らすようになるが、実は二人には秘密があった、という話。原作は未読です。


厳しくも美しい流氷の浮かぶ海、しかしその流氷がギシギシと鳴る音が煽る不穏さ。冒頭からそんな雰囲気を全開にして始まります。「家族が欲しい」と言って花を引き取る淳悟、身寄りをなくし淳悟に寄り添う花。しかし二人の関係は親子の一線を超え、背徳が日常となっています。二人が抱き合うシーンに降る血の雨が表す、もう引き返せないという忌まわしさ。やがて花は人としての一線も超えてしまう。正直前半はスローテンポすぎるかなとも思ったんですが、少し先のシーンを時折カットインして興味を持続させ、ちょっとした動作や表情で心情を描くシーンに惹きつけられます。

二階堂ふみは二階堂ふみであるというだけで可愛いのにさらにメガネっ子!そしてエロい!という抜群の破壊力。なんですか、あの微かな吐息!ラブシーンは全部脱いだ方が自然だったとは思うけど、十分エロいので満足です。中学生、高校生からOLまで演じて、どれも違和感ないというのはスゴい。あと浅野忠信のダメさ具合のエスカレートがヒドくてイイ。一番ヒドいのは高良健吾演じる尾崎に対する行動ですね。これは予想外。それだけに怖い。そして『47RONIN』でも見せたなかなかの胸毛ぶりも見どころです。

父と娘で家族の捉え方が違うという悲劇なわけですが、果たしてこれは本当に悲劇なのか。愛があるからって何でも与えてはいけないのだな。

↓以下、ネタバレ含む。








モロ師岡の「豚の餌だ」ってセリフはスゴいな。ちょっと笑ってしまいましたよ。あと高良健吾の先輩が後輩をダシにして笑いを取るところ、ああこういうヤツいるよなーと思いました。

流氷が浮かぶ海から着衣のまま出てくる花、寒さに耐えながらも微かに浮かべた笑み、そこで出るタイトル、という、もうここで全てが決定されているかのようなシーンから物語は始まります。遠くにバスが止まっただけで淳悟が帰って来たと分かる。雪道で出迎えながらのキスの催促。そして淳悟との関係を見てしまった大塩の親父さんは氷の島流しと、物語は花を中心に進んでいきます。ここで淳悟と花は血の繋がった実の親子であることが判明しますが、二人とも既に承知だったというインモラルさが決定付けられます。最初に花を「俺の娘」と宣言していたし、花の母親が○○を好きだったなあ、みたいに語ってるんで初っ端から知ってたんでしょう。花も血が繋がっているから全部繋がれるんだ、という考えであり、しかも誘ったのは花からであるという衝撃。殺人の告白直後は「淳悟」ではなく「お父さん」と呼んでから「しよう」と言うのも意識的。

でも淳悟が「俺も家族がほしいんだ」という気持ちはどうやら本心のようで、後半涙ぐんで「俺は親父になりたいんだ」と明確に言っています。やさぐれた中で花に何をしているのかと聞かれ「死ぬほど後悔」と言うのも、殺人そのものではなく普通に家族でいられなくなった後悔というように聞こえます。尾崎の乳首を舐めようとしたときはついに狂ったかと思いましたが(不可解すぎて笑った)、淳悟は花を愛するあまり花の言うことを何でも受け入れてしまったのでしょう。殺人後に「お前と同じだ」と言うのは「これで同じ罪人だから家族でいられる」に聞こえるし、彼氏に「お前にゃ無理だ」と言うのは二人が抱える闇には誰も立ち入れないという自負からでしょう。こうして見ると後半は淳悟が必死で家族であろうとすることにしがみついているように見えて、いつの間にか主役が花から淳悟になっていることに気付きます。

でも花の方が超越しちゃってるからもう無理なんですね。それがラスト、淳悟が3年ぶりに花とその婚約者に会う一連のシーン。銀座を歩く淳悟のバックに流れるのが「遠き山に日は落ちて」なので、今までの日々は終わり安らかな関係になるのかと思わせておきながら、花はテーブルの下で足を触れ合わせてくるのです。そして妖艶さを増した花の微笑、淳悟の苦悶の表情、それぞれのアップで画面が暗くなっていき、淳悟は今後も花に抗えないだろうということが分かってしまう。花の顔はもはや娘と言うだけではなく、愛人であり、母親であることまで感じさせる。「あれは私の全部だ」と言っていたのはそういうことなんでしょう。そもそも「俺の娘」と宣言する父に対し、タイトルが「私の男」だから、もうどうにもならないんですね。

花は尾崎に「見てきた風景が違うんですかね」と言っているので、二人が家族というものに対する思いが違うというのは薄々分かってるんでしょう。でも「二人とも子供だった」とも語る花。それが言えるということはつまり花はもう大人なのです。島流し後の葬儀の場面で、それまでまだ早いと言われていたピアスを耳に付けているので、あそこからもう花は子供ではなくなったんでしょう。対して淳悟は自分が殺人を犯した後はグダグダのダメ人間になってしまう。そうしてラストで親子関係が逆転してしまい、悲劇なのは淳悟だけとなるのです。


私の男 [Blu-ray]私の男 [Blu-ray]
(2015/02/03)
浅野忠信、二階堂ふみ 他

商品詳細を見る


私の男 [DVD]私の男 [DVD]
(2015/02/03)
浅野忠信、二階堂ふみ 他

商品詳細を見る


私の男 (文春文庫)私の男 (文春文庫)
(2010/04/09)
桜庭 一樹

商品詳細を見る

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/801-4b455310
トラックバック
back-to-top