2014
06.27

情熱は失敗に負けない。『ホドロフスキーのDUNE』 感想。

jodorowskys_dune
Jodorowsky's Dune / 2013年 アメリカ / 監督:フランク・パビッチ

あらすじ
SF映画を作ろう。



カルト的作品のアレハンドロ・ホドロフスキー監督が、フランク・ハーバートの小説『デューン 砂の惑星』の映画化に挑み結局完成に至らなかったSF大作『DUNE』。その幻の映画化について監督自らの語りと多くの関係者の証言から検証するドキュメンタリー。

終始嬉々としながら当時の情熱を語るホドロフスキー。そのバイタリティ溢れる語り口と人を惹きつける表情にどんどん引き込まれてしまうんですよ。だから彼のビジョンを再現した壮大な物語が作り上げられていく過程にワクワクせずにいられません。H・R・ギーガーやダン・オバノン、クリス・フォスといった当時参画した人たちが興奮を隠さずにその頃のことを語るのが良いし、絵コンテをアニメのように見せたりスペイシーな音楽で彩ったりという演出も盛り上げてくれます。キャストやスタッフを集めるときのエピソードも面白いんですよ。マジかよ!ってのからアホだな!ってのまで様々。ピンクフロイドのビッグマックの話と、ビタミンE一気食いの話は笑いました。ニコラス・ウィンディング・レフンが出てきたのはちょっと驚いたな。あとインタビュー中に一度珍客が訪れたときのホド爺が可愛いです。

『スターウォーズ』『レイダース』『ターミネーター』など多くの有名作に影響を与えたと言われている点も検証されており、それがどこまで真実かは分からないけども確かに類似点が感じられて面白い。ちなみにホドロフスキーの『DUNE』は完成しなかったけど、それとは別にデビッド・リンチ監督で『デューン 砂の惑星』というSF作品があって、カイル・マクラクランとかスティングとか出てるんですが、それと何が違うの?という疑問にも答えてくれます。この件についてホドロフスキーが語るところ、その上でのリンチについての言及は最高です。

『エル・トポ』も『ホーリー・マウンテン』も観てないけど、この人がもしこの『DUNE』を完成させていたら商業ベースのSFとは全く違ったものが出来ていたんでしょうね。複雑な思いもあったろうに仲間たちの『エイリアン』での成功を心底喜んでるように見えるのも好ましい。ある映画の製作に関するドキュメンタリーでありながら、ホドロフスキーという人に萌えるアイドル映画でもあります。

↓以下、内容に触れます。








自分の作りたいと思うものに対し妥協をしない人なんだというのがよく分かります。こいつはスゴいと思った人材を片っ端から誘ってしまう。しかもそのターゲットが独特なんですよ。オーソン・ウェルズはまだ分かるけど、なぜミック・ジャガー!なぜサルバドール・ダリ!ダリとの会話なんて「君は砂の中からどんな時計を見つけたか」「見つけたことはありません」とか言ってたらしく、もう意味分かんないです。そんなスゴい面子を誘っておきながら、主人公の少年役は自分の実の息子なんですよ。面白いなあ。この息子が意外なほど『DUNE』の理解者なのはちょっと驚きですね。『DUNE』の主人公ポールがあらゆる人の意識に広がるというラストシーンを『DUNE』があらゆる映画への影響として広がったであろうことと重ねてみせる。もし完成してたら彼の人生もまるっきり違うものになってた、かもしれません。ちょっと気の毒。

ホドロフスキーはそんな独特の感性を持つ芸術家でありながら、話を聞いてると明確なビジョンを持つ映像作家であり、結構敏腕なプロデューサーでもあったんだなと思います。だって「よし!これを映画化しよう!」って言ったときはまだ原作読んでないんですよ?映画化を決めた理由は「友人が誉めてたから」ですよ?もうはなから原作通りに作る気ないんですよ。つーか自分で「原作レイプだ」とか言っちゃってるし。そんな話もとても楽しそうに語るのでこっちまで楽しくなります。こういうのを人たらしと言うんだろうな。

そんな彼が唯一感情を露わにするのが制作中止の話。でも中止そのものより、創造はもっと自由で広がりのあるものだという思いが伝わらなかったことのほうに怒ってるように見えます。再三「これは人の価値観に影響を与える、世界を変える映画になる」と言うほど情熱を持ってやってたから、それを伝えることが出来なくなったことが悔しいんでしょう。そしてそれは当時だけではなく今もなお持ってる情熱なんですよ。「魂の戦士」を育て上げた情熱。それは当時は悲しい結果に終わったものの、84歳にして今なお尽きない情熱として残っている。作品云々の前に、この人間性に僕らは勇気をもらうのです。いつの間にか魂の戦士になっちゃいます。

このドキュメンタリーで久々に当時のプロデューサーと再会したのがきっかけで23年ぶりの新作『リアリティのダンス』を完成させたホドロフスキー。老いてますます健在!というわけです。


エル・トポ HDリマスター版 [Blu-ray]エル・トポ HDリマスター版 [Blu-ray]
(2013/09/03)
アレハンドロ・ホドロフスキー、ブロンティス・ホドロフスキー 他

商品詳細を見る


ホーリー・マウンテン HDリマスター版 [Blu-ray]ホーリー・マウンテン HDリマスター版 [Blu-ray]
(2013/09/03)
アレハンドロ・ホドロフスキー、ホラシオ・サリナス 他

商品詳細を見る

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/794-971ddae5
トラックバック
back-to-top