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2014
06.24

ジャッキーが魅せる新たな伝説。『ポリス・ストーリー レジェンド』感想。

police_story_2013
警察故事2013 / 2013年 中国 / 監督:ディン・シェン

あらすじ
囚われた娘を救え!(ジャッキーの場合)



ジャッキー・チェンは『ライジング・ドラゴン』でアクション大作引退を宣言してしまい寂しく感じていましたが、そんな中なんと『ポリス・ストーリー』が新作として登場。でも実はそれほど期待してなかったんですよ。さすがにもう命張ってんのかくらいのアクションはやらなそうだったし。しかしこれが予想外に面白い!

娘を人質に取られ自身も閉じ込められた刑事が犯人との駆け引きを繰り広げる話ですが、これが『ダイ・ハード』のような限定空間を駆使した作り。そこに徐々に明らかになっていく過去というミステリー。アクションはカットが細切れすぎるとかスローを多用しすぎとか今一つ燃える要素に欠けますが、超人ではないジャッキーがそれでも戦う姿は演技派転向宣言も伊達じゃないと思わせてくれます。ジャッキーは相手を倒すだけじゃなくやられる演技も上手いんだよね。何より嬉しいのはジャッキーらしいアクションがないにも関わらず、ジャッキーが役に合ってるんですよ。娘との確執を抱えながらもその娘を救うため命を懸ける、ちょっとくたびれたベテラン刑事という役柄が、今のジャッキーだからこそハマってます。でもちゃんと正義感も強いしね。

周りの役者たちも良くて、特にウー役のリウ・イエは素晴らしい存在感。娘役のジン・ティエンも魅力的。確かにアクションを期待すると肩透かしではありますが、ハードボイルドでミステリーな一本の映画として面白い。NG集もあるよ!ちなみに『ポリス・ストーリー』シリーズではあるけど前作までとの関係性はないので、シリーズ観てなくても問題ないです。

↓以下、ネタバレ含む。








結構細かいところまで練られた作りだと思うんですよ。わざわざ要塞みたいな店舗を用意して刑事の娘まで取り込んで、という計画は動機に対して大掛かりすぎる気がしますが、それは刑務所の服役囚を引きずり出すための作戦だし。最初に建物の中に入ったとき周りをぐるりと見渡す映像が入って舞台はここだと宣言してたり。給料未払いで怒鳴り込み撃退される男が解放されるところでまた活きてきたり。勝手なことばかりを言う人質たちの無責任さとか、犯人の仲間が行動を共にする理由や金で雇われただけの奴の弱腰とかも良く出てます。また事件と並行して過去シーンのカットバックが何度も出てきますが、チンピラを追いかける一見無関係なシーンは犯人のバックに組織があるわけではないということを表しつつ、ちょっとしたミスリードにもなってるし、ジャッキーが妻のいる病院へ向かったシーンも父と娘の両方の視点で描かれたり。なかなか演出がニクいし、かつ齟齬や無駄が少ないんです。

そんなシーンの積み重ねを経てのラスト、複数の視点から状況が語られて真実が明らかになる、という構成はまさかそう来るとは、という感じです。芥川の『藪の中』的というか、映画で言えば『羅生門』や『ヴァニシング・ポイント』的と言うか、この畳み掛け方がスピーディで興奮。そして妹が死んだ理由が明らかになったときの無情感と共に、ジャッキーが妻を失った時の喪失感まで描き出す。これが素晴らしい。ジャッキーの泣きの演技がここまでグッ来たことはなかったかも。こめかみに銃を当てトリガーを引くラストまで一息に魅せてくれます。

適度にアクションを挟んでいたのにクライマックスが会話劇というのはバランス悪い気もしますが、むしろアクションが抑えめだったからこそそれほど気になりません。またいかにもジャッキー映画なギャグはないけども、例えば服役囚の男が結構呑気なキャラだったり防弾装備がハートロッカーみたいに仰々しかったりとちょっとしたユーモアは入ってたり。何より徐々に明らかになる謎と良い感じに残る余韻がジャッキー映画としてはエポックメイキングな一作だと思います。


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