2014
05.28

甘くも苦い家族の在り方。『チョコレートドーナツ』感想。

Any_Day_Now
Any Day Now / 2012年 アメリカ / 監督:トラビス・ファイン

あらすじ
お話をして。



70年代という今と比べても偏見に溢れた時代、家族になりたかっただけのゲイカップルとダウン症の少年を描く、実話を元にしたドラマ。

ゲイバーで歌うルディと弁護士のポールの二人が、ルディの隣人の母親がドラッグで投獄された際にその息子であるマルコの保護者となるべく奔走します。そこには何の打算も目論みもなく、ただ可愛そうなマルコを引き取りたいという思いのみ。しかしゲイであるということ、マルコがダウン症であるという二重の障壁が立ちはだかります。思いのほか裁判のシーンが多く、それが事態の難しさを語っています。

ルディ役のアラン・カミングが素晴らしい。プライドは捨てず自分らしくあろうとする屹然とした態度とは裏腹に、その笑顔はものスゴく優しいのです。言葉に出来ない思いを乗せた歌声も見事。感情を滲ませながらも論理的に訴えるポールも良いです。

二人と交流した人が彼らの愛情は本物である、と皆フェアに証言するのに対して、法を司る者たちは表面しか見てません。自分らしくありたい彼らが、純粋に愛情による結び付きで家族になりたいと願う心暖まる話でありながら、それ以上に法のために愛を奪われるという矛盾が描かれるのです。これが心に痛い。甘いタイトルに反して苦味が残ります。

↓以下、ネタバレ含む。








ルディがなぜマルコにそこまで愛情を注ぐのかについては若干弱い気がしなくもないですが、その根拠は三人が浜辺で戯れる姿を撮影した映像、あそこに凝縮されてるんですよ。きっかけはゲイもダウン症も社会から偏見の目で見られがちという点で通じたのだとしても、決して子を産むことの出来ないルディにはポールとマルコと過ごした日々は家族としか言い様のないものであり、それがあの映像に投影されています。ポールに関しては一度結婚に失敗しているのもあり、本当の自分を受け入れてくれたルディと素直になついてくれるマルコに、作り得なかった家族を見たのでしょう。法廷で「愛に飢えた子供より愛に飢えた二人の男性のほうが問題だ」と言われ、これは一見的を射ているように思えますが、飢えるというよりは既に形を成していた家族を取り返すのが目的なので見当違いです。しかし現実を踏まえつつ尽力する黒人弁護士の奮闘も「母親」という最強のカードに敗れるというのがやるせない。観る者には二人は正しいと分かるのに、外からはそれが見えないのです。それが悲しい。

マルコ役のアイザック・レイバは実際にダウン症だそうですが、それだけに佇まいに訴えてくるものがあります。最初に自分の部屋に通され「嬉しい」と言って泣くマルコ。いつもハッピーエンドのお話を求めるマルコ。そんな彼が辿る、ハッピーエンドどころか最悪の結末。「法の目からこぼれる不幸な子を救いたい」と涙ながらに訴えていたポールが関係各位に最後に送る手紙は、個人的な恨みを越え、法の矛盾、そしてそんな法を作る人々の意識を問うものとして胸に迫ります。

自らの声で歌うルディとそれを見守るポールの姿で物語は幕を閉じます。この二人の絆が変わらずに終わるのがせめてもの救いです。


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