2014
05.17

人を想う=前へ進む、の具現化。『たまこラブストーリー』感想。

tamako_lovestory
Tamako love story / 2014年 日本 / 監督:山田尚子

あらすじ
かたじけねえ!



京都アニメーション制作のアニメ『たまこまーけっと』の映画オリジナル。本編である『たまこまーけっと』がどういう話かと言うと、南の島から自国の王子の嫁探しに来た喋る鳥デラちゃんが、ひょんなことからうさぎ山商店街の餅屋の娘たまこの家に暮らすことになる一年を描いた、ほのぼのコメディです。今回の映画版は本編のその後の話。監督は『けいおん!』の山田尚子。

あまりにも直球なタイトルで分かる通り今作はラブストーリーです。が、これは本編を観ていた者としては意外。なぜならヒロインのたまこはお妃候補になったりはするものの家業の餅屋で餅のことばかり考えている餅バカであり、そのため物語の恋愛要素は常に微妙にズレるのです。向かいに住むこれまた餅屋の幼なじみのもち蔵がたまこに片思いしていたりしますが、これも全く進展がないまま終わります。そんな感じだったので、この映画版ではあえてその恋愛要素をやったということなんでしょうか。全く別作品になるのではとちょっと危惧したりもしたんですが、フタを開ければこれがスゴくイイ。

物語は高3となったたまこともち蔵の二人を軸に進みます。ちょっとした目線や仕草、キャラの距離感、視点の切り替えといったキメ細かい演出が嫌味がなくてスゴく心地よく、真正面から描いたストレートなピュア恋愛話にキュンキュンします。しかもその恋の行方と絡める形で、卒業後の進路や亡き母の思い出、友人たちとのイベントやらも描かれており、ふんわりしてるだけだったたまこが少し成長する物語にもなっているのです。つまり周囲の変わらぬ日常=時間が停滞していた本編とは異なり、確実に時が進んでいる世界の話になっており、過去と未来を繋ぐ「現在」の話としてたまこが歩き出す青春物語です。人を想う気持ちと前へ進む思いとがシンクロしてるのが素晴らしい。

デラちゃんを同映短編『南の島のデラちゃん』として切り離して、作中ではほぼ使わなかったのも英断ですね。本編観てなくても楽しめると思います。

↓以下、ネタバレ含む。








自分の家ではなく商店街の入り口に入るときに「ただいま」と言うくらい餅屋の娘という生活が染みついているたまこですが、そんないつもの商店街のご近所さんにも自分の知らないドラマがあることを悟ったり、生まれたときからそこにいる当たり前の存在が大切であると気付いたり。時が進みだすエピソードが随所に盛り込まれています。糸電話や大福のエピソードの盛り込み方も絶妙のタイミングだし、妹のあんこが中学生の制服を着たり祖父が倒れたりというのも日常の変化として重ねられています。

周りの友人たちも前へ進もうとします。自分の複雑な心は押し殺して、もち蔵よりも好きなたまこの力になろうとするみどり。相変わらずマイペースながら将来の夢をさりげなく語るDIY娘かんな。ズバッと核心を付いちゃう最強メガネっ娘史織ちゃんも留学という選択肢を選ぼうとする。みんなイイ(史織だけちゃん付けなのは察してくれ)。

もち蔵でさえ東京の大学へ進学を決め、そのためにたまこに告白することになります。前半はもち蔵の視点、後半はたまこの視点となる構成は、そのまま告白というアクションとそれに対するアンサーとなっています。それぞれが葛藤し、行動し、最後の最後で「好き」というシンプルかつ最強の言葉で繋がる、その瞬間は暗転までしてその言葉自体の持つ力を引き出す。そのストレートさに感動します。

オープニング曲はたまこの父が若かりし頃自分で歌ってたまこの母に贈ったラブソングですが、エンディングでは同じ曲を今度は恋心を知ったたまこが歌うわけですね。そんな仕掛けもニクいです。父の歌に対する母のお返しの歌が少しヘタだというのも、呑気っぽくて少し不器用な母娘という感じで良いですね。


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