2014
04.21

性差を超えた先の普遍。『アデル、ブルーは熱い色』感想。

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La vie d'Adele / 2013年 フランス / 監督:アブデラティフ・ケシシュ

あらすじ
青い髪、青い春。



高校生の少女アデルが青い髪の美大生エマと出会い愛し合う軌跡を描いたグラフィック・ノベル原作のラブストーリー。第66回カンヌ国際映画祭でパルムドール受賞。主演のアデル・エグザルコプロス、レア・セドゥにも俳優としては初めてパルムドールが授与されたことでも話題でした。

二人の女性が愛し合う設定からゲイを主題に据えた映画のように思えますが、ゲイカップルならではという展開は前半だけで、むしろ男女関係ない普遍的なラブストーリーです。説明も音楽もなく常にアデルを追い続けるカメラはまるでドキュメンタリーのよう。前半は口半開きの表情が多いせいか、なんとも不安定さを醸すアデルですが、エマとの関係を通して世界を理解していきます。冒頭からフランス文学の恋愛観を出したり、中盤でサルトルの話が出たりと、哲学的な観点が多いですね。とにかくアップのショットが多いのも「顔には弱点が出る」云々のサルトルの言葉を表しているかのようです。

二人の女性が求め合い、激情が迸るベッドシーンは強烈(要するに激エロい)。まずはそこにいる相手との行為があり、全身全霊の行為の後に美しさが付いてくるという印象です。このあたりも実存主義に関わってるんでしょうね。生々しさは性の喜びであり、それはそのまま生の喜びにも繋がっていきます。

あとこれに触れないわけにはいかないでしょう、食い物描写がいちいちうまそうなんですよ。ボロネーゼ超うまそう!生ガキも超うまそう!そういえばアデルが寝てるシーンも結構出てくるので、食欲・性欲・睡眠欲という人間の三大欲求を描いてるとも言えますね。3時間という上映時間は正直長いですが、この長さによって心に刻まれるものがあることは確かです。

↓以下、ネタバレ含む。








サルトルの実存主義は「実存は本質に先立つ」というもの。世界があって人がいるのではなく、人がいるから世界は存在する、というものですね。僕も全然詳しくはないですが、この実存主義の思想がアデルの行動に即していると考えられます。最初アデルはトマという青年と付き合い始めるものの、求めるべき対象ではないため満たされない。しかし一度すれ違っただけのエマには淫らな妄想にふけるほど惹かれてしまう。前半は自分がレズビアンなわけがないという葛藤がありますが、深い仲になったエマの存在によりアデルの本質が定まります。アデルの世界はエマによって始まったと言えるでしょう。

だから終盤のカフェシーンは恋人との決別というだけでなく、アデルの世界が終わりを告げたと等しいのです。そこまで積み上げてきた関係、それぞれの道、捨てられない現状、懐かしさや忘れられない思い、色んな感情がごっちゃになる。それでも世界を繋ぎ止めたいがために、言葉で伝える以前に「とにかく触れ合いたい」という原初の欲求が溢れ出します。ここまで長々と観てきただけにアデルが心底自分の過ちを後悔しているのは十分に伝わるものの、エマには既に家族がいるという現実。あの頃へは決して戻れないと悟る二人。そして耐えきれず涙を流しながら「決して忘れない、死ぬまで」と言うエマ。胸をえぐるような喪失感に不覚にも涙します。

エマを男に置き換えても成り立つ話ではあるので、男女の性差を超えた普遍的な恋愛話となっていますね。いろんなものの好みが正反対であるとか、仕事で苛立ち振り向いてもらえない寂しさを感じるとか、自分が通って来た、あるいはこれから通るかもしれない道がリアルに立ち現われ、胸を締め付けます。ラストの個展のシーン、完全に自分とは違う世界の人となったエマを見て、アデルは去って行きます、その後ろ姿に見えるのはいたたまれなさか、あるいは新たな旅立ちの想いか。後者であって欲しい、と思ってしまうくらいには入り込んで観てしまいました。


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