2014
04.13

悲劇の中の奇跡。『ローン・サバイバー』感想。

Lone_Survivor
Lone Survivor / 2014年 アメリカ / 監督:ピーター・バーグ

あらすじ
通信確保は最優先事項。



アメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズがアフガニスタンで行ったレッド・ウィング作戦、その実話を描いたノンフィクション『アフガン、たった一人の生還』を元に映画化。

シールズ史上最大の悲劇と言われる作戦だそうで、ある時点から始まる終わりのない悪夢、そして拡散する悲劇は確かに凄惨。逃げ場のない山道、どこまでも追ってくる敵、絶望的な戦いです。それでも男たちは決して戦いから逃げず前へと進み続けます。ピーター・バーグが『バトルシップ』の監督だからってナメちゃいけません(いや『バトルシップ』大好きだけど)。主演のマーク・ウォールバーグがマッチョぶりを発揮して熱演ですが、テイラー・キッチュがこれまたカッコよすぎてたまらんです。

とにかくスゴいのが音響。腹の底に響くヘリの爆音や銃撃音、その迫力とリアルさが現実感さえも感じさせ、自分が戦場にいると錯覚するに十分。例えば『プライベート・ライアン』はまだ客観的な視点で観れますが、こちらは感覚的にはむしろ主観に近い。そういえば妻や恋人などの女性が写真以外では全く出てきません。徹底して現場のみを描くことによる臨場感は『キャプテン・フィリップス』を思い出します。そしてさほどの山場もなく過ぎていく前半と打って変わって、後半はマーカス、マーフィ、アックス、ダニーの4人の隊員たちと共に文字通り死線を潜り抜けることになります。痛い。そして怖い。

ラストの一連の映像がやけに扇情的なのでプロパガンダ映画だと言われそうですが、アメリカ万歳的な表現は実際はほとんどないんですよ。それ以前に戦争の恐ろしさ、そこで失われた命という悲劇があり、その悲劇の中で起こったサバイブという奇跡が浮かび上がります。

↓以下、ネタバレ含む。








4人の隊員はどれだけ追いつめられても諦めません。普通あそこまで迫られ、起死回生と思った救援のヘリまで落とされたら心折れますよ。山肌の落下に岩場の落下と落ちまくり、恐らく骨の数本も折れてると思いますが、それでも撤退し続ける。何発撃たれたか分からない、泣き言を言う暇もない。でも冒頭に流れる実際のシールズの訓練風景、これが凄まじくて、そのために彼らの心身の強さに説得力が感じられます。だからこのシーンは意外と重要。

敵の命を奪うことを避けたために窮地に陥るというのが理不尽ですが、それでもその判断を誰も責めず最後まで誇りを持って戦い、絶望的な局面でも仲間を救おうとします。だからキッチュ演じるマーフィがQRF(即応部隊)を呼ぶために命懸けの無線連絡を行い散っていくシーンは特に印象深い(そういえばマーカスは仲間が死ぬ場面を一人も見てないですね)。

そういった行動に熱くなる反面、何のための戦いなのか分からなくなる不条理。戦争は不条理なのだ、ということを彼らは知っているのでしょう。マーフィが妻に高価なアラブ馬を買おうとするのも、いつ死ぬか分からないからという思いがあるのかもしれません。だから信じるものが必要であり、それが国家への忠誠であり仲間たちへ信頼なのでしょう。そこだけを見るとプロパガンダだと言われかねませんが、そこでタリバン側の言い分を聞いてしまうとこの作戦の悲劇が成り立たない。悲劇を成り立たせるために、前半で家族や恋人の話をあれこれ話したり、新入りが歌って踊るシーンを入れたり、シールズの作戦説明シーンと並行してタリバンの非道さを描いたりしているのです。あまりにも通じない無線も、メイン人物のエリック・バナや新兵が乗る救援ヘリがあっけなくRGPで撃墜されるのも、護衛のアパッチがいなかったのも、(実話というのはあるにしろ)悲劇の一環です。

ではなぜ悲劇として成り立たせる必要があったのか。命を懸ける男のドラマの裏にあるのは何なのか。それが、ウォールバーグ演じるマーカスが、匿われた村で手当てを受ける際に叫ぶ「どうせ俺は死ぬんだ」というそれまで腹に飲み込んでいた言葉。そして迎えのヘリが来て本当に助かったと思えたとき心から発する「ありがとう」の言葉、これを際立たせるためだと思うのです。心身を鉄壁に鍛えたはずのシールズ隊員が放つ絶望と、誇りもポーズもかなぐり捨てた魂の謝意が、戦争という殺し合いを経てなお生きていることへの感謝へと繋がるのです。

もう一つ。ラストで流れる実際の隊員たちの写真とキャプション、これはさすがに美談化しすぎじゃないかと思いつつ観ていたところで、最後の一枚。マーカスとグーラーブが一枚のフレームに収まった写真は、悲劇の中に起こった奇跡の象徴です。そこに涙します。


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